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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 水呑場でガタガタやっていては他の女生徒に見つかって大事になる。俺はとりあえず森に引っ張り込んでいた。
 うむむ、よく考えると夜中森に美少女を引きずり込むなどはたから見たら完璧に痴漢行為ではないか。
「仕事だ、調査に来た。それ以上は企業秘密だ」
「何を調査してんのよ、こんな所で」
 女の子。
 と、言ったらまた誤解されそうなのでノーコメントを貫く。
「お前こそ何やってんだ、こんなとこで」
 攻守を交代させる。ジュンは睨んだまま答えた。むう、体操着姿でその表情…… コアな人間なら写真買ってくれそう。
「寮生活に決まってるじゃない。転校してきたのよ、ここに」
 ジュンは社長令嬢、お嬢様である。が、父親は先日殺害された。父の残した遺産、主に株券などで今も裕福に暮らしていけるが家にいたくなかったのだろう。その辺は理解できる。
 そういえば近くに来るとメールがきてたな。この事だったのか。
「昼間転入してきたって噂聞いたけど本当だったんだ。便利屋やめたの?」
「やめてねーよ。わけあって1ヶ月だけ入学した」
 ジュンはそれにまた睨んできた。よせ、その表情。写真撮りたくなっちまう。
「怪しすぎるわね、またよからぬ事やってるんでしょ」
 何を言うか、今回は結構真っ当な仕事だ。
「ともかく、この学校でちょっとゴタゴタが起こりそうだ。巻き込まれると厄介だ。俺と会った事も俺と知り合いな事も隠しとけ。いいな」
「会った事は隠せるけど、あなたと知り合いな事はこの街じゃ結構有名みたいよ?」
「ほえ?」
 俺はこの街ではそれなりに有名人である。で、そういえば会社のHPに俺達とジュンの記念写真を貼ったまんまだった。あー、しくじったな。
「まぁ、せいぜい大人しくしててくれ、じゃあな」
 俺は背を向け高等部に向かった。その背中に、
「ちょっと」
 と、ジュンのまた冷たい声が背中に刺さった。
「デバガメの件はうやむやにする気?」
「神に誓ってそんな事はしてません、アーメン」
 振り返らずにそう言って俺は去った。
 確かにそんな事はしていません。
 未遂です。
 俺、嘘はついてませんよね? ジーザス。
 
 俺は目的地に戻っていた。瀬里奈たちのたまり場、北の倉庫だ。暗視鏡をセットしドアをくぐる。中は暗い。埃っぽさも、かび臭さも昼間のまま。スターライトスコープのスイッチを入れる。
 瞬間、俺はベレッタを引き抜いていた。
 異常なものは何も見えなかったが体が反応した。
 なんとなくだが…… やばい気配がする。理屈ではない、気がするだけだ。しかしその勘に今まで何度助けられてきたか。
 すると右手のベレッタだけでは心もとない気がしてくる。
 どうする、引き返して装備を整えるか? しかし何者かが侵入しているなら急ぐ必要もあるか……
 1秒と迷わず俺はUターンした。
 仕事の成功のため危険を顧みず邁進する奴はプロでは無い。生きていれば任務を果たす可能性は消えたりはしない。
 臆病者と罵られようがやばいと感じたら引け。松岡もよくそう言っていた。
 左手で今閉めたばかりのドアに手を伸ばす。その瞬間暗闇の奥で何かが動いた。まるで意識せず俺は後方に尻餅をつくように飛んでいた。ドアがバンっと震えた。着弾だ。
 瞬時に体勢を立て直し、部屋の奥へ。
 敵はどこだ。サイレンサーを使ったのだろう。発射音は聞こえなかった。気配も消えている。こいつは…… プロだ。
