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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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25―4 【珠】

 【珠】は(シュ)と読み、「朱」には丸いもの、朱色の意味がある。いわゆる輝く珠玉だ。

 そんな【珠】の女性、明智珠(あけちたま)がいた。
 珠は永禄6年(1563年)、明智光秀の三女として生まれる。そして戦国時代を強く、しかし辛く生きる。

 15歳の時に、主君・織田信長のすすめにより細川忠興(ただおき)に嫁ぐ。珠は美人であり、忠興とは仲のよい夫婦となる。
 しかし、父の明智光秀は本能寺の変、つまり謀反を起こした。これで光秀は秀吉に追われ、京都山科の小栗栖(おぐるす)の地で竹槍で討ち取られる。
 これで珠は逆臣の娘となってしまう。

 忠興は珠の身を案じ、丹後半島の味土野(みどの)の山中にかくまう。いわゆる幽閉させたのだ。
 珠はここで一年半ほど暮らす。だが世は動き、覇権を握った羽柴秀吉は珠を呼び戻す。
 そんなある日、珠は忠興からカトリックの話しを聞く。
 これに心が惹かれた珠は救いを求め、教会に通いを始める。そして信仰を深め、やっとのことで自宅で洗礼を受ける。
 この洗礼名がガラシャ。ラテン語で神の恵みの意味がある。

 時は慶長5年(1600年)、関ヶ原の戦いが勃発する直前のことだった。
 忠興は徳川方となり、上杉討伐のため不在。そんな隙を狙って、西軍の石田三成はガラシャを人質に取ろうとする。しかし、ガラシャはこれを拒んだ。
 これに三成は屋敷を兵で囲み、実力行使に及んだ。

 ガラシャは覚悟を決めた。カトリックでは自害は禁止されているため、部屋の外から家老に槍で胸を貫かせた。
 珠はこんな壮絶な死を選んだのだ。

 「ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
 細川ガラシャは死を前にして、このように詠んだ。

 こんな【珠】は、今も重く輝き続けているのだ。