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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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20―4 【姫】

 【姫】、右の「臣」は乳房を表す。それが「女」と組み合わさって、成人した女性の意味となる。
 そして、時を経て、【姫】は高貴な人の娘のこととなる。

 この【姫】の反義語が『彦』。
 そして、七月七日は七夕。

 織姫は天帝の機織り上手な娘。また夏彦も働き者だった。
 二人は帝に結婚が認められ夫婦となる。

 しかし、新婚生活が楽し過ぎたのだろう、織姫は機を織らなくなった。
 天帝はこれに怒って、天の川を隔てて二人を引き離してしまう。
 ただし年に一度だけ、七月七日に会うことを許した。

 だが雨が降ると天の川の水かさが増し、二人は川を渡れず、逢うことができない。 
 七月七日、星天夜になるかどうか、過去の統計からすると確率は約二割。今年は辛うじて雲のようだ。
 七月七日の雨、それは夏彦の無念の涙、催涙雨(さいるいう)という。それが降らなければよいが。

 さてさて、天文学で言えば……織姫星が「こと座」のベガ。そして天の川を挟んでの夏彦星、それは「わし座」のアルタイルだ。
 しかし、夏の夜空にはもう一つの煌(きら)めく星がある。それは「はくちょう座」のデネブ。
 これら三つ、ベガ/アルタイル/デネブを結んだ形、それは「夏の大三角形」(Summer Triangle)と呼ばれている。

 位置としては、織姫の夫の彦星は天の川の向こう側にいる。
 だがデネブは、織姫側の川岸に住んでいる。
 いわゆる微妙、いやちょっと危険な三角形なのだ。

 言ってみれば、織姫はたとえ雨が降っても、天の川の増水に関わらず、そう、デネブと一緒にいられるのだ。

 で、何かが起こりそう。
 と、現代風な【姫】伝説が生まれてきそう……かな?