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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「心配するな。警察署長は俺のマブダチだ。顔は怖いが悪いようにはしない。道を外れたヤツには容赦しないが、道を間違えた程度のヤツにはキチンと正しい道案内してくれる。そういう人だ」
 だが彼女は首を振った。
「だけど…… みんな私が悪いんだよ。私のせいで風見君危ない目にあったし」
「俺は怪我一つしてないさ。気にするな」
 米沢さんの涙が溢れた。
「瀬里奈はどうするの? 私、友達面して、協力する振りして騙してたんだよ? 瀬里奈の仲間なんて殺されちゃったんだよ?」
 罪を償うなんて言うのは簡単だ。だが犯した罪はけして消えやしないし、消えちまった命は帰ってこない。
 俺はゆっくり穏やかに言った。
「謝るしかないだろう。俺も一緒に謝ってやる」
 彼女は被りを振った。
「謝る? 瀬里奈は謝ってくれたのに私は何食わぬ顔して優等生みたいな顔して付き合ってたんだよ」
 米沢さんは嗚咽して言葉を詰まらせてから続けた。
「瀬里奈は私のために…… 何でもしてくれたのに…… 私は瀬里奈の足引っ張るばっかり」
「瀬里奈はああ見えてこの世の闇を見て育ってきている。麻薬の怖さは知っている。きっとわかってくれる」
「わかってないよ、瀬里奈は強がってるけど繊細なんだよ。今までだってずっと傷ついてきてる。それなのに……」
 それもわかっている。しかし俺はもう言葉が継げなかった。
 自らの将来への不安より友達を騙したことに泣いている少女に嘘の慰めを並べたところでどうなる。
 俺は俯いて泣く彼女と逆に天を仰いだ。
 月は大きく明るい。
 一撃で人を殺す事は出来てもこの娘を助ける事はできない。
 所詮俺はその程度の男か。
 何を今更……

 会社に戻り仲間に報告を終えると俺はマンションに戻った。この仕事はそろそろ決着がつく。嫌な決着になりそうだが。
 ベッドの上で瀬里奈にメールを打つ。
「麻薬の件は大体けりがついた。詳しくは明日話す」
 どんな顔して?
 担任とクラスメートが欠けた教室で俺はどう説明する。
 そんな事は会ってから考えればいい。
 おやすみまで入力したら次変換候補に「CHU」が出た。
 入れるかどうか真剣に悩んでいたところ。
 メールだ。知らないアドレス。
 ウイルスの可能性もあるが開けてみる。
「警告は聞いてもらえなかったようだね、麻薬の販売については1からやり直さなければならないようだ。君の勝ちだよ。だが我々にも面子がある。少しはやり返さなければ他の者に示しがつかない。君の大事なガールフレンド、しっかりガードする事だね」
 俺は即座に瀬里奈に電話し、念のためジュンにも連絡した。三郎たちにも非常コールをかけ二人の元に走った。
 
二人とも学生寮で無事だった。ルームメイトには口止めして二人ともBIG-GUNに保護する事にした。
ジュンと瀬里奈を同時に俺の車に乗せるのはどうも居心地が悪い。会話もままならない。かといってここで「コンビニのスイーツって侮れないよねー、寄ってく?」とも言いづらい。
二人ともかしこい娘なので余計な事は聞かないでいてくれるのが救いだ。
と、意外なことに瀬里奈から口を開いた。俺に対してではなくジュンにだ。
「巻き込んじゃったな…… ごめん」
 ジュンもちょっと驚いたようだがすぐに返事した。
「いえ気にしないでください。ケンちゃんといるといつもこんなものだし」
 ええまぁ。
「それに巻き込んだのってケンちゃんみたいだし」
 うん、そうだね。うんうん悪いのはいつも俺だよ。お前の中じゃな。
 バックミラーで瀬里奈の表情を見ていたが何故かこいつも驚いた表情を見せた。
 驚いたのはジュンの反応なのか、それとも。
車内で俺は考えていた。
何故わざわざ警告を入れた。俺への報復なら抜き打ちでやればいい。俺に二人を助け出す時間までくれた。
ヤクザのやり方じゃない。
やはり…… なのか。
会社に到着するとジムたちが待っていてくれた。
二人が怯えないよう気を使ってくれたのだろう。ジムは普段よりさらに暖かい顔で、三郎もいつもの仏頂面ではなく笑顔で迎えていた。いや、こいつは女の子にはいつもこういう顔なのか?
