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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 ジュンは瀬里奈に微笑んだ。瀬里奈の表情がまた強張った。俺はダッシュでジュンに近づき小声で話す。
「気を使え、何かやってた方が気が紛れるだろう。あいつは結構繊細なんだ」
 ジュンは「ああ」と言って頷いてくれた。
「やっぱり手を貸してもらえるかな、なんか細かいから覚えられないや」
 瀬里奈は一瞬目を反らしてから「ああ」と応じてキッチンに向かった。
 ジムも「俺も手伝うよ」とキッチンに入っていった。働き者である。
 三郎は居間のソファの隅に既に座っていた。その一番遠くに俺も腰を下ろす。
「貸しだ」
 こっちを見もせず野郎はつぶやいた。
 うるせぇよ。
 第一級の美人さん達がキッチンで働く後姿。気分よく眺めさせろや。
 待つことしばし。香ばしい香りと共に山盛りのチャーハンが俺達の前に置かれた。一人ずつには盛られず小皿に好きなだけ取れというバイキング形式である。
 さすが三郎のレシピで作られただけあり見事な出来栄えだった。ジュンに料理させる時はこの形式でいこう。
 瀬里奈は俺の隣に座っていた。箸を伸ばそうとはしない。ジュンはと言うと自ら作ったチャーハンに舌鼓を打っていた。「さっきのレシピちょーだい」などとはしゃいでいる。ちなみにヤツは三郎の隣に座った。なんかむかつく。
 食事半ばで瀬里奈から切り出した。
「いい子だね」
 ジュンの事だろう。何故か即答できなかった。
「ああ」とだけ答えた。
「かわいいし」
 まぁね。
「スタイルもいいし」
 瀬里奈はさっきまでとは違う感じでブルーになっていた。視線がジュンの胸元に行っている様だ。ジュンは童顔で背が低い割に発育がいい。対して瀬里奈は背が高くスタイルはいいのだが…… まぁスリムタイプだ。こいつはコンプレックスを溜め込むタイプか。ここは一つ慰めてやるか。なるべくシリアスな顔でしっかりと告げる。
「大丈夫だ瀬里奈。Aカップにだってちゃんと需要はある」
「B!」
 真っ赤になって立ち上がりやがった。
 松岡瀬里奈さんはBカップで確定の赤ランプ。
 一同の視線を集めた事に気づき瀬里奈は座りなおすと俺に小声で言った。
「誘導尋問ね、このスケベ」
「なんの事でしょう」
 おれは少し励ましてあげただけです。
「そうよ、ただのスケベよ、こいつ」
 テーブルの向こうから金髪の小娘が割り込んできやがった。だれがこいつだ。
「大人の会話をしているんだ。口を出すならバストが身長の半分を超えてからにしろ」
 するとジュンはちょっと寄り目で天を仰いだ。暗算をしているようだ。
そしてこうつぶやいた。
「もう少しか……」
「もう少しなの?!」
 瀬里奈が変なところで食いついた。まぁあなた身長あるからね。
 どうしたらいいんだ…… もう収拾がつかない。
「二人とも情報公開はそのくらいにして食べないか? おいしいよ」
 ジムはチャーハンを口に運びながら笑った。ジュンは頭をかきながら「そうだねー」と応じた。
 瀬里奈は一息ついて、またつぶやいた。
「本当にいい子だね」
「もうやめとけ」   
 俺がまじめに言うと、ちょっと沈黙が走り瀬里奈はごまかすようにチャーハンに眼を落とし一口食した。
「料理もうまいし」
 それは誤解。
 少しの間のあと、瀬里奈は落ち着いて口を開いた。
「さっき言いかけたの何。その中にって」
 蒸し返したか。言い出しにくい。しかし伝えなきゃならん事だ。
「麻薬を買っていた連中の中に……」
