漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
15―4 【士】
【士】、これを「土」と読んだ輩……、ブー!
上の「一」が長く、下の「一」が短い。「土」(つち)が逆さまにひっくり返った漢字なのだ。
読みは音で(シ)、訓では(さむらい)。
そんな【士】、いろいろな字源説がある。
「土」(つち)を饅頭型に置いた形であり、かってはそれに酒を振りかけて、土の神に祈ったとか。
また他に、まさかりの刃の形だとか。
そして、【士】(さむらい)。
意味は、学問/道徳などを身にそなえた尊敬できる人物のこと。【士】は己を知る者の為に死す、それほど崇高なのだ。
だが、叫びたい。
同じ【士】でも、「西向くさむらい」もいるぞ! と。
こやつは他愛もない【士】で、
に(二月)・し(四月)・む(六月)・く(九月)・さむらい(十一月)、……、三十一日に満たない月の最後に、こそっと隠れてはります。
理由は、【士】という字が単に「十」と「一」と分解され、十一月とされてしまっただけの惨めな話しなのだ。
調べてみれば、こんな漢字分解、他にもあった。
ここはハズミとイキオイで、参考に紹介しておこう。
「喜」は
「 七
七七 」であり、下の部分で「七十七」
「半」は「八十一」
「米」は「八十八」
「卆」は「九十」
「白」は「百」から「一」足りずで、「九十九」
「茶」は草冠が「十」と「十」、それに下部が「八十八」、全部足し合わせて「百八」
「皇」は「白」が「九十九」、それに「一」と「十」と「一」、全部足し合わせて「百十一」
「王」は「千」に「一」で、「千一」
えーい、ヤケクソでもう一つ。
「四苦八苦」
これは漢字分解でなく、計算で――煩悩の「百八」
4*9= 36 と 8*9= 72
合わせて、「百八」だって。
とにかく調子に乗って、こんな付け焼き刃的なことを披露して、喜んでるようでは――【士】にはなれないのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