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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 俺はMP5をフルオートに切り替え腰だめでなぎ払うように発射した。二人の脚に命中しうつぶせに倒した。訓練された者ならその状態でも反撃できただろう。だがこいつらは素人だった。何が起きたか把握できずパニック状態のようだ。
銃を乱射されたら危ないのですばやく接近し二人とも蹴りを入れて失神させる。その時のうめき声に聞き覚えがあったので暗視鏡をずらして顔を確認した。
 こいつ例の73メガネじゃないか。
 約束通り、用ができたからこっちから来てやったぜ。
 MP5の弾倉をチェンジ、俺は自称友人にそれ以上目もくれずやつらが出てきた窓から室内に侵入した。
 裏口のほうから三郎が侵入してくる。それも知らず臆病者一人が裏口へ逃げていった。一瞬で打ち倒された。殺してはいないだろう。殺さなくていいやつは殺さないのが俺達の流儀だ。
「ターゲットは上だろう」
 三郎の声が聞こえた。
 振り仰ぐと2階に人影が二つ。と、動いてるのがひとつ。流石に目が速い。
 さっきも言ったとおり間取りは頭に入っている。この部屋から廊下に出ればすぐに階段がある。
「俺がいく。1階は任せた」
 廊下へ飛び出し階段へ。2階はスモークの影響はなかった。明かりもあったので暗視鏡は額に跳ね上げる。
 階段を駆け下りてくるやつがいた。コールマンじゃないか。奴が俺に気づきあっと声をあげる前に俺は引き金を引いていた。
 さっきの73と同様弾幕に足をすくわれコールマンは前方に転倒した。先ほどより気の毒だったのは階段を降り始めたところだった事だ。
 やつは打ち捨てられた人形のように階段を転げ落ち、俺がかわしたもんだから一番下まで落下して動かなくなった。まぁ知らんわ。
 階段を上り人影があった部屋の前へ移動した。中の声を聞く。先ほど聞いたコーツの声がする。どこかに電話をしているのだろう。無駄だ、もう遅い。
 1階の方はしばらくドタバタが聞こえていたが、すぐに収まった。三郎は仕事では最高の相棒だった。あくまで仕事でだけな。
 狭い室内ではMP5より拳銃のほうが取り回しがいい。
 俺はMP5をドアの横に置くとグロックを引き抜きノックした。
「だれだ?!」
 引きつった声が聞こえた。
「便利屋です」
 言うなりドアを開ける。銃弾が通り過ぎていった。ドアを開けただけだ。堂々と入っていくほど馬鹿じゃない。床にへばりつきドアの隅から最低限銃と顔を出してグロックを放つ。机の前にいた中年親父の腕から銃をはじき落とす事など簡単だった。
 ゆっくり立ち上がり室内を確認しながら進入した。ジュンは右の奥にうずくまっていた。気が強いとは言ってもただの女の子だ。恐ろしすぎる体験だろう。
 俺の視線に気がついたのか、コーツはジュンに取り付いて無理やり立ち上がらせると後ろから首を決めやがった。
「近づくと殺す!」
 追い詰められた悪党の台詞である。
「お前に聞いておきたいことがある」
 俺は無視して質問した。
「人格改善セミナーを利用して強盗なんてちゃちな犯罪、当選二桁の国会議員が何でそんな下らん真似をした」
 当選二桁の国会議員。ヤツのアイデンティティそのものの言葉が奴にプライドと理性を少しだけ呼び覚ました。
「下らん? そうさ、下らんさ。下らん奴らを使って下らん悪戯をしてやっただけさ。しかしその結果何が起きるか」
 ちょうどその時市長の街宣カーの声が聞こえてきた。
「鼠算で増える駒を使って自分の手を汚さず街に犯罪を起こし続けることが出来る。町の治安は悪化し当然市長の支持率も悪化する」
 なるほどそうか。
「市長再選の妨害が目的だったのか。しかし何故だ。鳥取市長は確かに無所属だがお前さんの真自党と仲が悪いわけじゃない。犯罪犯してまで止める必要はないだろう」
 さらにいえばこんな田舎町の市長なんかを…… だ。
 それに対しコーツは下卑た笑いを見せた。
「市長を落選させるのが本当の目的ではないし真自党のためでもない。党本部の奴らに見せ付けてやるための事だ」
「?」
「多少は政治に知識があるなら私の得票数がどれほどの物だかは知っているだろう。過去10回の選挙で常に全国トップクラスだ。どんな逆風が吹く選挙でも落選したことは一度もない。しかし私には大臣の椅子など一度も回ってきたことなどない。何故だかわかるか?!」
「あんたの親父さんが一度離党して政党を立ち上げた事があるからだ」
 ヒガシ・コーツはひいじいさんの代からの大物政治家で、代々与党真自党の議員だった。しかしヒガシの父アンディは権力闘争のためほんの一期だけ離党、独立して政党を立ち上げた。独立と言っても結局連立政権となり、すぐに帰党する事になったのだが真自党本部は許さなかった。党内の重要な役職には就けるものの名誉職であり、首相はおろか大臣の椅子もまわすことはなかった。この飼い殺しは息子の代にまで及び、父の地盤を引き継いだヒガシまで冷や飯を食わされるているのである。
「奴らに教えてやりたかった。自分達の椅子がどんなに脆い地盤の上に立っているのか。数人の下らん奴らをたきつけるだけで自分の地位は崩れてしまうという事を。その手始め、いや実験にはこの街は最適だった。市長の支持率は高く治安も悪くない。それがごく一部の人間の馬鹿騒ぎで崩れ市長の首も飛ぶとなれば、いかに連中が無能であっても気づく。自分が砂上の楼閣の上で王様気取りになっているという事を」
 興奮するコーツと裏腹に俺は冷たく言った。
「そんなガキみたいな計画のために…何人死んだ」
 何人泣いた。奴の腕の中のジュンと目が合った。こんな状況でも涙を必死にこらえている。涙は恐怖のためか、それとも。
「殺したのは大半お前さ」
 俺の殺気溢れる声に動じずコーツは言い返した。
「お前がちょっかいを出さなければほとんどの奴は死ななかったし、この娘もこんな目にはあわなかったろう」
 俺は思わず笑ってしまった。確かにその通りだ。さすが大物政治家。口では負けはしない。
「私にも質問がある」
 俺から一本取ったので自信を取り戻したのだろう。国会の質問に立っているときのように胸を張って威厳を誇示しながらしゃべりだした。実際には女の子を人質に取っている外道なんだが。
「何故私の名前は公表しなかった。ローランドのファイルに当然私の名前があったはずだが」
 聞かなくてもいい事を。
「私の名前を見て利用できると思ったか。コールマンのような小物はともかく私なら脅せばいくらでも金が出ると思ったか」
 ふん、俗物はみんな他人も利でのみ動くと思ってやがる。俺は嘲ってやろうかと口を開いたのだが……
「金なら…… もう……もらっている……」
 言葉がうまく出せなくなっていた。
「なに?」
 くそ…… やっぱり、こんな時でも…… 始まるのか。
 俺の弱点、病気、いや良心なのかもしれない。
 またジュンと目を合わせた。エメラルドの瞳が大きく見開かれている。俺の異変に気がついているようだ。
 真実にもすぐ気づくだろう。こいつなら。
「20数年…… かかって…… やっと彼氏ができた…… 女がいてな……」
「な? なんだ…… きさま」
 コーツも気がついた。
「俺は…… そいつを助けに来たんじゃ…… ない。…… お前を…… 殺しに…… 来た」