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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 見取り図では部屋は8個。この前はダイニングで左が書斎、ベッドルーム2。右が客間3、居間、応接間、玄関だ。建物はL字をしている。ここはLの角の部分。位置は悪い。挟まれる可能性がある。
 低い姿勢でそっとドアを開ける。居間から二人玄関に走っていく。その背中にバーストショットで1射ずつ放つ。MP5SD6はモード切替で1射で3発だけ発射するバーストショットが使えるのだ。二人は前のめりに倒れた。そのまま居間の入り口に狙いを定める。
 何事と? と頭を出したヤツがいた。その後頭部へもう1射。脳漿が飛び散った。
 ここはここまで。立ち上がり勝手口から飛び出す。MP5のマガジンをチェンジ。右へ走って書斎方面に向かう。後ろから俺を追ってくる物音が聞こえた。木陰に隠れ構える。
 勝手口から一人飛び出した。バカか。
 引き金を引く。こぎみよいリコイルと共に3発が発射され男は倒れた。
 最近のヤクザも劣化したもんだ。これじゃドーピングも必要ってもんだ。
 俺は壁伝いに進み庭を確認した。
 4人倒れている。もう一人は?
 殺気が走った。頭を引っ込める。側の壁がドンと振るえ銃声がした。庭に一人いる。三郎はもう狙撃ポイントを離れたのだろう。あいつは倒す必要は無いのだが…… 俺は来た方へ引き返す。頭のいい奴なら追わずに逃げる。また裏庭の木陰に隠れて待つ。追って来た。だが慎重に建物の影から俺を探している。三郎に報告する。
「裏庭にいる。建物の影に一人」
「引き受けた」
 即座に返事があった。奴の仕事は信頼できる。
 時間をかけるのはまずい。銃声を聞いた誰かが通報するかもしれない。
 やつが少し前へ出た。撃つ。牽制だ。当たるわけは無い。だがヤツは引っ込んだ。ヤツも闇雲に発砲しだした。バカよせ。
 突然止まった。
 奴が前のめりに倒れる。三郎か。もう庭に着いたのか。奴の声が耳に届いた。
「庭は確保する。行け」
 俺はまた勝手口へ入った。
 もう人はいないはずだが、デーブがいなかった。注意しなければならない。念のためMP5を再度マガジンチェンジ。
 ベッドルームの前まで来た。ベッドルームが二つ並び一番奥が書斎のはずだ。
 いる……
 体を壁に張り付けドアノブをそっと回す。ドアを開けたが反応は無い。人の声がするのに?
頭を低くしゆっくりと覗き込む。真っ暗な中にベッドが二つ並んでいる。そのうちの一つに誰か寝ている。
 寝息ではない。呻き声だ。鼻につく獣の匂いもする。こいつは……
 MP5を腰だめに構える。ベッドのヤツが気がついた。
 俺は発砲するより先に前方に飛んで伏せた。その頭上を巨体が通過していった。人間を越えたスピードと跳躍力。振り返り銃を撃つ。手ごたえはあった。しかしドーピング野郎相手だ。油断は出来ない。俺は構えたままヤツの動きを待った。
 果たして奴は反撃に出た。予想もしなかった動きで。
 デーブはただ立ち上がった。銃を構えている俺の前で。
 さすがに俺も唖然としたが、それも一瞬だ。
 MP5をフルオートで放つ。全弾体に命中したが奴は物ともしなかった。防弾チョッキじゃない。痛みを感じていないんだ。
 奴が腕を振った。ベッド脇にあったスタンドが飛んできた。避けるスペースは無い。両手でガードした。すさまじいパワーだ。思わずMP5を落としてしまった。
 奴は突進して来た。MP5に固執していたら俺は組み付かれて絞め殺されていただろう。
