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連載小説「六連星(むつらぼし)」 1話~5話

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 「当たり前だ、馬鹿野郎。
 海や岬に有る灯台じゃねえぞ。、正真正銘の東京大学だ。
 いやいや、それほど珍しくなんかあるものか。
 今の時代。国公立大学を卒業したやくざなんかそれこそ、
 掃いて捨てるほどいる。
 悪党だって、専門知識を必要とする時代だ。
 経済学部はもちろんのこと、法律の専門家、使いようのない
 物理学者までいる。
 世が世なら、みんな陽のあたる場所で仕事をしている連中だ。
 だが不景気なこのご時世。たった紙一重の違いで、
 学者になるはずの人生が、こんな風にもなっちまうのさ」


 カランとコップが転がって、響もまた、テーブルに突っ伏して寝てしまう。
厨房では俊彦が冷蔵庫にもたれたまま、うつらうつらと寝ている。
さっきまでかろうじて起きていた英治も、今は他の二人の若い衆と同じように
椅子にもたれかかったまま、高いびきをかいて寝ている。


 「なんだよ・・・・。どいつもこいつも、人の話をろくに聞かねえで、
 みんなでさっさと寝ちまいやがって、
 盛り上がらなねえ展開になっちまったなぁ・・・・
 しょうがねえなぁ、じゃあ、今夜はこんなところで勘弁するか。
 こら、起きろトシ。起きろ英治。
 ほら起きろお前らも。帰るぞ、ほら、とっとと起きろって」


 岡本の声に、響も寝ぼけ眼(まなこ)の眠そうな目を顔をあげる。
俊彦も大きな欠伸をしながら、ようやく厨房で目をさます。


 「そのまま、そのまま。響はかまわねえから、そのまま寝てろ。
 おい英治、花束と一緒に、この子をトシの家まで背負っていけ。
 いいか、あくまでも丁寧に大事に運ぶんだぞ。
 変な気をおこして、余計なところまで触るんじゃねえぞ。
 お前はスケベで手が早いからな、とにかく気をつけろ。
 響は、嫁入り前の大事な娘だ。
 響の可愛いオッパイに無断で触ったりしたら、俺がただじゃおかねえ!
 トシが大目に見ても、この仏の欣也さんが許さねぇ。
 いいか、解ったな。くれぐれも失礼がないように、ちゃんと送り届けろよ」


 岡本に促されて、英治が頭を掻きながら、のそりと立ちあがる。
そのやりとりを、片目を開けた響が、興味深そうに眺めている。
金髪の英治と呼ばれた青年は、あらためてよく見ると、
引きしまった体型をしている。
顏もまた今風の、まあまあの『イケ面』のようにも見える。
(やばい!もしかしたら、私のタイプかもしれない・・・・)
急にドキドキしてきたものの、また目をつぶり、響がにわかに
眠ったふりをする。

4話へつづく