連載小説「六連星(むつらぼし)」 第11話~第15話
あんたと行き会った翌日、響からメールが届きました。
『お父さんらしい人を、桐生で見つけたわ』って書いてきました。
どうなの、あなたには何か心当たりが有るの?」
「俺の事かな、それは・・・・いや、まったく気がつかなかったが」
「そうしょうね。
ただ、そんな予感がするとだけ響も書いてきたもの。
それとも、よりを戻して私たちが結婚をするという展開は、どうよ。
それなら響も、晴れてあんたの娘になるわ」
「い、いまさら結婚か・・・・」
「あら、いやなの。私と結婚するのは?
響は、24年間も父親と行きあえるのを待ち続けたけど、
私も同じように、亭主になってくれる人を24年間も待ち続けています。
でも桐生になんか、絶対に住まないわよ。
清子は一生、湯西川で現役の芸者を続けます。これは私の運命だもの」
「俺も、20年間続けた『六連星』を閉めるわけにはいかねぇな」
「あなたに湯西川へ来てくださいなどと、ひとことも
言っておりません・・・・」
「じゃあ、永遠にすれ違いのままだ。どうすんだよ、俺たちは」
「いいんじゃないの、お互い、単身赴任をしている中距離の恋愛でも。
用が有る時だけ会いに来れば、それで済むでしょう。
もう若くはないんだもの、それほど私に用事は無いか、うっふふふ・・・・」
「あのなぁ・・・・」
「湯西川の芸者は、粋と身持ちが堅いことで有名です。
私も、たった一度の過ちだけを除けば、かたくなに守り通してきました。
ねぇ・・・・あんただけなのよ男は・・・・うふふふ」
「勝手にしろっ・・・・」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」 第11話~第15話 作家名:落合順平