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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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21―4 【水】

 【水】、それは流れている水の形。中央に大きな流れがあり、左右に小さな流れがあるのだとか。
 昭和60年に名水百選が選定された。

 京都では伏見の御香水(ごこうすい)が選ばれている。
 この名水は歴史が古く、平安時代に遡る。当時香りの良い水がわき出ていて、それを飲むと病気が治ったとか。
 今は御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)となっている。

 そんな水が地下に流れる伏見は灘と並ぶ酒所。その水は、灘の「宮水」に対し伏見の「御香水」と呼ばれている。
 御香水は軟水で、マイルドな甘口の女酒を産む。一方、宮水は硬水であり、切れのよい辛口の男酒となる。

 他の名水に、誰もが口にしたことのある清水寺の「音羽の水」がある。音羽山から三筋で流れ落ちてきて、枯れたことがない。延命長寿の霊水だ。
 上方落語に「はてな茶碗」という演目がある。桂米朝の語りがとびきりに面白い。

 清水寺の音羽の滝の茶屋で油屋の男が休憩していた。
 横では有名な茶道具屋の茶金が音羽の水の茶を飲み、そしてその茶碗をこねくり回しながら「はてな?」と首をかしげていた。
 これを見ていた油屋、さぞかし値打ちのある茶碗にちがいないと、茶金が帰った後、店主から二両で買い取る。

 傑作中の傑作の落語・はてな茶碗は音羽の茶店から始まる。
 そしてオチは――「見てくれ! 水ガメの漏るやつ、みつけたんや!」

 とにかく【水】という漢字、水が流れている形ではあるが、いろいろなものを絡ませながら流れて行くのだ。