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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「こいつが家を継ぐというなら俺は喜んで後継者の座を譲って全力でこいつを補佐します。だがこいつがそれを願わないなら、こいつのやりたいようにさせてやってください」
 俺は瞳を閉じ師匠に問いかけた。
 松岡、もう一度だけ教えてくれ。俺は正しいと思うか?

 駐車場にはランクルが停めてあり必要な装備は既に搭載してある。三郎も乗っていた。
「場所はわかった。すぐにいくぞ」
 俺は運転席に着くなり言った。
 三郎は頷いたが発進を止めた。
「電話しとけ。あの子はジュンとは違う」
 ジュンの事件か。思い出したくも無いが。
 俺は携帯を出し瀬里奈に電話した。思いのほかすぐに出た。
「瀬里奈、黒幕がわかった。これからケリを付けにいく」
 電話の向こうで絶句しているのがわかった。
「お前のよく知っているヤツだ。お前は知ってたんだろ?」
 数秒の沈黙のあと、かすれるような声で問いかけてきた。
「殺す…… のね」
 クナイトにはああは言ったが、気休め言っても仕方ない。
「ああ、そのつもりだ」
 また沈黙だ。そのあとの質問は俺には意外なものだった。
「あの子…… あなたの何?」
 ちょっと動揺してしまった。あの子とはジュンの事だろう。
「あの子も狙われて怖いだろうに…… なのに私を何度も慰めに来てくれた。私よりずっと年下なのに」
 言葉を少し選んでしまった。
「あいつはちょっと特別なんだよ」
「強いんだね……」
「ああ、だけどお前が弱いわけじゃないさ」
 少し涙を拭く音がした。
「それで…… あなたにはやっぱり特別な子なの?」
 俺は考えた。本当に考えたんだ。
「俺にとってアイツが何なのかは正直な話わからん」
 瀬里奈は涙声でクスリと笑った。
「それは惚れてるって事だよ」
 そうかな?
「メールで聞かれた事はあるが返事はしてない」
「ばかじゃないの?」
 そうかも。
「俺にとってアイツが何なのかはわからん。が、変な話だがアイツにとって俺が何なのかはよく知ってる」
「なに?」
 瀬里奈の声に「興味」が宿っていた。
「親の仇だ」
 瀬里奈はまた息を呑んだ。
 俺はこの街でアイツの親父さんを撃った。
「あの子は知ってるの?」
「知ってるよ、多分な」
 なのに、ああいう態度なんだ。あいつは。
「私には…… 無理だな」
 それが答えだ。
「…… 普通そうだ」
 瀬里奈はもう返事をしなかった。
「じゃあな瀬里奈」
「…… ケンちゃん!」
 呼び止める声が聞こえたが俺は電話を切った。
 悪いな瀬里奈。結局お前を助けられなかった。
 俺はただの悪党なんだよ。

 松岡を殺す。
 そんな事をして誰が喜ぶ。誰が望んでいる。
 誰もいないじゃないか。
 じゃあなんでやらなくちゃいけないんだ?
 この事件で死んだ5人の高校生のためか。
 ヤツのばら撒いた麻薬で身も心もぼろぼろになり今禁断症状で地獄を見ている連中のためか。
 そんなはずはない。そうかもしれない。
 今確かにやつの死を願っているのはたった一人。
 電話が鳴った。
 瀬里奈ではない。知らない番号。
「Jr.か?」
「よぉ、今度はゆっくり話せるか?」
 松岡本人からだった。
「会いに来てくれるんだろ」
 松岡の声は穏やかだった。教官だった彼のこんな声を聞くのはいつ以来か。
「そのつもりだ。今家か?」
「いや友達の家だ。大勢いてね。こちらからは会いにいけない。私がどこにいるか、わかるか?」
「いや皆目」
 一応とぼけた。
「意外と側にいるよ」
 やっぱりな。
「警察のお友達も?」
 松岡は苦笑した。
「彼は寝坊しているがね」
 デーブもいるのか。手っ取り早い。
「ここは引き払う事になると思う。早く来てくれよ」
「なるべく…… な」
 電話は切れた。
 車を停め装備を身につける。街中だ。あまり目立ったものは持てない。大きめのアタッシュケースを開け中を確認する。
 愛用のサブマシンガンH&K MP5SD6。里森公園に持ち込んだやつだ。
 今回はスコープではなくドットサイトを装着してある。
 拳銃も一応確認する。右腰のホルスターにグロック17。ショルダーホルスターに「安心毛布」が既に収まっている。
 三郎はギターケースを持っている。
 さて…… 行くか。
 俺は三郎に拳を突き出す。やつもつき返しコツンと音がした。
 車をするりと降りる。ここはピース学園の駐車場だ。今日は休み。人はまばらだ。
 俺は小走りに外へ。三郎は悠然と校舎へ向かった。
 
 クナイトの情報は細かかった。
 家の見取り図も勿論あった。土地は200坪以上。建物は平屋で40坪はある。
 俺は裏口へ回り物陰に隠れる。裏庭は木が沢山植えられていて身を隠しやすかった。MP5を取り出し予備マガジンを腰に取り付ける。
 SD6はサイレンサー付きのマシンガンだ。音を消すサイレンサーは銃身の先に取り付ける円柱状のパーツだ。サイレンサー内部はいくつもの部屋に間仕切りされており発射されたガスがその中に入り減速する。
 発砲した際の轟音は主に火薬の爆発音だ。それは火薬のガスが噴出す際に発生するのでこいつの流出スピードを抑えれば発射音は大幅に削減される。音はこもっていて少し離れれば聞こえないほどだった。
 俺はデジタルトランシーバーで三郎と会話した。アナログと違い盗聴はほぼ不可能だ。
「準備は?」
「いいぜ」
 トランシーバーなので通話は一方通行だがこちらが話し出すと送信、やめると受信に戻る。便利な代物だ。
 三郎は今ピース学園屋上にいる。
「駐車場にセダン2台。二人乗りのスポーツカー1台だ」
 10人はいると考えなきゃいかんか。
「ここから見える限り庭に3人だ。犬はいないな」
「よし始めよう」
 相手はヤクザだ。手加減はいらない。
 MP5のボルトのレバーを引く。手を離すとボルトは勢いよく戻り初弾を薬室に叩き込む。戦闘準備完了だ。
 物陰から飛び出し低い姿勢で勝手口へ向かう。
 裏庭にも一人見張りがいた。木の影に入り構える。セレクターをセミオート(単発)に合わせる。
 トーンと遠くで音がした。火薬の音。見張りの男は一瞬どきんとしたがすぐに平静に戻った。学校の側だ。花火やら陸上部のピストルやら火薬の音はよくするのだ。
 俺は引き金を引いた。
 バシュッというガス音と共に弾丸は発射され男は倒れた。
 またトーンと音。もう一回はするはずだ。
 三郎が屋上から庭の三人を狙撃しているのだ。
 勝手口に取り付いた時もう一回鳴った。それっで銃声が止まったという事は一人一発ずつでしとめたという事だ。三郎なら当然か。
 俺はこういう時は頼りになる相棒に連絡を入れる。
「一人倒した。中に入る」
 三郎が状況を報告してきた。
「やつら気づいた。外に二人出てきたぞ」
「狙撃はもういいぞ。そこを離れろ」
 俺は指示して突入した。
 中はキッチンだった。広くて立派。とても一般住宅とは思えない。
 一人女中がいた。外が騒がしくなったので表のほうを見ていた。好都合。俺は背後から忍び寄り首筋を手刀で打ちつけ気絶された。すまんね、おばちゃん。