ジュンはにこやかに二人に久しぶりーと手を上げまさに勝手知ったる人の家、とっとと2階の居間へ駆け上がっていった。
あいつだって怖いだろうに。
 俺達も続いて2階にあがる。居間のソファにつく前に俺は瀬里奈を呼び止めた。話しておかなくちゃならんだろう。
「麻薬の件だが大体けりがついた」
 さっき打ちかけたメールと同じ文章だ。気がきかない。
 だが非常に重要な事を言ったのに瀬里奈の耳には入らなかったようだ。慌てて大声を出した。
「そうだ、早苗は?! 早苗も連れて来なきゃ!」
 俺はドウドウと静めながら言った。
「米沢さんは大丈夫だ。既に警察にいる」
 このやろう、ますます話しづらくなったじゃないか。
「そうか、よかった」
 ほっと肩をおろす瀬里奈。
「で、麻薬にけりがついたってどういうこと」
 聞こえてたのか。
「ああ、さっき学園内の内通者と大勢の買い手を捕まえた。今警察で取調べ中だ。この販売ルートはもう使えないだろう」
 この脅迫メールはそれの報復とは付け加えなかった。
「そうか……」
 さらにほっとしているようだ。喜びではなく安心。やはり怖かったのだろう。だが俺にはさらに報告しなければならないことがある。
「ただその中に……」
「ん?」
 切れ長の瞳が俺を見つめた。向けられた真摯な視線に俺は躊躇してしまった。それでこんな言葉でごまかしたのだろう。
「まぁ、夜食でも食いながら話すか」
「じゃあ私なんか作るよ!」
 元気な声が返ってきた。
俺の言葉に反応したのは目の前の瀬里奈ではなく階段の上にいたジュンだった。
我に返って戦慄した。
三郎が無言で俺を睨みつけている。事情を知らぬジムは嬉しそうに手伝うよなどと言っている。
しまったぁぁぁ! 墓穴ほっちまったぁぁぁ!
ジムは知らないのだがジュンは料理が好きだ。手際も包丁さばきも光るものがある。
しかし決定的な弱点があるのだ。
やつは天性の味覚おんちで味付けが目茶苦茶なのだ。
以前知らずに食わされた事があるがトラウマになるほどの料理だった。あれをもう一度食わされるのは遠慮したい。
俺は打開策を練った。
視界に黒髪の美人が入った。
「瀬里奈! お前も手伝え!」
「私が?!」
 瀬里奈は固まった。
 ぬ、まさか。
 俺は顔を近づけて小声で聞いた。
「料理苦手?」
 すると瀬里奈は赤くなり唇をかみ締め涙ぐみ始めやがった。
 しまったぁぁぁぁ、今度は地雷踏んじまったぁぁ!
 成す術なく立ち尽くす俺。すると一人の男が動いた。
「ジュン、今ある具材だとチャーハンくらいしか出来ない」
 またチャーハンかい。前回の地獄料理もチャーハンだった。
「うちのチャーハンはレシピが決まっている。これに忠実に作ってくれ」
 三郎はさらさらとメモる。それを覗き込みながらジュンが「細かいのね?」と首をかしげた。
奴は瀬里奈にも声をかけた。
「松岡さん、後ろからこのメモ読んであげてくれないか?」
 瀬里奈が、え? と顔を上げる。
「大丈夫、一人で出来るから休んでてください」