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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 オンエア開始である。さて…… どんな事を話すのやら。
 最初の相談は在り来たりだった。彼氏が自分の考えている事をわかってくれない。ふむふむ愛してるならわかってくれるはず…… というあれね。
 延々と興奮した女の子がしゃべり続けていた。
 そこに三郎が割って入った。
「愛してれば気持ちが通じるなんてガセだ。そんな事が出来るならラブレターなんかこの世に存在しない。わかってほしいならキチンと自分の考えを相手に伝えるんだな。次」
 さすが三郎。クールすぎる回答だ。
 つぎの相談は彼氏の浮気。
 回答はこちら。
「浮気されて悔しい、許せないと思う前に自分が男にとっていい女であり続けてきたか思い出してみろ。次」
 おい…… 三郎よ……
 愛情を確かめたくて彼を色々試してきた。以前はキチンと頼みを聞いてくれたのに最近は言う事を聞いてくれない。彼はもう私を愛してくれてないのでは?
「当たり前だ。試すたび愛情は薄まる。愛を試すという事は彼の愛情を疑っているという事だ。好きな女に疑われる男の気持ちを考えた事があるのか。お前は彼よりも自分が大事だったんだ。相手を愛してもいないくせに愛情を欲するな」
 大丈夫なのか、この番組?! 女の子たちから苦情の嵐じゃないのか。FMシーに送られるならともかく我が社に殺到したらどうするんだ!
 ブルブル。携帯が震えた。ジュンからだ。
「ラジオ聞いた?」
「ああ……」
 俺の声は多少冷静さを欠いていたかもしれない。ジュンには気づかれただろうか。
「あれはサブ君がやってるから受けてるのよ。ケンちゃんがやったらカミソリの嵐だから気をつけなさいよ」
 ご丁寧にありがとうよ…… ていうか受けてるの?
 大体なんで三郎はサブ君で俺は「ちゃん」づけなんだよ。
 クレームをつけようとした時、FM局の裏口からヤツがでてきた。俺はラジオ局の駐車場にプジョーを停め待っていたんだ。
「仕事だ。切るぞ」
 俺はプジョーから飛び出すとヤツ、藤代の元に走った。
 ヤツはドアの横でタバコを出し火をつけようとしていた。
 その胸倉をつかみ物陰に引き釣り込む。ヤツが悲鳴をあげる前にベレッタを顎に押し付けた。
「藤代さん、俺を知っているな?」
 ヤツは白々しく首を振った。ベレッタの撃鉄を起こす。カチリという精密感ある金属音がした。人に恐怖感を与える音だ。
「中学生の彼女に俺の部屋に爆弾が仕掛けられたから取材しろと言っただろ」
 ヤツの表情が変わった。
「彼女に聞いたのか?」
 藤代は震える声を絞り出した。意気地は無い。小物だな。
「お前、俺の部屋に爆弾が仕掛けられている事を知っていたな」
「それは…… 俺はマスコミの人間だから…… 情報は早いさ。それでピース学園の側だっていうから生徒のあの子に急いで取材代行を頼んだんだ」
 うまい言い訳したつもりなんだろうが、そうはいかない。
「マスコミが知る前から知っていたな。マスコミに情報が入っていたなら三ツ沢さんに当然連絡がいく。彼女はピンフの側に住んでいるからな。何故局職員のプロに頼まず素人の中学生になんぞ頼んだ。不自然極まりないぜ」
 藤代から血の気がさらに失せていった。
「ついでに恋愛や揉め事で悩んでいる奴を調べて連絡させていたそうだな。お前が二股どころか町中の学校に彼女作っているのを知ったらみんなしゃべってくれたぜ」
「な、悩みを持っている子にラジオに出てもらおうと……」
