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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「あの禿はもう警察署にいる。俺が昼間通報した」
 あいつはニチバの一味ではなく金で買収された人間らしい。ほっといても消されたかもしれない。まぁかえって助けてやったうちに入るかもしれん。
 この場所で取引が行われる事を知ったのは、否これも違う。ここで行われると彼らに思わせたのは三郎の情報の賜物だ。
 FMシーの藤代は恋愛相談のコーナーで客を探すと同時に電波を使って次の取引場所を連絡していた。
 三ツ沢アナによると藤代はコーナーの最後に「どこかに行きたい」とか「待ってる」とかいう一文を台本に書いていたそうだ。これが取引場所を知らせる暗号になっていた。過去の放送内容から裏を取るのは簡単だった。
 そこで三郎はここに集まるよう夕べ三ツ沢アナに一文読んでらったのだ。
 藤代が死んだのはここにいる誰もがニュースで知っていただろう。薬がもう買えないかも知れない。そう不安になっていた彼らは嘘の放送を疑う事なく食らいついてきた。
 売り手買い手が一網打尽だ。事件は解決に向かうだろう。
 解決? これが解決だろうか。
 米沢さんは肩を震わせ泣いている。俺は十分言葉を選んだ。
「心配するな。警察署長は俺のマブダチだ。顔は怖いが悪いようにはしない。道を外れたヤツには容赦しないが、道を間違えた程度のヤツにはキチンと正しい道案内してくれる。そういう人だ」
 だが彼女は首を振った。
「だけど…… みんな私が悪いんだよ。私のせいで風見君危ない目にあったし」
「俺は怪我一つしてないさ。気にするな」
 米沢さんの涙が溢れた。
「瀬里奈はどうするの? 私、友達面して、協力する振りして騙してたんだよ? 瀬里奈の仲間なんて殺されちゃったんだよ?」
 罪を償うなんて言うのは簡単だ。だが犯した罪はけして消えやしないし、消えちまった命は帰ってこない。
 俺はゆっくり穏やかに言った。
「謝るしかないだろう。俺も一緒に謝ってやる」
 彼女は被りを振った。
「謝る? 瀬里奈は謝ってくれたのに私は何食わぬ顔して優等生みたいな顔して付き合ってたんだよ」
 米沢さんは嗚咽して言葉を詰まらせてから続けた。
「瀬里奈は私のために…… 何でもしてくれたのに…… 私は瀬里奈の足引っ張るばっかり」
「瀬里奈はああ見えてこの世の闇を見て育ってきている。麻薬の怖さは知っている。きっとわかってくれる」
「わかってないよ、瀬里奈は強がってるけど繊細なんだよ。今までだってずっと傷ついてきてる。それなのに……」
 それもわかっている。しかし俺はもう言葉が継げなかった。
 自らの将来への不安より友達を騙したことに泣いている少女に嘘の慰めを並べたところでどうなる。
 俺は俯いて泣く彼女と逆に天を仰いだ。
 月は大きく明るい。
 一撃で人を殺す事は出来てもこの娘を助ける事はできない。
 所詮俺はその程度の男か。
 何を今更……

 会社に戻り仲間に報告を終えると俺はマンションに戻った。この仕事はそろそろ決着がつく。嫌な決着になりそうだが。
 ベッドの上で瀬里奈にメールを打つ。
「麻薬の件は大体けりがついた。詳しくは明日話す」
 どんな顔して?