俺は横っ飛びベッドの上に跳んだ。デーブは目標を見失いそのまま壁に激突した。だがすぐに振り返り手刀を振り下ろしてきた。信じられない事だがベッドがへし折れた。ただ折れたのはベッドだけじゃ無い。奴の腕もボキリと言って変な方向に曲がった。だが奴は痛がるそぶりも見せず折れた腕を振り回してきた。腕に遅れて手首が鞭のようにしなってくる。
 化け物め。
 俺は飛びのいて腕をかわしショルダータックルをかました。力任せの攻撃の後はバランスを崩しやすい。奴は壊れたベッドに顔から突っ伏した。俺は素早くホルスターのグロックを抜く。間髪いれず奴がだらしなく見せた後頭部と首筋に正確に2発ずつ発砲する。
 麻薬中毒患者には肉体的ダメージより神経系の破壊。
 基礎知識だ。クナイトならきっと初弾で撃っただろう。反省しなきゃならん。
 デーブは痙攣もせずその場に崩れ落ちた。
 奴が立ち上がった時の目。焦点が合わず口から泡を吹いていた。
 強度のドーピングの副作用だ。おぞましい。
「待っていた、Jr.。流石だな」
 聞きなれた声がドアの向こうでした。
 ぴょんと飛び起きドアに銃を向ける。
 ターゲットはゆっくりと両手を上げながら姿を現した。
 癖のある黒い髪、少し痩せ気味の知性ある顔立ち。青いYシャツにスラックス。以前通りダンディな、しかし少しやつれた表情だった。彼は表情にふさわしい気だるい声で言った。
「奥が私の部屋だ。そちらで話そう」
 俺の言葉は聞かず、かつての教官は来た方へ引き返していった。デーブの死体にはまるで目もくれなかった。

 奥の書斎は狭い部屋だった。
 ベッドとデスクがあるだけの殺風景な部屋。
 窓は大きいがカーテンが締め切られているので薄暗い。
 人生最後の部屋としてはどうだろう。相応しいのか?
 部屋の主「松岡 仁」はデスクに座り俺にベッドにかけるよう薦めた。似たシチュエーションで、あんたの娘には断られた。俺も辞退しよう。
 部屋に入りドアから少し離れて立った。
 松岡は微笑んだ。
「出入り口の側、しかし廊下を背にしない。意識せずにやったな」
 俺の立ち位置に対するコメントだ。昔と全く変わらない口調だった。俺の返事は以前と変わっただろうか。
「あんたの教えだ」
 松岡は頷いた。松岡が話し出す前に俺が口を開いた。
「俺の質問が先でいいか」
 俺の無感情な声にも松岡は穏やかな表情を崩さない。
「もちろんだ。私に質問は無い」
「あんたは俺に瀬里奈を助けろと言った。しかし俺が瀬里奈と接触すると刺客を送ってきたり部屋に爆弾を仕掛けたり妨害工作をした。さらに瀬里奈を助けろといわんばかりに警告を入れた後、瀬里奈に仲間の断末魔を聞かせるなんて残酷な真似をしている。行動が無茶苦茶だ。どういう事なんだ」
 松岡はくすっと笑った。
「どう考えている」
 どうも訓練時代に戻っちまう。松岡はよく事件のシチュエーションを掲示してどんな可能性が考えられるか俺によく質問していた。判断力を高めるための訓練だったのだろう。
「一人でやっていたら狂人だ。ニチバのあんたを手駒にしようとしていた奴が強硬姿勢を取った。あんたは瀬里奈を守るために恭順の姿勢を見せながらギリギリの線で俺に情報を流すなどの抵抗をした。そんなところか」
 松岡は頷く。
「当たらずとも遠からず。いや正解と言っていいだろう」
「あんたを操っていたヤツは?」
「さっき君が殺した」
 デーブか。麻薬販売しようとして薬で死んだか。自業自得だ。
「もう回りにニチバのヤツはいない。瀬里奈も保護した。ここを出よう」
 だが松岡は首を振った。予想はしたが。
「私はここで死ぬべきだ。クナイトから依頼されているはずだ。仕事を全うしろJr.」
 だがすぐに引き金を引くわけにはいくまい。