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連載小説「六連星(むつらぼし)」 第6話~第10話

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 だが言いだした手前、伯父さんは歯を食いしばって、実家への送金を続けた。
 後から聞いた話だが、仕事が暇になり、手取りの収入が減った時には
 アルバイトをいくつもこなしながら、送金をするための金を
 つくっていたそうだ。
 本人は、アポート代と、ごく限られた食糧費だけで暮らす羽目になった。
 そんな生活が、20年たった今でも現実に続いているんだぜ。
 叔父さんからの送金は、今でもこつこつと続いている」


 「信じらんない。そこまで自分を犠牲にするなんて・・・・」


 「だがそれも5年くらい前から、何やら様子がおかしくなってきた。
 金額はちゃんと届くのだが、発送先が転々としはじめた。
 いままで東京から送られてきた金が、いつの間にか地方からの
 差出しになった。
 それもいろいろな場所を転々としながら、振り込まれるようになった。
 俺もその頃、高校を無事に終えた。
 働けるようになったので、まずは、東京の伯父さんのアパートを訪ねてみた。
 しかしそこに叔父さんは居なかった。その住所はすでに過去のものだ。
 伯父さんが長年務めていた町工場は、俺が上京する2年前にすでに
 倒産をしていた。
 行って見たが、そこもただの廃墟だった。
 仕事を失った伯父さんは、手っとり早く大金が稼げる原発の
 仕事についたようだ。
 その後も、あちこちの原発を転々としながら、稼いだ金が送ってきた。
 ようやく福島方面にいると解ったのが、いまから2年前の話だ。
 しかし俺が、伯父さんを訪ねる前に、あの3.11の大震災がやって来た。
 その後。ひとときだけ送金が途絶えたが、また最近になって
 それが復活をした。
 何とか探し出そうと思っているんだが、現金書留で送ってくるために
 いまだに正確な居場所がつかめない。
 たぶん、元気で居てくれるとは思うんだが・・・・」


 そこまで言い終えた英治がコップを握ったまま、がっくりとうなだれる。
そのままドンと、テーブルに顏ごと突っ込んでしまう。
本人が言うように、ビール3杯目での出来事だ。


(え、嘘!。英治が3杯目で本当にダウンした・・・・
どうなってんの、こいつ)
響が今まで以上に、呆気にとられて金髪の英治を見下ろす。