 部屋の間取りを思い出す。俺ならどこに隠れてどう襲うか……
 わずかだが移動する音が…… 気配がした。ゆっくりと…… 近づいてくる。俺を探しているのだろう。このままいけば奴は俺の正面に来る。角まで進み不意を突けば倒せる。
 俺は音もなく前へ。
 行く振りをして銃を上に撃った。何かが俺の右肩に乗るように振ってきた。ナイフだった。ナイフを握った腕が俺の視界に飛び込んできた。前の奴は囮。油断して進んだ奴の上方背後からナイフでしとめる魂胆だったのだ。読みは当たった。
 俺はその右腕を両手で抱え一本背負いの要領で投げる。まるで抵抗は無い。俺の弾丸は見事に命中していたようだ。
 しかしこいつの死亡を確認する暇は無かった。前にいたやつが風のように通路の端に現れた。距離は5mほど、ゴーグルをしていた。やつらも暗視鏡もちか。
 低い姿勢のまま奴の前から消える。乱雑に置かれた荷物を盾にして奴の背後へ……
 が、そこへドンと衝撃がきた。
 撃たれた。後から。心臓の辺りに。正確な射撃だった。
 俺は前のめりに倒れる。もう一人いたとは。しかも完全に気配を消していた。
 俺を撃った男は止めを刺すべく、近寄ってきた。
 絶体絶命か。
 背後から奴が迫る。うつぶせに倒れていた俺の側に奴は立った。受身も取らずだらんと伸びた俺の腕。しかしそこにはまだベレッタが握られていた。
 全く体を動かさず俺は引き金を引いた。
 弾丸は奴のつま先に命中し指を砕いた。苦悶の声を上げる男に俺はくるりと反転し2発放つ。
 弾丸は正確に顔面を捉え、1発がゴーグルを砕き1発が鼻の下辺りに穴を開けた。
 飛び起きて音も無く移動する。同時に暗視鏡は捨てた。
 感覚を信じろ。
 松岡の教えだった。
 目に頼らず感覚を信じた俺は頭上の敵を倒すことが出来たが、暗視鏡を頼った今、背後から撃たれた。
 奴等はプロだ。プロ相手には研ぎ澄まされた勘だけが頼りだ。しかも重いゴーグルを付けたままでは動きが鈍る。
 敵はあと一人。わかる。凄腕だ。
 全く気配がつかめない。
 突然、ふわりと影が襲い掛かってきた。至近距離。体が自然に沈みつつ右へ移動する。神速で迫る弧月に左手の甲を打ち込む。十分な手ごたえの後、金属音が床に響いた。ナイフだった。銃を向けていたら首筋をえぐられていた。
 接近戦では銃よりナイフ。そして考えていたら負ける。反射動作で対処し、反撃する。それができるように歯磨きをおぼえるよりも早くから仕込まれている。
 屈んだ姿勢から腹へエルボーを…… しかし奴も然る者。
 ナイフを失ったことに全く動じずトウキックを俺に放っていた。腹筋に力を入れ何とかこらえる。
 こっちの反撃は左ストレート。しくじった、まだ右手にベレッタを握ったままだった。動きの選択肢が減る。
 奴は俺の腕を取り、背負い投げをかけた。受け身を取る。鈍い痛みが前進に走る。何だ、この力は。反射神経は。
 威嚇の意でベレッタを一発撃った。全く無視して俺を踏みつける。左手で受ける。プロテクターが無ければ折れていた。
 尋常な力では無い。
 回転して体勢を整えようとする。その俺にひょいとジャンプし奴は馬乗りになる。マウントポジションだ。
 やばい、今度こそやばい。
 ドンッ。
 銃声が響いた。
 俺でも奴でもない銃声。
 奴は瞬時に飛びのき、俺から離れ闇の中に消える。
 俺も飛び起きて物陰に隠れる。
 入り口の方向に銃を撃った男はいた。
 数秒後、激しい物音がした。奴が、銃の男に襲いかかったのだろう。スターライトスコープを捨てたのでどんな動きをしているのかは見えない。しかしすさまじい動き、スピードである事は音の連続で把握することが出来る。