あなたとロマンス2
「ラブホテル」
夏の終わりの昼下がり、暑い国道をエアコンをかけず
窓を全開にして風を楽しみながら車を運転していた。
市内から外れた郊外のバイパス沿い、いつもの通り慣れた道で景色もいつものままだ。
赤信号で停まる。
風がなくなり、じんわり暑くなる。
遠くで工事中の音が聞こえる。コンクリートを破壊する音のほうに目を向けた。
あれっ?
あそこは昔、一度だけ利用したことがあるラブホテル。
そうか、随分昔だけどあの時でさえ古かったもんな・・・当時の記憶が蘇る。
BARのマスターを少しだけしていた時期があった。
雨の夜、午前0時過ぎ。数年前に別れた彼女がやってきた。
どこかで僕がこの店をやってるのを聞いて来たらしい。
ぎこちない笑顔同士で「やあ久しぶり」と他のお客の視線を気にしながら彼女の注文をとった。
少ない言葉で近況を知らせあう。
「どうして?」と頭の中に疑問符を感じながらそれでも、嫌いで別れた彼女でなかったから心のどこかでうれしかった。
時が経てば別れた経緯もぼやけ、あの頃の楽しかったことだけが思いだされる。
客がいなくなり二人きりになると
「ねえ あの頃さ・・・・」と昔話で二人お酒を飲みながら思い出話を語り合った。
店を開けるまで彼女のことなんて、これっぽっちも思いださなかったのに。
彼女の策略か決意か、とにかく来てくれたことで僕は昔の彼女を思いだすハメになった。