漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
27―3 【長】
【長】は象形で、長髪の人を横から見た形だとか。
なるほど、そのように見える。
だが、ここで不思議なのは、長髪の人は老人であり、氏族の指導者、だから「たっとぶ、かしら」の意味になったのだと言う。
えっ、老人が長髪?
普通ははげ頭じゃないか!
多分、これは中国での解釈。そう言えば、中国でははげ頭の人を見ない。年老いても髪はふさふさ、長髪となるようだ。
日出ずる大和の国では決して生まれない漢字なのかも知れない。
こんな【長】、人は小学校の「級長」から始まり、大人になれば「係長」に「課長」、 そして「部長」、挙げ句に「社長」と、とにかく【長】を欲しがる。
しかし、八百【長】だけは御免こうむりたい。
スポーツ界、過去いろいろな八百長があった。八百長試合だけは見たくない。
だが最近のことだ。国際サッカー連盟(FIFA)の会長が「スポーツに不正行為は常に存在する。それを防止するのは無理」と発言した。
これには耳を疑った。無理と諦めて、どうするんだ! と叫びたくなる。
そんな「八百長」、元はと言えば、明治時代、長兵衛という男が「八百長」という相撲茶屋を開いていた。
そこへ大相撲年寄の伊勢の梅が碁を打ちに通ってきていた。
長兵衛は勝てる腕があったが、伊勢の梅が喜んで来てくれるようにといつも負けていたのだ。
しかし、なぜばれてしまったのだろうか。
後日、碁会所開きに招かれた長兵衛、本因坊と互角に戦った。そして、その腕前が知れ渡ってしまい、ばれたとか。
こんな話しなら、まだ笑って済ませられるが……。
いずれにしても【長】、八百長はもちろんのことより、
部長、社長より――長髪が欲しい!
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