PALMS
昔、南の島に王国があった。そして王にはルナルナという美しい一人娘がいた。
ルナルナは十七歳。そろそろ婿を迎える年頃であった。そしてその婿こそが次期国王に選ばれるのだ。
この王国では、一番早く椰子の実を取る「バッサ」という競技を行い、婿を選ぶという習慣があったのである。
島の若者は皆、木登りの練習に勤しみ、椰子の実を取ることに執着する日々が続いていた。
ルナルナは今夜も、王が寝息を立て始めたのを見計らって、決して豪華ではない宮殿をそっと抜け出す。そして一目散に、潮騒のする岬の方へ駆け出していった。
岬では一人の若者が待っていた。粗末な衣服を見ると、決して高い身分ではないらしい。若者の名前をサバシといった。
「サバシ、遅くなってごめんなさい。お父様がなかなか寝付かなくて……」
息を切らしたルナルナがサバシの元へ駆け寄る。
「いいんだよ。僕は君と会えるだけで十分だ……」
サバシは優しく微笑んだ。優しそうな笑顔に澄んだ瞳。ルナルナはサバシの胸に飛び込む。満天の星空が二人を祝福するように、囁きあい、さんざめいていた。
ルナルナとサバシは見詰め合う。空には南十字星が輝き、ハーフムーンが二人を優しく照らしていた。
ルナルナが瞳を閉じた。サバシはそっとルナルナに接吻をする。月と星たちに見守られ二人は愛を確かめ合っていた。そして二人はお互いの愛を確かめ合ったのである。
椰子の木の下で寄り添うルナルナとサバシ。だがルナルナの顔はどこか浮かない。
「いよいよ明後日、バッサの日よ……。サバシ、自信はあるの?」
ルナルナがサバシの顔を下から覗き込む。だがサバシは動じずに答えた。
「大丈夫。必ず優勝して見せるさ!」
ルナルナは知っていた。サバシはそれほど体力があるわけではないし、木登りが得意なわけではない。かといって、バッサのために木登りの練習をしている様子も見られなかったのだ。であるからして、ルナルナの不安も当然と言えよう。
「もし、あなた以外の人が優勝して、私が生娘じゃないってことがわかったら、あなた鮫の餌にされちゃうわ。そうなったら、私、生きていけない……」
ルナルナは声を震わせて顔を伏せた。サバシはその肩を強く抱き寄せる。
「絶対に大丈夫だ。僕が優勝してみせる。だから、心配しないで……」
ルナルナは十七歳。そろそろ婿を迎える年頃であった。そしてその婿こそが次期国王に選ばれるのだ。
この王国では、一番早く椰子の実を取る「バッサ」という競技を行い、婿を選ぶという習慣があったのである。
島の若者は皆、木登りの練習に勤しみ、椰子の実を取ることに執着する日々が続いていた。
ルナルナは今夜も、王が寝息を立て始めたのを見計らって、決して豪華ではない宮殿をそっと抜け出す。そして一目散に、潮騒のする岬の方へ駆け出していった。
岬では一人の若者が待っていた。粗末な衣服を見ると、決して高い身分ではないらしい。若者の名前をサバシといった。
「サバシ、遅くなってごめんなさい。お父様がなかなか寝付かなくて……」
息を切らしたルナルナがサバシの元へ駆け寄る。
「いいんだよ。僕は君と会えるだけで十分だ……」
サバシは優しく微笑んだ。優しそうな笑顔に澄んだ瞳。ルナルナはサバシの胸に飛び込む。満天の星空が二人を祝福するように、囁きあい、さんざめいていた。
ルナルナとサバシは見詰め合う。空には南十字星が輝き、ハーフムーンが二人を優しく照らしていた。
ルナルナが瞳を閉じた。サバシはそっとルナルナに接吻をする。月と星たちに見守られ二人は愛を確かめ合っていた。そして二人はお互いの愛を確かめ合ったのである。
椰子の木の下で寄り添うルナルナとサバシ。だがルナルナの顔はどこか浮かない。
「いよいよ明後日、バッサの日よ……。サバシ、自信はあるの?」
ルナルナがサバシの顔を下から覗き込む。だがサバシは動じずに答えた。
「大丈夫。必ず優勝して見せるさ!」
ルナルナは知っていた。サバシはそれほど体力があるわけではないし、木登りが得意なわけではない。かといって、バッサのために木登りの練習をしている様子も見られなかったのだ。であるからして、ルナルナの不安も当然と言えよう。
「もし、あなた以外の人が優勝して、私が生娘じゃないってことがわかったら、あなた鮫の餌にされちゃうわ。そうなったら、私、生きていけない……」
ルナルナは声を震わせて顔を伏せた。サバシはその肩を強く抱き寄せる。
「絶対に大丈夫だ。僕が優勝してみせる。だから、心配しないで……」