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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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23―3 【刻】

 【刻】の左部の「亥」は獣の形、その獣の死体を「リ」(刀)で切り解く。これが「きざむ」という意味だそうな。
 そこから獣の死体の肉や皮を削り取ったりすることから、きびしい/むごいの意味にもなる。そして「刻苦」や「深刻」の熟語が出来たとか。

 また器を刻み、時を計り、「時刻」となった。
 うーんなるほど、うまいこと考えたものだと感心するしかない。

 今、手元に、二つのZIPPO(ジッポー)のライターがある。
 随分と前だが、ベトナムのハノイに行った時に手に入れた。それらはベトナム戦争時の米兵の遺品だ。
 そして、そこには彼らの叫びが刻まれてある。

 一つのライターには、
 「I've spent my time in hell and I'm not sorry about that.」と。
 要は、「私は、これまで地獄で過ごして来た。だけど、それを残念には思っていない」と叫んでいるのだ。

 もう一つには、
 「Yesterday is history, tomorrow is a mystery,today is the golden age between.」
 つまり、「昨日は歴史、明日は神秘、そして今日は、その間で金のように輝く時」と訴えている。

 米兵たちは戦地で、一番手元にあるZIPPOのライターに、心の叫びを刻んだ。その苦いが、ひたすらな想いがひしひしと伝わってくる。
 出来ることならば、遺族に戻したい。それらの想いの込められたZIPPOのライターを。

 いずれにしても、【刻】という漢字、いろいろなものを刻んでくれるものだ。