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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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26―3 【刀】

 【刀】、反った片刃の象形文字。両刃は「剣」になるとか。
 【刀】は単刀直入 快刀乱麻 一刀両断などの熟語を作る。
 そんな【刀】に「流星刀」(りゅうせいとう)なるものがある。宇宙からこの地球に落下してきた鉄隕石を使用し、制作された【刀】だ。

 1890年(明治23年)、富山県上市川上流で鉄隕石の「白萩隕鉄1号」が発見された。
 発見者は22.7キロもある重い石を漬け物石として使用していた。
 そして一方で、慶応4年(1868年)、旧幕府海軍副総裁・榎本武揚(えのもとたけあき)は蝦夷共和国の樹立のため箱館・五稜郭を占拠した。
 明治2年(1869年)、新政府軍による総攻撃を受け、いわゆる五稜郭の戦いが始まった。
 新選組を率い、北上してきた土方歳三はこの戦いで戦死。しかし、榎本は五稜郭を明け渡し、生き延びた。その後、明治政府の幾多の大臣を歴任していく。

 その榎本は鉄隕石「白萩隕鉄1号」の話しを聞き、それを買い上げて、岡吉国宗(刀工)に流星刀の製作を依頼した。
 隕鉄は柔らかく、苦労するが、大小四振りの流星刀の製作に成功する。

 だが現在、長刀一振、短刀二振のみが現存。長刀一振が行方不明だ。一体どこへ行ってしまったのだろうか?
 流星だけに……、どこかへ流れてしまったのだろうか?

 【刀】という漢字、まさにミステリーそのものだ。