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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「一般に流通するのは稀だ、だが存在はする。集中力を高め苦痛を無くし恐怖感を緩めれば人間は2倍3倍の能力を発揮できるという。普段我々がそうならないのは本能に植え付けられたリミッターがあるからだ。自らの筋力で体を破壊したり脳がオーバーヒートしないよう安全マージンを取っている訳だ」
 自分の指が砕け散るほど強く殴ったりはしないよう人間様のソフトウェアはできているわけだな。
「それを短時間とはいえやっちまっているって事は?」
「当然、肉体には相当負担が掛かる。下手をすれば筋肉断裂、精神的にも発狂の可能性がある。使える時間も回数も限られているという事だ」
 まぁ予想通りの回答だ。
「我々も手を尽くして捜索している。だが手ごわい。もし発見できたにせよ手に余る。私の隊員も二人殺されている」
 SWATの隊長だ。SWATとは警察の特別攻撃隊。戦闘のスペシャリストだ。
「だからお前達の手を借りたい。警察として民間にこんな形で協力を求めるのは屈辱だ。しかしヤツはモンスターだ。薬で正気を失うかもしれん。そんなやつを野放しにしていては市民が危険だ。我々は警察の面子より市民を優先したい」
 中々言えない台詞だ。さすがシェリフ。無論俺はこの街も署長の面子も守りたい。
「BIG-GUNへの依頼というわけでいいんだな?」
 シェリフは頷いた。
「モンスターを相手に生かして捕らえることは難しいかもしれない。手荒な事も必要だろう。その辺は?」
 署長は暗い顔だがはっきりと言った。
「多少は目をつぶる。警察としてはそれ以上は言えん。そしてお前の方もくれぐれも」
「オフレコだし守秘義務は守る」
 俺は頷いて言った。断る理由は何も無い。
「全て承知した。俺の方も探すが見つかったら連絡くれ」
 急ぎ立ち去ろうとする俺をシェリフは呼び止めた。
「料金は?」
 大事なところだ。さすがトップに立つ奴はしっかりしている。
「まけとくよ、10万+必要経費。まあ、20万みてくれ」
「わかった、頼む」
 俺は早速行動に移ろうとしたが、ちょっと気になって振り返った。
「奴が持っていった銃は?」
 SWAT隊長が返事した。
「S&W M19だ」
 M19は三郎も使っている銃だ。リボルバーメーカーの雄S&Wの傑作リボルバーだ。S&Wでは2番目に小さなKフレームの銃で強力な357マグナムを発射できる。「コンバットマグナム」の愛称で知られ警察などに広く使われている。
 357マグナムか、今度撃たれたら死ぬな。
 俺は警察署を後にした。
 そういえば松岡もリボルバー派だった。M13だったか。今でも使っているんだろうか。

 警察署を出て駐車場をめざし市民憩いの場Dクマ方面に移動、みこしやのたこ焼でも買うかと思っていると聞きなれた声がした。
「あ、デバガメ」
 なんと人聞きの悪い。周りの人が本当だと思ったらどうしてくれる。未遂だってば。
 振り返るとジュンが立っていた。
 水色のセーラー服スタイルの半そでシャツにホットパンツ。スカートじゃないところを初めて見たような。
 長い髪を右に束ねて緑の瞳でこっちを見つめていた。
「お前、学校は?」
「もう終わったよ? ケンちゃん何してんの」
 もうそんな時間か。
「警察に遊びに」
「遊びに行くとこじゃないでしょ。なんか騒がしいわね、何かあったの?」
 首をひねって警察署の方を見る。横顔が少女らしい丸みを帯びている。こういうちょっとした仕草が自然で可愛らしいところがこいつの特徴だ。意識してやってたらむかつくんだが、こういうのも持って生まれた才能というんだろうか。
「警察なんていつも事件が起きてるんだよ。ただ今日は物騒なことが起きてるらしい。とっとと帰ったほうがいいぞ」
「うん、買い物に来たんだけど売り切れてたし。ケンちゃん車?」
「ああ、もう帰るけどな」
 するとジュンは表情を一変させにこりと笑った。
「じゃ送ってよ。物騒なんでしょ」
 だめとは言いづらい雰囲気を一瞬で作った。この歳で男を操る術を会得しつつあるとは恐るべし。
 Dクマ向かいの駐車場でプジョー106に乗りピース学園に向かう。
 106はこの間穴をあけられてしまったので修理した。ついでにチューンナップも施してある。
 割れた後部ガラスを透明アクリルに変えた。さらにボンネットもカーボン製に交換。これによりかなりの重量が軽減された。106のように小型軽量な車は軽量化するとすぐに体感できる。発進の1転がりが明らかに軽快になった。
 さて、せっかく美少女と車内で二人きり。雑談なんぞしてみる。
「何探してたんだ?」
「えぼし丸のマスコット。ケンちゃんえぼし丸知ってる?」
 誰に向かって口聞いてんだ。俺ほどこの街を愛している男がえぼし丸を知らんはずがあるまい。
 えぼし丸とはこの街のマスコットキャラクター、ゆるキャラだ。二頭身の貴族スタイルのキャラで頭にこの街のシンボルである岩の形をした帽子をかぶっている。
 しかしそれが売り切れ?
 九州のクマとか千葉の非公認なら知らず、この街の中ですらマニアックな存在のえぼし丸グッズが売り切れとは……
 先に買っといてよかった。
 ジュンは伸びをして口を尖らせて言った。
「なんだか知らないけど最近人気らしいのよ。でも誰も買えなくて。私もちょっと探しに来たわけよ」
 意外とミーハーなんだな。
 車の行き先を見ながら今度はジュンが質問してきた。
「ケンちゃん会社から車で通ってるの?」
「さすがに車通学は禁止だろ。学校の近くにマンション借りてる」
 エメラルドの瞳が輝いた。
「マンション住まい?! いいじゃん、見せてよ」
 瀬里奈と比べてなんとガードの緩い。
 子供っぽいというべきか、気を許してくれていると考えるべきか、それ以上許してくれるということか。
 最後のは無いな。
 とはいえ、本日三人目の女の子ご招待である。ああ、アスカがいたから4人目か。なんとなく心うきうきになるのは仕方ない。プジョーを停め階段を上がる。何が嬉しいのかジュンは俺の数段上をトントンと上がっていく。ホットパンツが目の高さでフリフリと揺れる。線が見える分ホットパンツというのも……
 ジュンは突然立ち止まり振り返った。
「何みてんのよ……」
「その会話は以前に何度かしたな」
「その度に引っぱたかれてたわよね?」
 そう、何見てんのよに対し正直に「足」とか答えて攻撃を受けていた。正直者がバカを見る悲しい世の中だ。
「まぁ、飽きたからいいわ」
 ジュンは先を進んだ。慣れた…… が正しいかもね。
 部屋に着き鍵を出したところで俺は異変に気づいた。
「離れろ」
 俺がやばい仕事に携わっているのはジュンはよく知っている。だから俺が緊張した声を出すとすぐさま反応して一歩飛びのいてくれた。頭もいいのだ。非常に助かる。
 出掛けにセットしておいたシャーペンの芯が折れていた。
 つまり留守中誰かがこのドアを開けたことになる。
 慎重にドアの隙間を探ると起爆装置のようなものが見えた。
 やれやれお客さんの多い日だ。

 警察署に続いてマンションの周りも非常線が張られた。忙しいな警察。