便利屋BIG-GUN2 ピース学園
不良共は結局実力で繋がっている。要するに強い奴が偉い。
この中で俺が圧倒的に強いのは証明済みなので従わせるのは難しくない。
む? ということは瀬里奈もやはり強いんだろうか。松岡の娘だ。才能はあるだろう。そういえばジュンも運動と実益のためにマーシャルアーツやってるとかいってたな。俺の周りの女こんなんばっか。悪くは無いが。
「公の場でどうにもならないって事は実力勝負ってことだ。俺は確認しておきたいんだ。お前ら本気でヤクザとやりあう気か? 格好つける必要はねぇ。生きるか死ぬかの戦いになるかもしれないんだぞ」
「望むところだよ」
アスカが瀬里奈にくっついたまま口を開いた。
「あたしたちはリーダーに恩がある」
強い口調だった。気の強い女…… というより振りをしているだけのようだ。かわいいもんだ。
「立派なヤツだった事は想像できるよ。だがそんなヤツが自分の敵討ちでお前らが傷つくのを喜ぶと思うか?」
「リーダーのためじゃねぇ、俺達のためにやるんだ」
横槍を入れたのは角刈りの男、海城だ。
「そうだ、このままじゃおさまらねぇ」
長髪茶髪のちょっとハンサムな男(煙たいてたやつだな)神明も続く。
もう一人のごつい体の坊主頭は発言しなかったがうなずいている。こいつは大岩だったか。何故かカレーライスを食べている姿が似合いそうな気がする。
「相手はヤクザだ。まともじゃない。殺されるにしてもまともな死に方はできねぇぞ。指全部切り落とされた挙句コンクリートの靴履かされて海にドボンなんて十分ありえる」
一同さすがに強張った。しかしそこは不良少年団だ。強がりはする。
「見てきたみたいに言うじゃねーか」
それに俺は答えずニヤリとだけした。それで奴等はいっそう引いた。
「これが最後だ、もう一度聞く。本気でヤクザとやりあうつもりなのか?」
沈黙した。それでいい。
俺は瀬里奈を見た。うつむいている。
とめろ、お前が止めればみんな止められる。
しかし瀬里奈は黙ったままだ。葛藤はしている。だが動かない。動けないが正しいか。気丈とはいえただの女の子だ。そこまでのリーダーシップを求めるのは無理か。
「周りの顔色を伺うことは無い。自分の意志で決めろ。ここで抜けたやつを裏切り者だ、腰抜けだと言う事もゆるさねぇ。やろうってほうがおかしいんだ。後戻りも出来ねぇぞ」
全員、やるともやらないとも言い出せなかった。
俺は話を切った。
「すぐに決めろといっても難しいだろう。明日まで待つ。やる気がある人間は20時にここに来い。以上解散」
俺は立ち上がった。つられて瀬里奈以外の人間もゆらゆらと立ち上がった。彼らに俺はさらに付け足した。
「大事なことを言い忘れた。これは非合法な戦いだ。ばれれば全員が警察のお世話だ。警察ならまだしもヤクザの反撃を食うのはごめんだ。絶対のルールを伝えておく。明日ここに来るにせよ来ないにせよ、この件については一切人に話すな。ネットやメールで相談もするな。人のいる所で話し合いも駄目だ。知らなかった、口が滑ったも認めない。このルールに反したヤツは」
俺は左脇のベレッタを見せた。
「殺す」
連中の血の気が引いた。部屋の雰囲気が凍りつく。
「俺の殺すは掛け値無しにそのままの意味だ。お前らが使うぶっころすとはわけが違う。いいな、どこに逃げようが隠れようが、俺あるいは俺の仲間が必ずしとめる。肝に銘じておけ」
蒼白な顔をしながら海城が渇く喉からやっと声を絞り出した。
「お前いったい何者なんだ?」
「ただの悪党だ」
いつもより冷たく言った。
アスカが呻く様に言う。
「とびっきりのじゃないの?」
「便利屋BIG-GUN。聞いたことあるだろ」
立ち上がりながら瀬里奈が言った。
「この街で迷ったヤツの最後の希望だよ」
俺はため息混じりにトーンを落として言った。
「そんな偉い人間じゃない」
この街で溺れたヤツが掴む最後の藁。
その程度だ
「Jr.女性は魅力的だ。だが我々にとって最も恐ろしい存在にもなりえる」
さて、ジムに現状報告し次の手を相談する。
ハッカーの線は情報屋に頼むとして警察が捕らえたデーブ刑事から情報を得るのがいいだろうと結論づいた。
とりあえずアリスにメールを打ち探りを入れる。お気づきかもしれないが彼女はうちの非正規社員みたいなもんだ。
数秒で携帯が鳴った。早。メールではなく電話だ。仕事中じゃないのか、給料泥棒め。
電話を繋ぐと金切り声が轟いた。
「風見君、デーブが脱走した。今署内大混乱よ!」
「すぐ行く」
俺は部屋を飛び出した。
警察署は立入禁止のテープが貼られ報道陣も集まり始めていた。交通課などの手続きも今日は出来ないのだろう。皆が緊張し殺気立っている。そりゃそうだ。署始まって以来の不祥事だろうからな。
さて来たはいいが当然俺は入れない。
署長の友人とはいえ一般市民だ。どうしたものかと思案していたら2階の窓からアリスが顔を出していた。
「おお、きたきた。上がってきなさいよ」
一人のんきなヤツだ。何故クビにならんのだろう。
「この状況で入れるか!」
門番に立つ若い警官達を指差し怒鳴り返す。
するとおねーさん下を覗き込み、つられて巨乳がちょっとたれ大声で呼びかけた。
「門番の人―! その子重要犯罪人、じゃなかった参考人だから署長室に連行して」
門番は大声に驚く…… というより胸に驚いた感じでドギマギしてから俺をマジで連行してくれた。うーむ、あの女に感謝すべきなんだろうか。
署長室にはシェリフと刑事課課長、麻薬課課長それにSWATの隊長さんがいた。署長いるんなら素直に通してくれればいいじゃねーか。
「早かったな。今からここで話す事はオフレコにしてくれ」
シェリフはいつになく厳しい口調で言った。他の一同も同じだ。真剣な目で俺を見ている。しゃしゃりでた子供を見る顔では無い。信頼できる仲間として見てくれている。俺と便利屋BIG-GUNの能力を評価してくれているのだろう。
俺はジョーク無しに返答する。
「わかった。状況を教えてくれ」
デーブは弁護士を呼び完全黙秘を決め込んでいた。一緒に行動した若い警官もそうだったらしい。
急用が入りシェリフが席を外した隙にヤツは行動を開始した。信じがたいスピードとパワーで見張りの警官達を殺傷し隣の部屋で取調べを受けていた仲間も殺し、バイクを奪って逃走した。その際拳銃と警察無線を奪っている。
「ドーピング?」
「まぁ間違いないだろう。隠し持っていたんだろうな。俺達のミスだ」
シェリフは渋い顔で言った。ミスしたのは取調べした警官だろうが部下のミスは自分のミスでもあるというのがいつものシェリフのスタイルだ。
「いくら不意を突いたとはいえ警官が大勢いる本署から犯罪者が脱走できるものなのか?」
「それほど超人的能力だったという事だな。お前なら出来るか?」
んー、どうかな。麻薬課の課長に質問する。
「それほどの能力を発揮する薬ってのはあるんですか? そんな物使って体が持ちますか?」
麻薬課課長は頷いた。
作品名:便利屋BIG-GUN2 ピース学園 作家名:ろーたす・るとす