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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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30―2 【冠】

 【冠】は、「冖」(べき)と「元」、そして「寸」が組み合わさったもの。これで廟(びよう)の中で、髪を結った頭(「元」の意味)に、手の意味の「寸」で冠を付ける形だとか。
 ここから男子の成人式の儀礼を意味するそうな。
 また頭上にのせることから「最上のもの」、「すぐれる」の意味ともなる。

 こんな崇高な【冠】、それを八つも頂いているヤツがいる。それは「ヤツガシラ」、渡り鳥だ。
 大きさは30センチ弱、頭に扇の冠羽を被ってる……生意気なヤツだ。
 この「ヤツガシラ」、北方で繁殖した後、冬季南方へと渡る。その途中、たまたま日本に立ち寄ることがある。
 そんな時、人たちはまるでアイドルに遭遇したかのように、そいつを写真に収めようと大騒ぎとなる。

 そんな「ヤツガシラ」、戦後その一羽がたまたま皇居に飛来した。その時、昭和天皇は皇居内の畑で芋ほりをされていたが、そやつを見つけられたのだ。
 そして侍従に、すぐ双眼鏡を持ってくるように命じられた。

 しかし、侍従は何のことかわからない。思わず「芋を掘るのに、なぜ双眼鏡がいるのですか?」と聞き返したそうな。
 こんなほのぼのとしたエピソードがある。

 昭和天皇までもがあわてられた「ヤツガシラ」、一度出会ってみたいものだ。
 とにかく【冠】を付けたヤツから目が離せないのだ。