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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 新しい巨乳な秘書に振り回されているシェリフに思わず苦笑した。
 俺は手を振り別れを告げると体育館に入った。
 入ったとたんに甲高い声が俺を迎えた。
「新聞部です! 風見先輩、調子どうですか!」
森野記者だ。お下げを弾ませて走ってきた。立ち直りが早い奴だ。やけに元気だな。
「まぁ馬体重は重めですがローテーションはこの試合一本に絞ってきましたし、勝ち負けのレースでは自信があります」
「競馬じゃないですよ?」
 む、よく突っ込んだ。なかなかやるな。
「お前は完全復活なのか? ハイテンションだな」
 森野は照れたように笑った。
「わかりますぅ? 実はまた気になる男性がいて」
 女ってのはこれだ。
「今度はどんな奴だ。タレントかスポーツ選手か」
 そういえば俺も今はスポーツ選手だな。
「近いです。ラジオで恋愛相談してる人なんですけど」
「…… まさか北下三郎?」
 森野の顔がぱっと輝いた。
「知ってるんですか?! かっこいいですよねぇ、言いにくい事をズバッと言っちゃって。しかも真実を捉えているから心に響くんですよ」
 こいつはああいう男にしか引っかからんのか。
「ラジオじゃ顔わからないじゃないか」
 森野は指をチッチッとワイパーさせた。
「何言ってるんですか、ネットで配信されてますよ。風見先輩の3倍はいい男です」
 てめーも言いにくい事をズバッと言うな。
「お前記者の癖にあいつが俺の相棒だって知らないな? 同じ会社にいるんだぜ?」
 森野の顔が本当にわかりやすくゆがんだ。
「ええ!? まじっすか?! 取材に行かせてください!」
来たら生卵ぶつける。
 俺は手を振って仲間を振り返った。
「待たせたな、今日で最後だがよろしく頼む」
 全員が頷いた。
 キャプテン野村が声を出した。
「よし、しまっていこう!」
 試合は楽しかった。俺達は快進撃を続けた。
 高校生活最後を飾るにふさわしい一日だった。
 瀬里奈と米沢さんがいて欲しかったが。

 時間はあの日に戻る。
 会社のガレージに帰ると細長い影がゆらりと立っていた。
 三郎に来ないように指示して俺はゆっくりと車を降りた。
「殺した…… の?」
 影は瀬里奈だった。
 怒った表情をしている。いや怒ったとは違うかもしれない。
 恨み、呪いその類か。
 その細い体の中でどんな感情が渦巻いているのか、俺にわかるはずもない。
「ああ」
 俺は事も無げに答えた。ひょっとしたらいつもみたいに薄笑いしていたかもしれない。
 瀬里奈の右手には銃があった。皆で練習したあの銃「チーフスペシャル」だ。
 銃が素早く持ち上がった。
 俺は軽く横へ飛びのきながらベレッタを抜いて撃った。
 瀬里奈はビクンと震えてひざまづいた。
「不意をつかなければ勝ち目は無い。そう教えたはずだ」
 俺は近づいて瀬里奈が落としたチーフを蹴り飛ばした。
 車から三郎が降り、一階からのドアからジムが出てきた。
 二人とも銃を持っていた。
 瀬里奈は右手を抱えうずくまったままだった。
 至近距離だ。抜き撃ちで銃だけ撃ち落すなど簡単だった。
 瀬里奈は泣いていた。
 もう他にできる事は無いのだろう。
 俺にもしてやれる事は何もないが。
 帰る途中、三郎は俺に聞いた。
「あの子がお前を殺そうとしたら、どうすればいい」
 即答できなかったが返事は決まっていた。
 俺は瀬里奈のために命がけで戦ったつもりだが、あいつのために死んでやる事はできない。