 その時俺の言葉を中断させる物が聞こえた。
サイレンだ。
「ちょっと待て」
消防ガイドに電話する。こんな時にと思うかもしれないが俺は消防団員だ。それになんとなくだが助かった、という気もした。
 消防ガイドは無人電話サービスで市内の災害情報をほぼリアルタイムに教えてくれる。
「*町*丁目、特定建物火災、が発生しています」
 特定建物火災とは学校病院など大勢の人間が利用する建物の火災の事だ。そしてこの住所にあるその手の建物といえば。
「ピース学園だ。火事だ」
 瀬里奈から安どの表情が消えた。タイミングからして俺達と無関係とは考えにくい。
 メールが入った。消防団員への出動メール。
「俺は火消しついでに現地を見てくる。お前はここで仲間と待て」
 3階の自室に消防団の活動服がある。俺は階段を駆け上がろうとした。そこに電話が鳴った。俺じゃない。瀬里奈だ。
 出た途端顔面が蒼白になった。
「アスカ! どうしたの!」
 瀬里奈は電話を耳につけたまま震えてへたり込んだ。駆け寄って電話を取り上げる。
 耳に当てると地獄が聞こえた。
「熱い! けむりが! たすけて!」
 アスカの声だ。それだけじゃない。他の4人、海城や神明,大岩の悲鳴、怒声も聞こえる。
「どうした、学校にいるのか?! にげろ!」
「あかない、まっくら、こないで!」
 返事は無い、パニック状態か? いやこの音声の入り方は。
 送信先を見る。不明だ。連中からの電話じゃない。部屋にあるマイクが拾った音だ。
 くそ、ここまでやるか?! 火に巻かれた仲間の声をわざわざ瀬里奈に聞かせたのか!
「助けに行く」
ジムに瀬里奈を任せ俺は駆け出した。

 消防団とは消防士と違い本職を持ち余暇を利用して訓練や今回のような災害出動をして本職の消防士を助ける団体だ。俺はこの春から参加した新入団員である。
 消防車や詰め所のある消防小屋はうちのすぐ裏手にある。
わが街の消防団は22の分団に別れ各地区に配置されている。近所にあるのは当然なのだ。
駆けつけると既に集まった先輩たちが耐火服に着替え発進準備を進めている。俺は分団長に燃えているのはピース学園で中におそらく4人の生徒が取り残されていると伝えた。
分団長は疑う事も何故知っているのかとも聞かず消防車に備え付けられた無線で本署に報告。仲間たちを乗せ消防車を発進させた。
旧規格の軽自動車を改造し無理やりポンプやホースを積んだ消防車は狭い。後ろ二人はホースをくぐって乗り込むほどだ。俺はその屋根すらない後席に座り現場に運ばれていく。
考えてみると初めての出動だった。
消防車は闇を切るように赤色回転灯をまわし、マイクで警告しながら赤信号も突っ切っていく。
はたから見ている限りではうらやましく見えた行為だが実際にやってみると怖いものだ。
踏み切りを越え学校に近づくと空が夕日のように赤く染まっていた。夜の闇の中にぶっとい煙も
「大火事だ」
 隣の先輩がつぶやく。緊張がありありと伝わってきた。
 すでに多くの消防部隊が集結し消火活動を行っていた。分団長は近くまで行く事を断念し、車を止めて現場に徒歩で走り他の隊を支援する事に決めた。
「いくぞ」
 念のため筒先を担ぎ分団長は走り出す。俺達も続く。野次馬を掻き分け、学校内に入る。
 巨大な火柱があった。
 予想通り北の倉庫だった。
 これだけの炎を間近にすると恐ろしいものだ。死線を潜り抜けてきた俺でも判断力が衰えているのがわかる。
 分団長はすでに放水を始めている仲間を発見すると駆け寄って交代した。
 運動神経は鈍いが生真面目で勉強熱心。なにより責任感が強いリーダーだ。俺は素直にその後ろに従い夢中で消火活動を手伝った。
 考えている事は唯一つ。