 担任とクラスメートが欠けた教室で俺はどう説明する。
 そんな事は会ってから考えればいい。
 おやすみまで入力したら次変換候補に「CHU」が出た。
 入れるかどうか真剣に悩んでいたところ。
 メールだ。知らないアドレス。
 ウイルスの可能性もあるが開けてみる。
「警告は聞いてもらえなかったようだね、麻薬の販売については1からやり直さなければならないようだ。君の勝ちだよ。だが我々にも面子がある。少しはやり返さなければ他の者に示しがつかない。君の大事なガールフレンド、しっかりガードする事だね」
 俺は即座に三郎たちに非常コールをかけ部屋を出た。
 
 俺は学苑寮にむかった。プジョーを校門前につけ車を降りて待つ。
 緊急事態とは言えさすがに女子寮の部屋まで迎えには行けないがここからなら昇降口は見える。
 俺は片手にアタッシュケースを持っていた。ただのケースではない。中身は小型サブマシンガンMP5Kだ。ただしまってあるわけではなくグリップのスイッチを引けばこのまま発砲できる。人目につかず火力を持ち歩ける武器だ。
 こいつを片手に俺は辺りに不審な奴がいないか監視しながら瀬里奈を待った。
 夜中の突然の呼び出しに瀬里奈は最初怪しんだが俺の声の真剣さに事態を理解してくれたようだ。松岡の娘だ。暗黒街の空気を感じられるのだろう。
 待つ事しばし。昇降口から出てきた瀬里奈は周りを切りしながらこちらに走ってきた。
「何? 危ないって」
 声に緊張感が混じっていた。
「とにかくここは危険だ。俺の会社で説明する。乗れ」
 俺が促すと瀬里奈は頷いて助手席のドアを開け…… 固まった。
 プジョーの後部シートにもう一人乗っていたからだ。
 暗がりでもわかる金色の長い髪を持つ小柄な人影が神妙な面持ちでこちらを見ていた。
 念のためジュンも保護しておいたのだが…… やっぱりなんかまずかったかな。
 二人ともBIG-GUNに保護する事にした。無言でわが社まで車を走らせる。
 ジュンと瀬里奈を同時に俺の車に乗せるのはどうも居心地が悪い。会話もままならない。かといってここで「コンビニのスイーツって侮れないよねー、寄ってく?」とも言いづらい。
 二人ともかしこい娘なので余計な事は聞かないでいてくれるのが救いだ。
 と、意外なことに瀬里奈から口を開いた。俺に対してではなくジュンにだ。
「巻き込んじゃったな…… ごめん」
 ジュンもちょっと驚いたようだがすぐに返事した。
「いえ気にしないでください。ケンちゃんといるといつもこんなものだし」
 ええまぁ。
「それに巻き込んだのってケンちゃんみたいだし」
 うん、そうだね。うんうん悪いのはいつも俺だよ。
 バックミラーで瀬里奈の表情を見ていたが何故かこいつも驚いた表情を見せた。
 驚いたのはジュンの反応なのか、それとも。
 車内で俺は考えていた。
 何故わざわざ警告を入れた。俺への報復なら抜き打ちでやればいい。俺に二人を助け出す時間までくれた。
 ヤクザのやり方じゃない。
 やはり…… なのか。
 会社に到着するとジムたちが待っていてくれた。
 二人が怯えないよう気を使ってくれたのだろう。ジムは普段よりさらに暖かい顔で、三郎もいつもの仏頂面ではなく笑顔で迎えていた。いや、こいつは女の子にはいつもこういう顔なのか?
 ジュンはにこやかに二人に久しぶりーと手を上げまさに勝手知ったる人の家、とっとと2階の居間へ駆け上がっていった。
 あいつだって怖いだろうに。
 俺達も続いて2階にあがる。居間のソファにつく前に俺は瀬里奈を呼び止めた。話しておかなくちゃならんだろう。が、俺が言葉を選んで一瞬話始めるのが遅れた隙に瀬里奈の方から話しかけてきた。
「あの子、誰?」
 静かな、探るような声に俺は何故か動揺していた。
 爆弾騒ぎの時、顔を合わせていたはずだが、あの時は米沢さんとの口論で夢中だったから気が付かなかったのか?
 俺がまた話遅れると瀬里奈はさらに続けた。
「かわいい子だね」
 俺はかなり無様に「ああ」と頷くと隠さず説明した。