 俺はその程度の男だ。
 なにしろ、ただの悪党だから。

 次の日実家から瀬里奈に迎えが来た。あいつは両親を失い天涯孤独だ。したがって実家とは俺の実家だ。とりあえずもう夏休みだし兄貴が預かると申し出てくれた。
 朝来てくれればよかったのに夜まで待たされた。あの後瀬里奈は一言も口を聞かなかった。
 当たり前だがな。
 兄貴本人が来るとは思っていなかったので兄貴のアストンマーチンが現れた時は少々驚いた。しかし車から降りてきたのは銀髪のハンサムではなく金髪の大美人だった。
唖然としていた俺にジェニーは車と自分を交互に指差し問いかけてきた。
「どっちが魅力的?」
「くれるんならそっち」
 俺はアストンマーチンDB7を指差した。ボンドカーにもなった超高級車だ。フェラーリなんか遥かに格下。
「失礼ねー。でも凄い車よね。このビルとどっちが高いかしら」
 あんたのほうがよっぽど失礼だ。だがいや待てどっちが高いかな。
 金の話が出たところでジェニーは「そうそう」と車内からバッグを取り出した。
「お仕事お疲れ様でしたー」
 場違いに明るい笑顔を見せると俺に茶封筒を差し出す。
 開けてみると小切手だった。また7桁の数字。後金って事だろう。まぁそれはそれとして。
「何で茶封筒なんだ」
 ジェニーは笑って答えた。
「大金裸で持ち歩くの怖いじゃない?」
 いや、だからってなんで茶封筒。まぁいいか。
 ジェニーは俺の肩越しに瀬里奈を見て小声で言った。
「フィアンセ可愛いじゃない?」
 瀬里奈はジェニーを見て少しほうけた顔になっていた。まぁそのくらいの美人だからな。
「よろしく頼むぜ」
 俺はちょっと真面目に言った。
 ジェニーはそれに「大丈夫」と胸を張った。
「クナイトったら、あの子は妹だ。心配するなって伝えろって」
 兄貴は情の厚い男だ。もとより心配はしていない。
 ハンサムすぎるのでそっちの方面では心配だが。
「かっこいいわよねー、でも私の前ではちょっと可愛いのよー」
 クナイトの話題になった途端、クールな表情が突然俗っぽくなった。
 すみません、のろけなら他所でやってもらえますか。
 ジェニーはまた俺に顔を近づけた。
「本当にクナイトの妹にしちゃえば?」
「ノーコメントにしとこう」
 すると綺麗な顔が悪戯っぽく笑った。
「金髪の子も可愛いわね、あっちが本命なんでしょ。おねーさんにはお見通しよ」
 お見送りの中にジュンもいた。瀬里奈に何か話しかけている。
「何を根拠に」
「私にちょっと似てるじゃ無い? やっぱり兄弟よねー、女の好みも似ちゃうのね」
 言われてみると二人とも金髪だし雰囲気がなんとなく似ている気もする。姉妹と言えば疑う人はいないだろう。テレビでよく見る謎のゴージャス姉妹よりはずっと似ている。いやそんなことではなく。
「兄貴とは義理の兄弟だが?」
「確かにそうでした」
 ジェニーは今度は大人っぽく笑った。ちーとも勝てないな、この人には。
 去っていく前に瀬里奈は俺達一人ひとりに礼を言った。
「ジムさん、優しくしてくれてありがとう」
 ジムは恥ずかしそうに頷いた。
「三郎さん、ラジオ聞きました。歯に衣着せない言葉っていいですね」
 三郎は何か答えたようだが聞き取れなかった。
 最後の一人に瀬里奈は特に感慨深げに話しかけた。
「ジュンちゃん、私もあなたみたいに強くなるわ」
 ジュンは照れ隠しにえへへと笑っていた。
 こいつは今回色々暗躍していたな。まぁ、ありがとうよ。
「料理もうまくなるわよ」
 いやだから誤解なんだけど。まぁいいか。
 俺の事は無視していくかと思ったんだが、俺の前にも立ち止まった。
「あなた、ただの悪党だとか格好つけてるけど、お父さんの受け売りでしょ」