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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 轟音と共に踏み切りに突っ込んでくるとまずフロントを地面にたたきつけバンパーを失った。勢いで一つ二つと弾んで飛び越えたが三つ目で腹を強くこすり車輪が浮き上がった。いかにアクセルを吹かしてもこれでは大地を蹴る事は出来ない。時折地面に接触しても腹がつっかえて前に進むことは出来なかった。
 むなしくシーソーを繰り返すさまは正に亀だった。
 シャコタンでこの踏み切りに突っ込むなんて自殺行為なのさ。
 このまま捨てていくか? 一瞬そんな気持ちがよぎった。
 いや、決着はつけるべきだ。奴は危険すぎる。
 俺はダッシュボードの銃を取って外に飛び出た。ハーフスピンしたせいで車は斜めに止まっていた。そのおかげでプジョーがバリケードとなった。
 タタンと車に着弾した。前輪の影に隠れる。大口径ライフルでもエンジンブロックを貫通する事は出来ない。
 やつは亀になった車をあきらめ開いたドアを盾に撃ってきていた。
 カプリスのドアは頑丈で分厚い。アメ公がパトカーに使っているくらいだ。拳銃弾相手なら十分盾になる。奴はそれを知っているのだろう。
 だが。
 俺は車に張り付くようにして銃を向けドアごと奴に連射した。。
 ベレッタとは比べ物にならない強烈な反動と共に撃ち出されたテフロン加工の巨大な弾丸はカプリスのドアに大穴を開けた。
 ぐっとドアの向こうで奴がうめくのが聞こえた。
 デザートイーグル50AE。
 世界最強の自動拳銃から発射された徹甲弾は2枚重ねの防弾チョッキを貫通する。車という鉄の塊を相手にするにはこのくらいの備えは必要だった。
 俺は止めを刺すべく連射する。重たい反動が俺の腕を通り抜けていく。
 が、今度は当たらなかった。やつはカプリスの中に戻っていた。カプリスのエンジンを貫通する事はデザートイーグルといえど不可能だ。
 奴はヘッドライトを上向きにした。目くらましか。一端体を引っ込め奴の次の手を待つ。
 しばし後ボンと大きな音がした。
 わずかに頭を出してみるとカプリスは炎を吹き出していた。
 巨大なアメ車は見る間に火柱となり辺りを真っ赤に照らした。
 あの野郎。車に火をつけやがった。これを利用して逃げる気か。
 俺はデザートイーグルを106に放り込みベレッタを抜いた。重く反動の大きいデザートイーグルは銃撃戦には向かないのだ。
 慎重にカプリスを見張る。炎の壁の向こうからフルオートの銃撃があった。咄嗟に頭を引っ込める。腕だけ出してベレッタを連射する。しばらく待ったが反撃は無い。逃げたか?
