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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 SWATの爆破物処理班が駆けつけがんばってお仕事してくれている。住民や近所の人は退避させられ非常線の外側で不安げにマンションを見つめたりぼやいたりしている。
 あとは大量の野次馬が無責任に情報交換をしている。ほとんど思いつきで語られる内容。ガスが噴出したとかテロ組織のアジトだったとか伝わっていた。
 さっき別れたばかりの隊長さんも駆けつけ一瞬驚いていたが現場にそそくさと走り去っていった。さっきの会話は内緒だからな。俺は事情聴取の後、非常線の外で待つように言われた。
 もう日が暮れるというのにジュンはまだ外で待っていた。
「事件の多い人よねー」
 やや呆れ顔だ。不安そうでは無い。俺としてはマンションの下にプジョーが止めっぱなしなので少々不安である。
「お前門限は?」
「固い事言いっこなしー、せっかくのイベントじゃない。それにほら寮の子もいっぱいいるじゃない?」
 爆弾事件。重犯罪にして大いなる人の不幸も女共からすればイベントか。たしかにピース学園の生徒と思われる子達が大勢いた。
 突然辺りが光った。一瞬飛びのく。だが正体はカメラのフラッシュだった。
「転校生の風見さんですよね。私、新聞部の者です」
 中学生だろうか、大き目のストロボをつけたニコンを構えた女生徒が立っていた。やや茶髪の長い髪を後ろで三つ編みにしている。いまどき中々見ないヘアースタイルだ。
「あのマンション風見さんの部屋って本当ですか? 爆弾が見つかったとか」
 正確かつ素早い情報収集能力じゃないか。
「俺の借りてる部屋だけど、爆弾かどうかはわからないよ。何かドアについてたから調べてもらってるんだ」
 念のためだよ、と俺は強調した。
「そうですね、昨日発砲騒ぎがあったばかりだし慎重にもなりますよね」
 いっぱしの記者みたいな口調で語る女子中学生。まずは形から入る、そういうタイプなのだろう。
 ところで、と彼女は続けた。
「隣にいるの先月転校してきたローランドさんですよね? もう口説いたんですか? すでにランキング上位に位置する子ですよ」
 論点はそこかよ、全く女ってのは。ところでそのランキングってのは誰がどうやってつけているんだろう。瀬里奈はどうなんだろうか。あいつもトップクラスにいるかもしれん。
 ジュンが小声で聞いてきた。
「なんのランキングだろう」
「身長じゃないのは確かだな」
 ジュンはグーで殴ってきたが軽くかわした。
 茶髪のブンヤはニヤニヤと笑って言いやがった。
「仲いいですね」
 ああトムとジェリーには負けるがな。
「以前からの知り合いだ。突然ナンパしたわけじゃないぞ」
 記者はへぇぇぇと意地悪に笑うと続けた。
「でも転入早々複数の女生徒と一緒にいるのが目撃されています。しかも彼女じゃないですよね? どういうことなんですか」
「ほえ? もててるのケンちゃん」
 色恋沙汰にジュンも食いついてきた。そういえばこいつも女だ。
 しかしこいつ…… 事件記者かと思ったが芸能担当か。話をややこしくしやがって。
「どっちもクラスメートだよ、隣の席だからノート借りたり……」
 と、本当のことを言い訳がましく語りだしたところ事態をさらにややこしくする人物が登場した。
「風見君? 大丈夫なの?!」
 息切らして走ってきたらしい、まだ制服姿の米沢さんだった。記者は嬉しげにカメラを向けた。
「そのクラスメートですね?! 心配してきてくれたんですか」
 こら、写真撮るな。おや、カメラの横に見覚えある二頭身がぶら下がっている。
 米沢さんは誰? という表情になったから俺が先に紹介した。
「気にしなくていい、ただの新聞屋さんだ」
 一言お願いします、とテンプレートな質問をする記者の後ろでジュンが、おおキュートとつぶやいていた。バカモノひっこんでいろ、というかこの隙に消えろ。話がややこしくなる。
 俺はなんでもない…… と言いかけると米沢さんが先に「どなた?」と、困惑した表情になってきいた。記者ではなくジュンの方だ。
 えーと、隠す必要もない。こいつは……
「あ、いた」
 そこにまた一人。瀬里奈も登場した。こいつは体操服だ。寮は私服禁止なのでこういう格好になるのだろう。む、黒髪の美少女のスパッツ姿ですか。こんな時でなきゃ写メ撮るんですが。
「大丈夫か?!」
 と、いつもの無表情と違った顔で走ってきた。横に米沢さんがいたのも気づいていない様子だ。やめてくれよ、めんどくさい。
 ブンヤさんがなおも楽しそうにカメラをむけてシャッターを切った。これには瀬里奈は怒った。さすがスケバンさん、正しい反応だ。
 勝手に撮るな、とカメラを下げさせたところでやっと冷静になったか瀬里奈は俺の周りに記者を含めて三人の女の子が群がっているのに気づいた。
「お前こんな時に何やってんだ」
 わかりやすく怒りの表情だ。ブンヤは「おお、修羅場ですか」とまたシャッターを切っている。こいつも中々だな。
 さて…… こういう時は例の手に限るな。
「君、それえぼし丸だよね。最近流行ってるんだってね、俺も持ってるよ。どこで買ったの」
 ブンヤのニコンにぶら下がったマスコットを指差していってみた。リアクションは背後からあった。
「ちょっと」
 ジュンだ。
「私が探してるって言ったでしょ。持ってるならちょーだいよ!」
 えーい、今はそういう論点では無い。大体なんでお前にやらなきゃならんのだ。代わりにお前は何をくれるというのだ。
 あ、そういえばさっきお前のせいで、みこしやのたこ焼買い忘れたぞ!
 で、瀬里奈は今度は米沢さんに突っかかっていた。「こいつに近づくなって言っただろ!」と始まっている。米沢さんは最初ビビッていたようだが「なんで瀬里奈にそんな事言われなきゃなんないの!」とやり返した。ごもっともです。
「いいですなぁ、大乱闘。燃えますねぇ」
 お前なぁ。俺は生き生きとシャッターを切り続ける娘に襟を正して言った。
「俺はこの中の誰とも付き合ってないし、口説いてもいない。従ってやましい事は何一つない。なのに何故こうも居心地悪くならなきゃならんのだ?」
「将来的にうまくやりたいっていう下心があるからじゃないでしょうか」
 ブンヤは撮影を続行しながらさらりと抜かした。
 何故かぐうの音も出ない俺であった。
 三郎は俺と違って本当に大勢の女と付き合っている。奴はこういう修羅場に遭遇しないのだろうか。あいつひょっとして俺が考えているより凄いヤツなのかもしれん。
「気に入った。お前名を名乗れ」
「は。私、中等部2年B組の森野と申します。お見知りおきを」
 ああ覚えとくぞ、この野郎。
「ちなみにこのえぼし丸はFMシーにお勤めの彼氏のプレゼントですからあげませんよ」
 さよけ。あそこにゃ中学生に手を出すヤツがいるのかよ。
「俺は便利屋が本職だがお前の依頼は受けないからな」
「えー、今度彼氏と取材に行こうと思ってるのに」
 この間一切俺の方を向かずに瀬里奈たちにカメラを向け続ける森野記者であった。店に来たらカラーボールぶつけるからな。
 そこへさらに。
「あの、便利屋BIG-GUNの風見さんですよね?」
 また女が現れた。今度は誰だ!