小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

連載小説「六連星(むつらぼし)」 1話~5話

INDEX|9ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


連載小説「六連星(むつらぼし)」第5話 
 「微妙な話が・・・・」

 岡本が3人の中では一番下っ端にあたる、金髪の英治を呼びつける。


 「お前、ひとっ走り行って、響の勤め先を決めて来い。
 但しこの間みたいに、安い給料で簡単に決めてくるんじゃねえぞ。
 お前は自分で交渉が下手だと思いこみ過ぎだ。
 だからいつでも、相手から足元を見られちまう。
 いいか。相手と交渉するときは、まずハッタリが肝心だ。
 良い結論が出るまで、粘り強く話し合うことも大切だ。
 今度はとびきりの良い女だからと、相手に目一杯の金額をふっかけてこい。
 それで駄目なら、よその店に行かせるから勝手にしろと、開き直れ。
 解ったか。交渉なんてものは、失敗を何度も繰り返して上手くなるもんだ。
 ただしお前の場合は、失敗ばかり繰り返していて、
 いつまでたっても進歩がねぇ。
 今回だけは、しくじるんじゃねえぞ。響きのためにもな。
 だいいちお前は、響に借りがあるんだ」


 「へっ?、借りですか。この女に俺が?・・・・
 兄貴。おいらには、身に覚えがありません。
 俺にはさっぱり、なんのことだか、まったく思い当たりませんが」


 「馬鹿野郎! だからてめえは愚図なんだ。
 いいか・・・・良く思い出してみろ。
 ついこの間、酔っ払った響を背負って、トシのアパートまで
 送って行っただろう。
 背負った時に、どさくさに紛れて、素人娘のプリンプリンした尻や、
 プリプリのおっぱいを、好き勝手に触りまくっただろう。
 どうだ。身にに覚えが無いとは言わせないぞ。この野郎。
 それだけでも、お前さんの行為は、痴漢ともいえる重大犯罪だ。
 さいわい響が酔っ払っていたことが、お前さんには幸いをした。
 そう言う訳だから、びしっと気合を入れて今回ばかりは、交渉をして来い!
 分かったな。分かったら速攻で行って来い。
 よし行け。駆け足!。前へ進め! 」


 英治がはじかれた脱兎の如く、六連星を元気よく飛び出していく。
響がビールを注ぎながら、岡本の顔を斜め上から覗きこむ。


 「なんで私のために、そこまで世話を焼いてくれるの、岡本のおっちゃんは。
 家で娘さんに相手をしてもらえない分、寂しくて私に親切に
 してくれているんだ。
 と、私は勝手にそう思っています。
 でも、人の真意は解りません。
 おっちゃん・・・・変な他意などは無いでしょうねぇ。
 悪意のある魂胆なんか、隠していないでしょうねぇ?ねぇ大丈夫?・・・」


 「おい、人聞きの悪いことを言うな、響。
 お前もトシも、まったく油断できねぇ口ばかりをきく。
 お前さんは、なんでもストレートに物を言いすぎる。
 悪気があるわけでは無いにせよ、それでは人様から誤解を受ける。
 清ちゃんはおしとやかで、日本風の奥ゆかしさを持った頑張り屋さんだった。
 あ・・・知ってるか。湯西川で芸者をしている女で、清子と言う女の事を?」

 「それ、私のお母さんです」


 「やっぱりな。目元のあたりがよく似ている。
 へぇぇ。あんときの女の子が、もうこんなに大きくなったのか。
 お前さんは、どうやら清ちゃんの、つっぱりの部分だけを
 もらってきたようだ。
 可愛い顔をしていなければ、まったくの、只のじゃじゃ馬娘だ」


 「おら、岡本のおっちゃんは、私のお母さんのことを知ってるの?」


 
 「湯西川で芸者をしている清ちゃんといえば、俺たちの世界でも有名人だ。
 器量も気だても良かったが、なんといっても芸が達者だ。
 極道どもが熱を上げて随分と湯西川へ通ったらしいが、全部まとめて
 袖にされた。
 かく言う俺も、湯西川温泉に通い詰めた一人だ。
 だが、勘違いするんじゃねえぞ。お前の親は絶対に俺じゃねぇ。
 まア、お前に疑われそうな出来事は、たったの一度だけあったがな。
 いやいや勘違いをするな。別に清ちゃんと寝たわけじゃねぇ。
 覚えていないか、宇都宮で買ってやった、赤いランドセル」


 「あっ新入学のときの、赤いランドセル・・・・
 うん。赤いランドセルのことなら、よく覚えています。
 誰が買ってくれたのかは、いくらお母さんに聞いても教えてもらえなかった。
 あんたの成長を心から喜んでいる、桐生のおじちゃんからだよと言うだけで、
 あとは何を聴いても、全然答えてくれませんでした」


 「当たり前だ。
 不良に買ってもらったとは、口が裂けても言えるはずがない。
 俺もそんな気はさらさらなかったが、たまたま運が悪かっただけだ。
 あの頃は、俺もちょうど宇都宮に居た。
 これ(愛人)と一緒に、繁華街のオリオン通りを歩いていたら
 お前の手を引いて歩いている清子を、偶然に見つけた。
 小学校に上がる前だから・・・・ちょうど六歳になった頃だろうな、お前が。
 びっくり仰天したもんだ。
 旦那もパトロンも作らないで、一人身で頑張っていたはずの清子に、
 いつの間にか誰も知らないうちに、六歳になる女の子が居たんだぜ。
 ・・・・でもなあ、あん時のおまえは、すこぶる可愛かった。
 で、思わず勢いで、お前さんに一番上等の赤いランドセルを買っちまった。
 あんときのお前は、本当に天使のように可愛いかった。
 俺のほっぺに、たくさんチュウをしてくれたんだぜ。
 あの天使のような唇で・・・・今でもそのことだけは、よ~く覚えている。
 それがよぉ・・・・
 なんでこんなに不細工で、可愛げの無い、口の悪い女に
 なっちまったんだろう。
 世の中は上手くいかねぇなぁ。先のことは誰にも、解らねえもんだ」

 「悪かったわね、性格的にブスで」