小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

便利屋BIG-GUN2 ピース学園

INDEX|19ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 

 この件に関しては兄貴に電話して確認を取った。いかに街一番の情報屋の持ってきた情報といえど裏を取る事は大事だ。
 話を整理してみよう。
 ニチバの連中は親父たちを裏切り麻薬で儲けようとしている。その手段として善悪の判断がつかない中高生に麻薬をばら撒いている。取引や麻薬の置き場はピース学園。当然ピース学園内部にも協力者がいる。実際の販売や情報収集などはFMシーが拠点で藤代という男が関わっていた。
 瀬里奈はこの陰謀を目撃してしまい警察に訴えたが警察にも内通者がおり、もみ消された挙句、実際に警察に赴いたリーダーは暗殺されてしまった。
 松岡は何らかの理由で失踪。その間に瀬里奈がこの件に関わっていることを知り俺に援助を求めた。逃亡中のためか、囚われているか、自ら動けないのが理由と思われる。
 瀬里奈と会い、やつの周りを調査しだした途端、俺は襲われた。
 俺が麻薬販売の調査、妨害に来たためと誤解されたのだろう。瀬里奈達がこの件から手を引かなかったため俺は本当に麻薬の調査を始める羽目になった。瀬里奈が手を引かない以上、麻薬販売計画を叩き潰す事があいつを守る事になると判断したからだ。
 しかし敵は手ごわい。クレバーな上、警察やFM局にまで仲間が入り込んでいる。そもそもニチバファミリーを俺達が壊滅させるなど不可能だ。そんな事は警察か親父の組織の仕事だ。
 そういえば瀬里奈達が書き込んだネットの情報がたちどころに消されていたらしい。ハッカーの存在は間違いないがこれについてはさすがラーメン屋、有益な情報があった。ふむふむ。
 さて、状況とか真実とかは俺にとっては実はどーでもよかったりする。俺は便利屋として依頼をこなせればいいのだ。
 現在受けている依頼は3つ。
 ひとつは松岡から「瀬里奈の救出」。
 これは正式な依頼ではなく俺が個人的頼みとして引き受けている。だからBIG-GUNへの依頼者は俺という事になる。このミッションの解決策は前述の通り麻薬計画の阻止ということになった。
 二つ目はクナイトからで「松岡の捜索」。
 捜索だけでなく事態の解決も依頼されている。現在有力な情報は無いが麻薬の一件が絡んでいる可能性が高い。となると松岡はニチバに捕らえられているか、あるいはすでに……
 三つ目は警察からで「デーブの逮捕」。これは事実上生死問わずである。昨夜会ったのがデーブである可能性があるが、これも未確認だ。デーブはニチバのスパイであり、瀬里奈のリーダーを抹殺した人間であろう。ドーピングによりかなり手ごわい戦士になっている。こいつにたどり着くのもやはり麻薬の一件を追うのがいいだろう。
 結論からして三つとも麻薬を追えば解決しそうである。俺はもう少しピース学園に通いこの件に関わる事にした。
 残る手がかりはピース学園内の内通者。
 森野記者は彼氏の頼みを無邪気に聞いて記者ごっこをしていただけと見ている。ジムも三郎も状況を話したところ同意してくれた。正直彼女には顔を合わせたくない。
 二股野郎とはいえ彼氏だった男が昨夜殺されたのだ。中学生には強烈過ぎる出来事だ。よい相談相手がいればいいのだが。
 怪しいと俺が思う奴はまず小森教官と生徒会長葉山悟だろう。
 二人とも俺が入学した途端、異常なほどの警戒と敵意を持っていた。探ってみるとするとあの二人だろう。
あとは瀬里奈の仲間。俺がこの件に関わっている事、マンションの事を知っているヤツとなるとあいつらだ。俺の事を逐一内通者に報告していたとしても不思議では無い。
 そういえばあいつら、あれだけ脅しておいたから手を引いてくれるだろうか。俺としてはそうしてくれれば助かるのだが。
 そしてあともう一人……
 電話が鳴った。ジュンだ。
「ケンちゃんのえぼし丸って何色?」
「うん? 服なら青だけど」
「んじゃいらない。人気があるのは緑色の服でオレンジの帽子なんだって」
 湘南カラーか。ちょっと待て、誰がやるって言った。
「そのカラーリングは見たことあるが、どう考えても俺のやつの方が見栄えはいいぞ」
「えー、でもレアな方が欲しいじゃない」
 あやまれ! C市の広報の皆さんに謝れ!
「どうせなら服をアロハに変えるくらいの芸が欲しいわよね」
 確かに。アロハはわが街のクールビズとして親しまれている。本物のえぼし丸も時折アロハルックで現れる。
 まぁしかし服の形まで変えると金型まで新規で変えなきゃならないので金が掛かる。地方のゆるきゃらグッズ程度では色の塗り替えくらいしかバージョンを増やすことは出来ないのだろう。
 逆に言えば色違いなら小ロットでも安く作れるというわけだ。

「さて」
 数日振りに三人で打ち合わせしながら社内で朝食を取っている俺達である。ホットドックにハムエッグ、レタスサラダを大量のミルクで流し込む。
 さて一番の懸念事項から聞くか。
「三郎のラジオ出演で異変は起きていないか」
 三郎は無視。ジムは苦笑して答えた。
「三郎は麻薬の買い手にFMシーのリスナーが多いと独自に調べてわざわざ出演を受けてくれたんだ。感謝するべきだよ」
 そうだったのか。確かにこいつは女子高生と広く付き合っている。その中に麻薬に手を出した奴がいたのだろうか。
「我が社のHPへのアクセスとメールがえらい事になっている」
 やっぱり……
 食卓に置いてあったタブレットを動かし恐る恐るHPを確認する。なるほどカウンターが300ほど回っている。メールは三郎あてが大半を占める。内容はこんな感じ。
 ラジオ聞きました。
 すごい!
 感動した!
 三郎君素敵!
 私の相談にも乗ってください!
 あのなぁ……
 女の考えはわからん。
 あと多いのは三郎への仕事の依頼だ。登下校のボディーガード依頼とかが多い。仕事にかこつけてこいつとお近づきになりたいだけじゃないか。
「三郎のコーナーも開設しろという要望も多い」
 む…… 確かに。ページの更新は俺とジムで行っている。三郎はめんどいの一言でノータッチだ。だが我々は営利企業。宣伝は大切である。
「会社のためお前もなんか書けよ」
「断る」
「じゃあ俺がゴーストライターとしてお前のコーナー作っていいか?」
「ゆるさん」
 あー、そうですか。
「しかしFMシーからの情報はもう無理かな。藤代が消されたのは痛かった」
 ジムが話を元に戻す。助かる。すると三郎が建設的な事を言った。
「いや、そうでもない」
 三郎は食後のコーヒーを飲みながら話し出した。
「俺のやっていたコーナーは奴等にとっては悩める中高生を探し出すレーダーのような存在だった。それはお前の聞き出した情報から容易に想像できるな。ということはリスナーには既にお得意になった人間も多く含まれるということだ」
 ジムはなるほどと頷いた。
「ラジオを聞いている人間から客を探したなら、客はまだラジオを聞き続けている可能性が高い。そういうことか」
 三郎は頷いて続けた。例のキーホルダーを示しながら。
「麻薬の売買、いくらこれにいれて隠していたとしてもまさかFM局内やピース学園内で行うとは思えない。警察に目を付けられないよう毎回場所を変えていたはずだ。その連絡にもラジオを使っていた節がある」
 ふうむ…… なるほどね……