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連載小説「六連星(むつらぼし)」 第6話~第10話

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 しかしこの日以来、不思議なことに寮でのイジメが沈静化をする。
静かさを取り戻してきた女子寮の様子に、会社が安心をしかけたころ、
再び別の被害者だと名乗るから女性から、茂が再び呼び出される。
「貴方の知らないところで、まだ陰湿ないじめが横行している」と呼びだされ、
再び同じラブホテルへ連れ込まれ、嘘の証言を聞く羽目になる。
この女もまた、どうにでもしてとばかりに艶めいて茂に身体を任せてしまう。
茂もまた、このことは会社には絶対に秘密だからと、女に口止めをしたうえで、
ふたたび不遜な行為に及んでしまう。


 女子寮と茂の秘密の関係は、さらに続く。
茂が呼び出され、女たちと関係を持つたびに、職場でも寮でも、
不良少女たちのいじめが、なりをひそめていくようになる。
ついには終息をしてかのように見え、すべてが平穏を取り戻したようにも
思えた。

  
 会社も女子寮の安泰ぶりを見極めて、高らかにイジメの終息を宣言する。
茂もまた大役を果たし終えたと思いこみ、深い自己満足とともに、
女たちの身体まで楽しんだ余韻をひそかに残して、ほっとひと安心をする。
だがその隙を見計らったように、首謀者たちの狙いを定めた最後の一撃が
茂に向かってやって来る。

 被害者の一人としてラぶホテルへ誘い込み、身体を許した女の子から、
『どうしても見逃せない、ひどいいじめが、まだもうひとつだけ横行をしている』
という内容の電話を、茂のもとへかけてくる。
何とかしてほしいと、その子には泣いて頼まれたから紹介をしますので、
いつものようにまた、内緒の場所で会いましょうと用意周到に誘いかけてきた。


 茂は指示された通りに、いつものラブホテルへ出掛けて行く。
ラブホテルでは、おびえた表情の少女が、なぜかたった一人で待っていた。
おびえた表情をしている少女をなだめながら、色々と聞き出そうとするが
なぜか口を閉ざしたまま、何も語ろうとしない。

 やがて茂がいつものことだと思い込み、ろくな躊躇も見せず、
当たり前のこととして、少女の身体を求める。
それほどの抵抗も見せず、少女も(あきらめて)茂の身体をまかせる。
驚くべきことに、別れ際になって彼女のほうから、再び会いたいと
突然言い出す。


 「あなたが望むのなら、何度でもお付き合いをいたします」と
少女は精いっぱいの告白をする。
突然の告白とはいえ、茂も少女に好意を感じ始めている。
この一件が片付けば、全てのいじいめが終わると信じ込んでいた茂は、
余禄とばかりに少女の告白を受け入れてしまう。
こうして少女と茂の、理不尽な関係が始まってしまう。


 数度の逢瀬をかわしていく内に、避妊をしない当然の結果として
少女が茂の子供を身ごもってしまう。
妊娠の事実を知った茂が、少女を呼び出す。
結婚をして男としての責任を取ると言い始める茂を、少女が
絶望的な瞳で見つめる。
やがて、私には他に好きな人が居て、その人との結婚を心の底から
夢に見ていると涙をこぼしながら、語りはじめる。

 少女を追い込んだのは、女子寮に巣食う不良グループの女たちだ。
日夜にわたりこの不良グループからいじめを受け続けてきた少女は、上司の
茂と『寝ること』を条件に、いじめから開放されることが約束されていた。
この少女こそが、イジメに遭っているその当人だ。
少女の悲しすぎる告白から、陰湿な罠のすべての事態を知ることになる。


 少女が不良グループのイジメに耐えかねていた頃、
親切顔をした女がそっとささやいたひとことから、すべてははじまった。
『何人もいじめから救い出している課長代理がいることを、あんた、知ってる?
女子寮でイジメが少なくなってきているのは、全部、その課長代理力なんだよ。
そのかわり。内緒で何度か寝るようだけど、秘密は絶対に守ってくれるわよ。
どうかしら。私が口を聴いてあげるから、あなたも一度たのんでみれば・・・。』


 茂が真相を知って愕然としたその翌日、少女は遺書も残さずに、
海岸で自らの手首を切り、傷心の自殺を遂げてしまう。
田舎で突然起きたこの自殺騒ぎは、あっというまに地元紙を賑やかにする。
これこそが、不良グループの大きな狙いだったのだ。
最後の少女こそ、不良グループによるよるいじめの最後の犠牲者だ。
巧妙な「罠」に騙されて茂もいつのまにか、少女を破滅に追い込む共犯者の、
一人に仕立て上げられていたのだ。


 少女が結婚の予定の前に、妊娠していたことから、
なんらかの事情のすえ、覚悟の上の自殺とみて、警察は事故として結論づける。
勝ち誇った不良グループの視線を背中に受けながら、茂は責任を感じて
工場を辞める。
逃げるようにして秋田を離れ、単身で東京に逃れる。


 こうして秋田でおきた茂の事件は、うやむやの収まりを見せる。
だが実は高橋家の悲惨な話は、ここを序章としてさらにこのさきへ
連なっていく。
長年にわたる悲痛な話が、ここから幕をあげる・・・・