 俺はヤツの腹に拳を叩き込んだ。ぐえっと呻きしゃがみこもうとしたが許さねぇ。ベレッタを押し付けて無理やり立たせた。
「だったらなんで俺の部屋に爆弾を? 彼女に俺の安否を確認させたんだろ。俺は今麻薬を追っている。お前それに関係しているな? なぜ悩みのある子なんか探す」
 なおヤツは黙秘だ。俺はベレッタをやつの太ももに押し当て引き金を引いた。こもった音共に銃弾が発射されやつの足が血で染まった。銃口を押さえれば銃声はそれほどしないのだ。
 やつの口をふさぎ悲鳴を飲み込ませると質問を再開する。
「俺が警察じゃねーのは理解できたな? 俺はお前の人権なんざ守る義務も無いし、その気も無い」
 やつは強く頷き今度は話してくれた。
「悩みのある子ほど…… 薬を買ってくれる」
 なるほど確かに。不特定多数に声をかけるより安全か。
「取引の方法は? 学生相手に堂々と薬売るのは無理があるだろ」
 また沈黙。いい加減にしてくれないかな。
「言っとくが、お前の血そんなに沢山は無いんだぜ。出血多量で死ぬ前にしゃべったほうがいいぜ」
「これに詰めて売っている」
 やつはまた話し始めた。めんどくせー野郎だ。
 やつは小さなキーホルダーを差し出した。こいつは……
 なるほどこんな物なら子供に売っても疑われない。
 高額で取引してもレア物だからと誤魔化せるか。
「それで…… 黒幕は?」
 ヤツの唇が動いた。なに?!
 同時に俺の第六感に何かが触れた。意識する前に倒れるように伏せる。
 ドンと空気が振るえ、藤代の体がブルンと震えた。
 ヤツの胸に大きな血のりが。撃たれた。藤代は声もなくうつぶせに倒れた。即死だ。
 振り返ると暗闇の中走り去る影。速い。デーブ…… か?!
 飛び起きて追う。ここは駅の南口、図書館通りだ。夜は人通りは少ない。が、やつは海のほうへ走っていく。このまま行くと弾丸通りに出る。そこは大通りだ。まだ人も大勢いるだろう。ドーピングした殺人野郎を野放しで行かす訳には行かない。俺は立ち止まってベレッタを構えた。
 しかし奴は走りながら俺の動きがわかったのか? 止まった俺に銃を向けた。とっさに側転。音速を超えて357マグナム弾が俺のすぐ横をかすめていった。俺はそのまま2射放つ。距離は20mほどか、どんな姿勢からだって外すはずがない。手ごたえはあった。しかし奴は全く効いた様子も見せずまた走り出した。防弾チョッキか? それとも薬で痛みを感じないのか。
 左手に図書館が見えてきた。ヤツはその向かいの教会に飛び込んだ。庭は駐車場になっていて24時間開放されている。
 曲がり角を勢いよく飛び込むような真似はしない。教会の入り口で止まり低い姿勢で覗き込む。やつは車に乗り込んだ。
 逃亡中に車? 盗難車か、やつはデーブではないのか。
 車はライトを上向きにしこちらに向かってきた。ライトに向かって撃つ。
片目は潰れたが、やつは構わず進み海方向に走り去った。
 シェリフに電話し状況を報告した後、帰宅することにした。マンションはさすがに危険だろう。会社の方に帰るか。
 やれやれ忙しい1日だった。
 瀬里奈におやすみメール送らなきゃねぇ。

「Jr.正しいと思った事をやるんじゃない。正しいと確認した事をやるんだ」
 
 翌朝ラーメン屋から情報が少々出前されていた。
 この街の特に中高生に麻薬をばら撒こうとしている組織は「ニチバ・ファミリー」。本来親父の組織の傘下だったはずだが親父は麻薬の販売だけは許可しなかったため西側からの勢力に鞍替えした一味だ。親父や兄貴とは当然敵対関係となり命を狙いあう間柄となった。ジェニーを襲ったのも多分こいつらだろう。人質にでもとればクナイトが動きにくくなると踏んだのだろう。