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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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3―3 【湖】

 【湖】、それは「さんずい」に「胡」の組み合わせ。
 「胡」は「おおう」と言う意味があるとか。そのため、水でおおわられた所、そこが【湖】となる。

 日本には、楽器の琵琶の形をし、水におおわれた所がある。
 それは琵琶湖だ。
 この湖、なかなか大したもので、10万年以上存在し続けてきた古代湖の分類に入る。
 世界に20ほどしかなく、その兄弟にはバイカル湖や、モンゴルの青い真珠のフブスグル湖がある。

 そんな古代湖の中でも最もミステリアスな湖、それは南極大陸にあるボストーク湖だ。
 琵琶湖の20倍以上の大きさで、氷床から4、000メートル下に静かに眠っている。
 水温は氷点下3度、それでも氷らずに液体のまま。湖を被(おお)う氷の圧力と地熱で、氷点下でも氷らないそうだ。

 現代人の祖先の新人類が誕生したのが約40万年前。
 この湖はそれ以上に、50万年以前から氷で被われ、氷底深く眠り続けてきたと言われている。
 したがって、未だ人類は誰一人として、その湖畔のほとりに立ったことがない、ということになる。

 こんな【湖】という漢字、まことに神秘な世界へと誘(いざな)ってくれるものなのだ。