漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
25―5 【瓜】
【瓜】、つるにぶら下がったウリの象形文字だとか。
そう言われれば、そう見えてしまうから不思議だ。
こんな【瓜】、貝塚遺跡から種が発見されている。どうも古くから日本にあったようだ。
だが可笑しな話しが多い。
大きさが八〇センチもある冬瓜(とうがん)、冬の瓜と書くが、夏の野菜だ。
スイカは西瓜、西の瓜って、なぜ?
どうも音からの当て字だとか。
南瓜はなんきん、かぼちゃのことだ。
このかぼちゃ、原産地は南の国のカンボジヤだとか。だからカンボジヤを三回唱えれば、「かぼちゃ」になってしまうからだ……そうな。
カンボジヤ、カンボちゃ、かぼちゃ――うん、確かに。
こんな【瓜】、笑える話しばかりかと思いきや、まじめな諺もある。
『瓜田に履を納れず』(かでんにくつをいれず)
瓜畑で靴を履きなおそうと屈むと、まるで瓜を盗んでいるように見える。そんな疑いがかけられるような行為は慎もう。
こんな教えだ。
とにかく【瓜】という漢字、このように多品種な話題を味わさせてくれる。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