漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
24―5 【艦】
【艦】、船上に板で囲った部屋を作り、矢を防ぐ構造の船のこと。つまり軍船だ。
長江を挟んでの戦争、その三国時代に建造されたとか。
そんな【艦】、日本には不沈船艦と呼ばれる大和があった。
それは昭和15年8月8日、呉海軍工廠(くれかいぐんこうしょう)で進水した。
そして、その一年半後の昭和16年(1941年)12月7日、日本軍は真珠湾攻撃をした。これにより太平洋戦争は開戦となり、戦艦大和はその八日後に就役に就いた。
日本帝国海軍の第三次海軍軍備補充計画、通称マル3計画の目玉として建造された戦艦大和、満載総排水量は七万トンを優に超える。
全長263メートル、口径46センチ/重量2600トンの主砲を三基九門を備え、まさに洋上に浮かぶ要塞、つまり不沈戦艦だった。いや、そのはずだった。
アメリカ軍はレイテ沖海戦に勝利し、フィリピンを攻略、そして沖縄へと上陸を開始した。これに日本軍は天号作戦を発動。
その一号作戦の遂行中、昭和20年4月7日、戦艦大和は米軍機動部隊の猛攻撃を受けた。
最後に魚雷10本、爆弾7発を受け、戦艦は二つ折れとなった。
不沈戦艦・大和は鹿児島・坊ノ岬の西沖、約200キロ位置、北緯30度43分/東経128度04分に沈没した。
水深345mに、現在も堂々と、されど無念の巨艦、それが横たわっていると言われている。
潜水し、その勇姿を眺めてみたいものだが、……、つらつら思うに、【艦】、いつも悲劇を伴う漢字なのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