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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 ぐっという呻き声がして、奴、俺と戦ったほうの奴が逃走した。入り口から飛び出していく音が聞き取れた。
 俺を追い詰めた奴を撃退するとは…… 何者だ?
 場合によっては狼が去って虎が現れただけかもしれない。
「生きてるか?」
 聞きなれた声がした。
「ああ、なんとかな」
 返事をして立ち上がる。スターライトスコープも回収する。
 高いんだよ、これ。
 電気がついた。一瞬だけ眩しかったがすぐに慣れる。
 男は三郎だった。
 ラジオ出演しているはずだったが、収録が終わったのだろうか。
「すげぇスピードと反射神経だった。やばかった」
 歩み寄りつつ正直に話す。強がりは今後のためにならない。俺達の命に関わるのだ。
 三郎はバカにした台詞を吐くかと思ったが、
「あれはドーピングだな。スラムで出会ったことがある。まともに相手をするのは少々困難だな」
 お前今まともにやりあって勝ったじゃねーか。
 あいかわらずこいつの才能には舌を巻く。
 それにしても今の刺客、スピードとパワーに圧倒されてよく考えなかったが…… それだけであれほど俺を追い詰められるものか? 俺と三郎でそんなに差があるんだろうか。
 まるで俺の手の内を読んでいたかのようだった。
「とにかく、仕事に戻ろう。上だ」
 俺は背中を向け階段のほうを指差した。しかしこの発言には三郎はため息をついた。
「バカかお前は、あんだけ発砲してりゃすぐ警察が来る。面倒だぞ」
「急げばすぐ済むさ。警察だってそんなに早くは……」
 いいかけて絶句する。赤灯の光とサイレンが窓ガラスに映ったのだ。さすがシェリフ凄腕。いや…… いくらなんでも早すぎだろ。
「警察が側で張ってやがった。なんか掴んでんじゃないか、シェリフ」
 やはり…… さすがか。シェリフと呼ばれ尊敬されるだけの事はある。エバンス警察署長。
「逃げよ」
 出直しだった。俺達は学校からトンズラした。

 三郎は会社に帰り俺はマンションに戻った。
 帰り際、三郎は俺の背中をほじった。つぶれた弾丸があった。
 俺達の活動服はさっきも言ったとおり防弾性がある。胸や背中は特に強化されており38口径くらいなら止めてしまう事ができる。
「マグナム弾だったら即死だったぞ」
 三郎は冷たく言った。まさしくそうだった。
「運がよかった」
 三郎はうなずいて続けた。
「そう運がよかったから助かった。運が悪かったら死んでたじゃない。それがわかってるんならまだましだな」
 俺を叱責するような三郎の物言いに俺は不思議と反発も感じず頷くばかりだった。
「松岡にも似たような事言われたよ」
「…… 凄腕だったんだな、お前の教師は」
 立ち去るハンサムの背中を俺はしばらく見つめていた。 

「Jr.一寸先は闇だ。だが恐れることは無い。先の見えてる奴なんかどこにもいないんだ」

 あくる朝、今日も暑い。学校は大騒ぎになっているかと思いきやそうでもなかった。臨時休校やら緊急連絡とかが回ってくるかと思ったのだが何もない。
 ラーメン屋からの情報では夜中警察が来て倉庫を調べたが見つかったのは血のりだけだったそうだ。
 おかしい、少なくとも一つは死体があったはずだ。あのタイミングで片付けられるだろうか?
 朝一番で署長に電話して確かめた。守秘義務がある、の一点張りだったが殺人事件を隠すような人じゃない。誰に圧力をかけられようと、だ。
 念のためアリスにも電話する。署長と違ってあの巨乳なおねーさんは口が軽い。ついでに尻も軽いと何かと楽しい事になるのだが、どっこいガードは非常に固い。
 まあ、そんな事はどーだっていい。
「署長は嘘なんかついてないわよ。報告書は私も見たし。張り込んでたのはデーブさんだしね。知ってるでしょ? 麻薬課のベテランよ。他に怪しいものは何も出なかったって」
 デーブ…… ああ、補導した高校生に自殺されちまった刑事か。
「で、何。なにかこの件で知ってるの?」
 情報を得るつもりが提供させられそうになったので切った。口が軽いという事は警察の情報を垂れ流しにしてくれるが、反面こちらの情報も警察にダダ漏れにしてくれるという事だ。くわばらくわばら。
 とりあえず情報の収集はあきらめた。俺は登校し立入禁止のテープが貼られた倉庫の前に数人の野次馬にまぎれてやってきた。
 署長の背を低くしたようながっちりした体格の黒人が若い奴らにあれこれ指示を出している。昨日張り込んでいたというデーブ刑事だ。顔は知っているがさほど親しいというわけではない。話しかけるわけにはいかないだろう。
「風見」
 背後で冷ややかな声がした。なんか最近冷たい声ばかり聞くな。誰か温かな言葉をかけてくれよ。
「お前の仕業だな?」
 葉山生徒会長だった。憎憎しげな目で俺を睨んでいた。
「何の事でしょう、会長」
 とぼける俺に対して舌打ちしてから丁寧に説明してくれた。
「夕べ倉庫の中で銃声があった。そして床に血のりがあった。お前が一番怪しい」
「根拠も無く人を疑うのは問題がありますよ。何故俺が?」
 会長は澱むことなく語る。
「お前は昨日あそこに入り一悶着起こしている。そしてお前が銃をよく使う事は広く市民に知られている。ここは学校内で銃なんかとは無縁の場所だ。お前を疑うのは当然だろう」
「可能性があるだけで俺だという証拠にはならないですよ。ところで誰が銃声を聞いて通報したんです? 警備員ですか」
「誰も通報などしていない。たまたまパトロール中だった警官が銃声を聞いたんだ」
 敵意丸出しの会長だったが…… ふーん、ふーん。
 この学校はどうもおかしな事が起きるな。
「もうひとつある」
 会長の声が鋭さを増した。
「昨夜、倉庫近くの中等部女子浴場付近に怪しい人影があったらしい。のぞきだろう。目撃情報によると時間的に銃声と一致している。お前だな?」
「なんでそれが俺なんです?!」
 俺だけど。
「日ごろの行いからして大いにありえる」
 あんた昨日俺に会ってちょっと話しただけじゃねーか。
「女子浴場ってそんなに簡単に覗けるんですか? 調べる価値がありますね」
「不埒な発言はするな。今日中に対策は打つ。とにかく……」
「よせ、葉山」
 会長の猛攻を遮ったのは体育教官小森だった。
「こいつの言うとおり証拠もなく疑うのは問題だ。今は下がれ」
 会長を止めながらも小森は俺をじろりと睨んでいた。こいつも完全に俺を疑っていた。
 この誤解はどうしたら解けるか……
 無理か、誤解じゃないし。
 会長はしぶしぶ帰っていったが小森は残りもう一言俺に告げた。
「お前が関係しているのかは知らないが、お前が転入してきたとたんこの騒ぎだ。この学校にごたごたを持ち込むな。わかったな」
 イエッサー教官殿。俺も持ち込みたいわけじゃありません。むしろごたごたを起こさないために来たんです。
 そんな事を説明するわけにもいかず、俺はわかりましたと頭を下げてこの場を後にした。
 教室に入ると米沢さんが出迎えてくれた。その背後を見ると瀬里奈は今日は来ていた。俺を見て顔を背けやがった。
 米沢さんは瀬里奈を見た俺の視線には気づかなかったようでにこやかに言った。
「昼休み体育館に来てよ」