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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 突然のお誘いである。ラブレターなら今ここで受け取りますが。
「バスケの練習するのよ、他の選手も来るから」
 男子の方に目をやる。何人かが一瞬こっちを見た。奴らが選手か。ふむなるほどパッとしない。
「しかしだな、俺の実力も見ないでスカウトしていいのか? もう選手決まってるんだろ」
 米沢さんはうふふと笑って言った。
「私これでもバスケ部のマネージャーなのよ。見ただけで運動神経いいかくらいわかるわ。で、実力見せてもらうためにも来て欲しいのよ」
 忙しいんだけどなぁ、俺。しかし昼間そうそう動くわけにもいかないし、まぁいいか。俺は、ああわかったと生返事をすると席に着いて昨日のコピーを眺めた。子曰くなんたらかんたら。
 ちらりと見ると瀬里奈はこっちに視線を戻していた。離れているから会話は聞こえなかっただろう。何を話していたのか、興味あったんだろうか。

 体育館には5人の選手と米沢さんが集まっていた。
 見たところスポーツできそうなのは二人だけだ。自己紹介は昨日したが一応挨拶する。しかしここでも俺は敵対視されていた。奴らの態度がどうにも冷たかった。なぜだろう。
 そんな空気に気がつかないのだろうか米沢さんは明るく語る。
「みんな私が声かけて集めたのよ。そうでもしないと選手いなくて棄権するところだったから」
 なるほど、米沢さんに声をかけられれば健康な男子生徒ならば少々やる気になるだろう。ようするに焼餅やかれているわけか。
 そんなこと気にしても仕方ない。3on3形式でミニゲームをすることになった。
 俺は50%ほどの力で軽く流す。
 やはり二人は動きがよかった。いやまぁまぁ程度か。
 青木と野村と言ったか。実力は二人とも互角、経験があるのだろう。野村の方がクレバーな感じだった。キャプテンも奴のようだ。この二人は同じチームで俺の敵側だ。
 となると我がチームが劣勢になるのは当然のことだろう。
俺が手を抜いている事もあって点差はじりじりと開いていく。このままでいい、しかし。
 スポーツの魔力というのは恐ろしい。
 適当にこなして米沢さんにがっかりしてもらおうと思っていたのだが始まってみると、ちょっと熱くなってしまった。
 青木、野村のパスワークの隙を突きインターセプト。高速ドリブルでマークを外すと3点ゴールのライン付近から1,2と踏み込んで大ジャンプから強引なミドルシュート。見事に決まった。
 そこでゲームが中断した。
 あまりのプレイに一同唖然としてしまったのだ。
 しまったぁ…… やっちまった。
「すごい…… すごいわ」
 最初に声を出したのはやはり米沢さんだった。
「あなたが入ればぜったいに優勝できるわ!」
 瞳がキラキラと輝いてなんだか俺を突き抜けて遠くを見ているようだった。めんどくさいことになった。
「いや俺一ヶ月しかいなから何かと忙しいし他に経験しときたいこともあるだろうし」
「だったら尚の事やらなきゃ。球技大会なんて通信制じゃ体験できないわ。いい思い出になる!」
 どうも米沢さん興奮して周りが見えなくなっているようだ。
「ごもっともだが、もう選手も決まってて練習始めてるみたいだし。俺が割り込む事も無いだろ」
「そんな事、どうでもいいじゃない。あなたに比べたらみんなへぼな選手だし……」
 俺は正義の味方ってわけではないし、フェミニストだがこの言葉はさすがにスルーするわけにはいかなかった。
「ちょっと待って米沢さん」
 声の質を変えたので彼女の興奮も少し収まった。
「みんな君に頼まれて集まってくれたんだろ。それをへぼいは無いぞ」
「あ」
 言われてさすがに失言に気がついたようだ。
「この暑い中バスケなんてスポーツをやろうってんだ。全くやる気が無ければとてもできない。クラスのためというより君のためにやってくれてるんだ。それに彼らも男だ。女の子にそんな言われ方されたらどんな気になるかわかるだろ?」
 米沢さんは顔色を失ってチームの奴らを見た。連中はばつが悪そうに目を逸らすだけだった。
「ご、ごめんなさい」
 小さな声でつぶやいて頭を下げた。つられて俺まで「ごめんなさい」してしまった。
 しばしの沈黙。
 野村が口を開いた。
「いいよ。あんなプレイみれば誰だって興奮するし、米沢さん勝ちたがってたし、な?」
 他の連中を見回すと恥ずかしそうに一同うなずいた。案外いいやつらなのかもしれん。ジーザス、さすがはあんたの教え子だ。
 というわけで窮地を切り抜けた俺は「お前らなら大丈夫だ」とこの場を立ち去ろうとした。そこに意外な奴が発言した。
「待ってよ風見君」
 振り返ると発言者はチームで一番背が高い、しかし一番動きの遅い、俺のチームにいた名前はえーと。
「玉田」
 そう玉田。他のやつらも意外だったのか一斉に注目した。
「チームに入ってよ、僕が控えになればいい事なんだし」
 その顔は面倒くさい仕事を人に押し付けている物ではない。For the team.  まさにスポーツマンの顔だった。
「僕は元々背が高いってだけで選ばれただけだし。やっぱりやるんならチームが勝つとこ見たいし」
 こんなところにも男はいた。
「玉田君……」
 米沢さんも涙声だった。よせ、もらい泣きする。
「玉田が控えって決まったわけじゃないだろ」
 青木も口を開いた。
「試合までに競い合えばいいさ」
 こ、こいつ…… 他の奴らを見下ろしているような奴だと思っていたが。
「そういうわけだ、チームに入ってくれ風見君」
 キャプテンの野村がしめた。
 青春だなぁ…… ここにきてよかった。
「お、俺でよければ……」
 一同握手。感動のシーン。
 しかしこのいい雰囲気をぶち壊すものが現れた。
「いた!」
 体育館を切り裂く鋭い声。
 一同凍りついた。
 入り口に鬼の形相の瀬里奈がいた。仁王立ちだ。
 どうしてこの学校には俺の敵ばかりいるのだろう。
「こんなところにいやがったか!」
 瀬里奈はズカズカと侵入してきた。瀬里奈さん、体育館は体育館履きに履き替えないと……
「手間取らせやがって、顔かせ!」
 美人の怖い顔は怖い。さすがの俺も一歩引いた。他の奴等は固まった。しかし俺は百戦錬磨の兵である。負けん。
「探してるんならメールくれればよかったじゃないか」
「お前にメールなんか送るか!」
 えー、俺は夕べ寝る前に「おやすみチュッ」ってメール送ってやったのに。
「お前も変なメール送ってくるな!」
 顔が赤いのは怒っているせいか、照れているせいか。
 ふふふ、あいかわらずシャイなやつめ。
「変なメール?」
 涙声のまま米沢さんが聞き返した。ここで瀬里奈は初めて彼女も一緒にいた事に気づいたようだ。
「早苗?」
 半べそかいている米沢さんを見て瀬里奈の温度が益々上がった。
「お前! 早苗に何したんだ!」
 それは誤解です。今度は本当に。大体俺の他に野郎が5人もいるのになんで俺だけ攻撃するんだよ。
 言う前に米沢さんとチームの連中が弁護してくれたので俺は瀬里奈に首締められずに済んだ。
 瀬里奈は誤解した事を詫びもせず俺を外に引っ張り出していった。すまんみんな、練習はまた今度。