 と、踏切から警報が鳴った。
 線路内で車が燃えようと自動で鳴るはずは無い。誰かが遮断機のボタンを押したのだ。
 あいつしかいないじゃないか。
 何故だ。警察や消防を呼び寄せるようなものじゃないか。
 こちら側の遮断機の横に人影が見えた。1発撃ってみたが人影はすぐ横にある工場に消えていった。
 波乗り踏み切りの横には国内有数の陶器工場がある。こんな時間だ。人が中にいるとは考えにくい。
 俺は工場の敷地内をのぞいた。とたん左肩に衝撃があり続いて銃声がした。奴の射撃だ。必要最小限しか露出させなかったのにやりやがる。しかももう夜だ。またベレッタを突き出して乱射する。反撃はなかった。だが安心は出来ない。敷地は塀で囲まれている。塀から懸垂で顔を出し中をうかがう。見回すと人影が彼方の建物に窓を割って進入している。足はええ。この隙に入り口から中へ入った。
 遮断機の脇からわずかだが血の跡があった。やはり当たっていた。この跡を追っていけば逃げられる事は無い。しかし。
 俺は血の跡は追わず壁沿いに伸びた雑草の中に伏せてゆっくりと建物に近づいていった。建物までは100mくらいはあるだろう。
 また携帯が震えた。
「兄ちゃん、さすがだね。血の跡を追ってこないなんて」
「あんたの射撃の腕は知ってる」
 自らの血の跡を餌に敵を狙撃する。やつなら当然考えるだろう。
 工場の建物の中から光が見え発砲音が轟き俺の後方2mあたりに着弾があった。俺は構わず草むらの中を進む。窓のある側から側面へ。もうすぐ奴からは死角に入る。
「撃ち返しても来ない。ますますやるねぇ」
 発砲すれば奴に位置を教えることになる。奴は建物の中で俺は広い庭だ。位置を知られれば狙撃されてしまう。
「あんたも怪我してるのによくやるな」
 血の量からしてそんなに軽傷じゃないはずだ。
「モルヒネ持ち歩いてましてね」
 用意のいいことだ。
「俺は急いでいる。引き分けってことでこの場は解散にしてもいいが?」
 俺の提案は半ば本気だった。
 だがやつはクスクスと笑った。
「仕事は…… 投げ出せない性分で」
「わかるよ。じゃあケリをつけようか。言っとくが俺の方が有利だぜ」
「あたしの怪我の事ですか?」
 それもあるが。
「ここは俺の街だ」
 俺は電話を切った。もうかけてこられないように電源も切る。窓は完全に見えなくなっていた。俺は念のため辺りを確認してから草むらから飛び出し建物裏の非常階段に走った。
 鉄の非常階段を音もなく駆け上がる。2階のドア、もちろん鍵が掛かっていたが問題ない。キーホルダーにくっつけてある針金で10秒かからず開いた。念のためベレッタのマガジンをチェンジする。何発も撃っていないがその数発が生き死にを分けることもある。
 俺は音を立てずに中に進入し1階へ向かう。電気はついていないが俺の目なら外からの明かりで何とか見える。階段はすぐ横だ。
 奴のいた部屋はベルトコンベアーがある流れ作業の工場だ。遮蔽物が少なく身を隠す場所はほぼ無い。その隣の部屋は陶器にコーティングする部屋で大きな機械が並んでいる。
 奴は怪我をしている。そんなに移動はせず俺を待っているはずだ。
 俺はわざと足音を立ててコーティング部屋に足を進めた。ドアは開け放ったままにしておく。
 部屋は広い。ドアをくぐって横方向に50mはある。その中央に巨大な機械が鎮座し作業台や商品が並び縦方向には視界は開けていない。横方向にも隠れる場所はいくらでもある。
 俺は右へ曲がり物陰にスマホを置く。引き返して少し大きな機械の影に隠れた。
 廊下に足音がした。足取りは重い。やはり重傷なのだ。逃げれば追って来れないかもしれない。しかし何故か俺はそうしてはいけないような気がした。
「物音立てて走ったって事は来いって事ですね兄ちゃん」
 奴の声が聞こえた。心なし息が上がっている。
 その通りさ。早く来いよ。
 足音は入り口で消えた。奴がプロなら、暗い中で気配を感じられるほどのプロなら当然そうする。そしてやつは俺を探しに来る。どのくらい動く…… 一歩二歩。空気の流れを読む。
 ここだ。
 俺は携帯を起動し発信した。
「よお、ここだ」
 俺の声が工場に響いた。俺のいない場所から。
 奴の銃が唸った。発射炎で奴の姿が一瞬暗闇に浮かぶ。飛び出して撃った。だが奴はしゃがみこんでいた。俺の弾丸は奴の頭上を越えていく。見透かしていやがったか。
 ショックなんか受ける前に俺は飛び出して奥に駆け込んだ。ここは小部屋になっている。ドアは観音開きで荷物の出し入れのため大きく開け放つことが出来る。問題は部屋の広さは四畳半ほどしかない。そして出入り口はここしかない。