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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 ついでに単元のレポートを提出しろときた。さすがに今日転入の俺には免除されたがクラスの手前何もしないのも居心地が悪い。誰かのノートでも見せてもらおうか。
 HRが終わりキリスト教学校らしく「アーメン」なんて言って解散になってから俺は辺りを見渡す。
 瀬里奈はノートなんか取ってないだろう。取ってたところで見せてくれそうも無い。
「あんたに見せるくらいなら焼く」
 くらい言いそうだ。
 となると知り合いは後一人しかいない。
 米沢さんは何事も無かったかのように太陽のような微笑でノートを貸してくれた。と、言っても借りてしまうと米沢さんは宿題を出来ない。購買部に移動しノートのコピーを取る事にした。
 案内する、と米沢さんもついてきた。購買部にはさっき行った。案内は必要ないが、まぁ断る理由も無かった。教室を出る際、瀬里奈を確認したが授業が終了したというのに席に着いて外を眺めているばかりだった。
 表情は見えなかったが風にわずかに揺れる長い髪はとても綺麗だった。
 あの頃と変わりなく。
 道すがら瀬里奈は幼馴染で10年ぶりに再会した事、親父さんに様子を見てくるよう頼まれていると米沢さんに話した。変な連中と何やらこそこそやっている。なんとかしてやらないと…… など細部のディティールは違うが嘘はついていない。だから彼女は納得したようだ。
「確かに親御さんとしたら心配だよね、あんな調子じゃ」
「まぁね、何やってんだか」
 米沢さんはまだ何か聞きたいようだ。ちょっともじもじして質問してきた。
「彼女とはさっきのとこで偶然会ったの?」
 気になるのだろうか、瀬里奈と俺の事。ま、自惚れが過ぎるか。
「いや、北の倉庫の2階だ。奴らの隠れ家みたいだな。また行ってよからぬ事してないか確かめないとな」
「ああ、そうなんだ……」
 何故かよそよそしかった。女の子の反応はわからん。
「で、何で俺を探してたの?」
 質問され米沢さんは自分の用事を思い出したようだ。
 メガネの下の大きな瞳を輝かせて話し始めた。
「風見君さ、バスケ得意?」
 得意かどうかと言われれば得意だろう。
 うちのビルの横にはバスケのゴールが設置されており時折ゲームに興じることがある。言うまでもないが俺達BIG-GUNの3人は全員運動神経反射神経共に抜群だ。加えてジムは190もある長身だし三郎のスピードと技は他を全く寄せ付けない。その二人とほぼ互角にプレイできる俺は、まぁこの街の高校生レベルなら超えているといえよう。
 3人で3on3で出れば全国クラスも夢じゃないんじゃないかな。
 とはいえ。
「俺、短期入学だから部活とかは無理だよ」
「部活じゃないよ、クラス対抗戦。球技大会だよ」
 来週末には1学期の期末テストだ。つまり本格的な授業は一端お終い。夏休みに向けてだらだらとするわけだ。
 そこで開催されるのが球技大会。今年はバスケで全校クラス対決をするそうだ。
「賞品は?」
「栄光の額」
 彼女はさらりと答えた。
 校長が毛筆で書いた「栄光」という文字を額に収めた物。これが年度末、クラス替えのときまで教室に飾られるのだそうな。
 そんな物に何の価値があるのか疑問だが。
「やる以上勝ちたいじゃない」
 米沢さんはやけに勝気な表情になった。
「女子はそこそこいけそうなんだけど、男子ときたら全然やる気無いのよ。このあちーのに何でバスケなんかやるんだとか言って。どう思う?」
 どう思うと言われても男子の意見に大いに賛成だ。暑い日には冷房の効いた部屋で冷たいジュースを飲みつつダラダラするのが一番いい。
「情けないでしょ、高校生活始まったばかりなのよ、ダラダラして何になるって言うのよ」
 俺の意見も聞かずに話を続ける。強烈なマイペースだ。こうなると俺は本音を言うわけにはいかなくなり、
「確かに、少しは上向かなきゃな」
などと心にも無い事を口にしてみたりする。
 自分の弱さに少し涙。
 購買部に到着、コピーを使い始める。うおっ、女の子文字。解読にちょっと手間がかかりそうだ。
 作業の間も米沢さんの青年の主張は止まらない。
「何気なく生きてれば楽でしょうけど、そんな生き方したって退屈なだけよ。だからネットで人の文句言ってるだけの奴が出てくるんだわ」
「まぁ、スポーツの苦手な奴もいるさ。そういう奴にしてみりゃ全校生徒、とりわけ女子の前で恥かくのは辛いだろう。その辺は察してやりなよ」
 米沢さんはちょっと上目遣いになった。
「優しいんだ」
 俺は柄にもなく、ちと怯んだ。
「そんな事はないさ。とにかく、スポーツやらないと駄目ってのは極論過ぎるな。最近変な薬に手を出す奴等もいるらしいがそんなのに比べればずっとましだし。まぁ、前向きに何かやるべきってのは賛成だが」
 ぴたっとトークが止まった。
「どした」
「い、いえ」
 何かごまかす様に首を振ると米沢さんはズイと顔を近づけてきた。メガネに俺が写りこむほど。力いっぱい。
「じゃあ、他に何を」
 さすがの俺も一歩引く。しかしそれに合わせて彼女も一歩前へ。こ、怖い。最近女運悪すぎ。
「た、たとえば高校生らしく勉強でもいいし、文科系の部活だっていいし、恋愛だって……」
「恋愛?!」
 見る間に顔が赤くなった。接近しすぎていたのに今気がついたのだろう。なんだかジタバタして頭の中を整理しているようだ。
「ちがうちがう、今はそんな話じゃなくてクラス対抗のバスケで……」
 本当にマイペースな子だ。空回りするときも一人でやっている。
 コピーも済んだので、ノートを返そうとしたとき巨大な影が俺達に接近してきた。
 がっちりとしたデカイ体。ごつくいかつい表情。スポーツ刈りの頭。ジャージスタイル。
 学校でこういう大人にあった場合、この人の職業は何か。
「お前ら…… 薬が何だって?」
 威嚇し口を割らせようとする凄みある声。
 学校生活の真の支配者「体育教官」のお出ましだ。
「小森先生……」
 米沢さんの声に怯えが混じっていた。
「退屈しのぎに違法ドラッグに手を出す奴はクズだと…… 彼女に力説していただけです」
 とっさに言い訳すると小森はジロリと俺を睨むと米沢さんに視線を戻した。
「本当か?」
「…… はい」
 今度は俺を見る。
「知り合いにそんな奴がいるのか?」
「いいえ、噂話だけです」
 本当は…… 知ってるな、そういう奴は山ほど。ま、黙ってよ。
 真意を確かめるように体育教官は睨み続けた後。
「校内で不穏な話はするな」
 と、話を終わらせた。さっき聞いたような台詞だ。流行ってるのか。
「お前は? 見かけない顔だが」
 今気がついたようにわざとらしく質問して来た。俺はまた猫を被ることにした。
「今日転入してきた風見健です。よろしくお願いします」
 教官は忌々しげに「お前が……」とつぶやくと去っていった。
 おそらく兄貴はここまで手を回したのだろう。
 教師たちに俺に関わるなと。

「Jr.運は大事だ。だが運に頼る奴は死ぬ」

 夜。俺は学校近所のマンスリーマンションにいた。
 自宅から通うのはめんどくさいし、今回は予算もある。