漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
23―2 【望】
【望】という漢字、つま先立つ人を横から見た形「壬」、その上に大きな瞳の「臣」(目)との組み合わせだ。
それに音符の「亡」を乗せ、遠くの方をのぞみ見ることだそうだ。
そこから眺望/遠望などの熟語が生まれ、さらに望郷/人望などの熟語へと発展する。
だが、そうは言っても、一番多く使われる熟語は「希望」だろう。
ギリシャ神話にある。
人類の最初の女性・パンドラは、好奇心から世の中の災難や不幸が詰まった「パンドラの箱」を開けてしまった。
世の中は不幸に。
しかし、箱の底にひとかけらのものが残っていた。
それが「HOPE」だ、つまり『希望』。
しかし、この『希』という漢字、「巾」と「交わる」からなる、すかし織りの布。めったにない珍しい意味。
この解釈からすると、「希望」はめったに実現しない【望】となってしまう。
これじゃ、いやはやたまったものじゃない。
したがって、「まれ」には「稀」の漢字が使われるようになった。そして『希』には、「ねがう」の意味を含ませたとか。
こんな御都合主義、まあ目くじらを立てずにとなるが、ここで提案。
次のような『きぼう』もあるかなと、ちょっと思ってしまったわけでして……。
貴望 : 貴方の望み、何でっしゃろ?
モチ、金銀財宝を手に、と答えは決まってる。
輝望 : 輝く望み、それはキラキラ最低一カラット以上ですって。
奇望 : 奇妙な望みって、決して達成できない。
されど、ダイエット願望。
季望 : 季節変わりの望み。
それって春を愛で、夏に弾け、秋に憂い、冬に熱燗でキュッ。
危望 : 危ない望みって、……自己責任で考えておくれやす。
こんな妄想による【望】という漢字、まさに絶【望】的かな?
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