漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
20―3 【雷】
【雷】、雨に雷鳴の重なり連なる様を表した漢字だとか。
そして、日本神話では【雷】は神様の一つ。その雷鳴を――「神鳴り」(かみなり)と呼んでたらしい。
六月から七月に、毎日雨がシトシトと降り続く。だが終わりとなると、「梅雨中の雷は晴れ近し」と言われる。
梅雨前線が北上し、南の高気圧が張り出してくる頃、熱雷が発生する。雷が鳴り、そして晴れ上がり、梅雨明けとなるのだ。
しかし、そんな【雷】、時としてゴロゴロドーンと落ちる。恐ろしいものだ。
「くわばら、くわばら」
昔からこんな呪文を唱えると、落雷除けに良いと言われてきた。
平安時代、藤原道真(ふじわらみちざね)は流刑された。
そして、その恨みをはらすために道真は雷神となり、宮中に幾度も雷を落としたと言われている。
だがこんな呪われた状態にあっても、「桑原」と言う道真の土地だけは落ちなかった。
それ以来のことだ。「くわばら、くわばら」と、呪文としてその地名が唱えられてきたとか。
「地震・雷・火事・オヤジ」
昔からこれらが世の中の怖いもの。
そして現代は「オヤジ」が格落ちし、「地震・雷・火事・原発」だとか。
だが【雷】は、今もっても堂々の上位ランキング。
いずれにしても、最近は天候不順。時節に関係なく雷が鳴る。今宵も就寝前に呪文を唱えておこう。
「くわばら、くわばら」と。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