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連載小説「六連星(むつらぼし)」 1話~5話

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 連載小説「六連星(むつらぼし)」第4話 
「復興バブルの裏側」

 警察とヤクザの間には、震災時や災害の際に、復興に手は貸しても、
宣伝はしないという暗黙のルールがある。
震災の前までは、取り締まりと称して警察はヤクザを徹底的に
締め上げていたため、ヤクザが人道的な復興支援でヒーローになると、
とたんに世間体が悪くなる。
悪人たちが脚光を浴びてしまうと、実に都合が悪いことになる。
ゆえにヤクザは、静かにたんたんと自分の役割を果たす。


 警察が把握している指定暴力団の構成員は、全国で8万人。
ヤクザという言葉は、花札のハズレ手である「8・9・3」から
来ているといわれている。
ヤクザは「負け犬」のことを指し、謙虚を重んじると定義されている。
3大グループの山口組は、約4万人。住吉会は、1万2千人。
稲川会、1万人はみな、まるでロータリークラブのような節目と礼儀正しい、
任侠団体を自称している。


 任侠道の信奉者たちは、時には命を危険にさらしながら弱者を助けるために、
身を捧げることが求められる。
ヤクザによれば、「弱きを助け、強きをくじく」という図式になる。
だがしかし、ヤクザがどんなに美辞麗句を並べようとも、ほとんどのヤクザが、
めったに約束を守らない反社会的な人間集団であると言う本質は、隠せない
ヤクザはしょせんヤクザであり、任侠道が世の中の人たちに
幸福をもたらすことは絶対にない。
それがヤクザがヤクザたる由縁なのだ・・・・


 「明日から、また福島だ」

 一週間後。また蕎麦屋の「六連星(むつらぼし)」へ現れた岡本が、
エプロン姿の響を見て目を細める
俊彦のアパートへ居着いた響は、夜になると六連星でアルバイトを始めた。
その姿を見た岡本が、早速、余計なことを言い始める。

 「しかしまぁ、こんなに暇すぎる蕎麦屋じゃ、
 いくらも稼ぎにはならんだろう。
 どうだ。いいところを世話するから、働いてみるか。
 なあ、トシ。
 こんな器量良の娘を、うす汚い蕎麦屋に置いておくのは
 可哀そうと言うものだ。
 俺に任せろ。悪いようにはせんから」


 「そうだな、それも一理ある。じゃ頼んだぜ岡本。
 ソープランドでも、ピンクキャバレーでも、どこでもいいから、
 好きな処に、この子を売り飛ばせ。
 俺の処ではお前が言う通り、まったく宝の持ち腐れだ」


 「馬鹿野郎、トシ。
 他人さまが要る前で、人聞きの悪いことを言うんじゃねぇ。
 いまどきの不良が、そんな前近代的で不謹慎な、人身売買をするものか。
 それにいまの時代は、正しくは、人材を斡旋をすると表現をする。
 それ見ろ。響のやつが、やっぱり不良は信用が出来ないって
 顔をしてるじゃねえか。
 いくらヤクザでも、人身売買なんかするもんか。
 いまどきそいつが流行ってんのは、復興バブルの東北三県だけだ」

 「え?・・・なんなの? その復興バブルって」


 興味をひかれた響が、岡本の顔を覗き込む。
「まあ待て。いま話して聞かせるから」と、注いでもらったビールを
一口飲んでから、岡本が東北での復興バブルについて語り始める。


 「だから、今言っていたばかりの人身売買の話だ。
 いいか響。よく聞けよ。
 壊滅的な被害を受けた東北の三県は、一年が経過した今頃になってから、
 ようやく復興の動きが本格的になってきた。
 と言っても、瓦礫の処理はまだまだだし、復興の青写真もいまだに
 未完成のままだがな。
 それでも片付けやら、建設の準備などのためにおおくの人手が
 必要になってきた。
 そうなると全国から、たくさんの人東北に集まってくる事になる。
 何もなかったド田舎に、有り余るほどの人間が仕事を求めて集まってくる。
 昼間は仕事に追われるからいいが、夜になると元気な男たちが、
 揃いも揃って、暇と時間を持て余すようになる。」


 「そうなると男たちのために、憂さ晴らしのための酒と女が必要になる。
 あぶく銭が溢れてくると、欲望を満たしてくれるそういう女たちも
 必要になってくる。
 憂さ晴らしの歓楽街が、あちこちに雨後のたけのこのように出現する訳ね。
 なるほど。復興がはじまると、とたんにそういうことが始まるのか・・・・
 美味しいお金の匂いがするから、強欲な人たちが群がっていくんだね。
 だから不良たちも、チャンスとばかりに目の色を変えて、
 一斉に、被災地に乗り込んでいくのね。」


 「お、図星だ、響。
 お前さん。素人のガキのくせに、実に頭の回転が速い。
 その通りだぜ。混乱の被災地には、俺たちがつけ込んでいく隙間が
 いっぱい有る。
 あぶく銭のような仕事も、あちこちに転がっている。
 お前さん、素人にしておくにはもったいねえな。どうだ、うちの組で働くか。
 お前なら、俺が高給で優遇をしてやるぜ」


 「あら? どういう意味で受け止めればいいのかしら。
 極道の肩棒を担いで、汚ないビジネスのお手伝いをするのは、気がひけるわ。
 極道の妻か、愛人になれというお話にも、無理があるし・・・・
 ごめんなさい、岡本のおっちゃん。私はどちらも丁重にお断りをします」


 「おいおい。つい一週間前まで俺の顔を見ては、
 チョロチョロと、逃げ回っていた小猫とは思えない暴言ぶりだな。
 あのなあ・・・・俺にはちゃんとした女房も居るし、それなりに愛人も居る。
 だいいち小娘のお前さんに手を出すほど、今の俺に暇は無い。
 自分の娘と似たような年ごろに、手なんか出せるかよ。
 俺の娘に殺されちまうぜ。まったく」

 「へぇぇ・・・そうなんだ。
 岡本のおっちゃんには、私と同じくらいの女の子がいるんだぁ。
 へぇ~、そうか。それで妙に、私には優しいんだね」


 「女房もそれなりに怖いが、手こずるのはなんといっても、やっぱり娘だ。
 年頃になったら、口をきいてくれなくなるし、目も合わせてくれねぇ。
 まいったぜ、まったく。扱いにくくてよぉ・・・・」


 「へぇ~。泣く子も黙る不良にも、弱点が有ったんだ。
 珍しいこともあるもんだなぁ」