あなたとロマンス2
M字開脚の彼女のスカートの中は暗闇で見えなかった。
だけど、妖艶に月明かりの下で色香を放ち、僕を誘う彼女は
桜を題材にして演技する舞台女優のように見えた。
「ねえ 来て」
僕は毒牙にかかった蝶のようになすすべもなく、彼女の足元に膝を落とした。
花枝と月をバックに彼女は僕の上からキスを求めてきた。
膝まずいた僕の格好は女王様にひれ伏す奴隷だ。
老木の桜はいにしえのお姫様の愛木だったのか。
僕は月と闇と桜のシチュエーションに彼女のなすがままになった。
キスは甘く続いた。
滑る温かい舌。いやらしい柔らかさを持つ唇。
いつもの酔っ払いの彼女ではなく、どこかの女優のようだ。
少し肌寒い風も気にならない。僕は彼女の唇から離れM字に広がった足の付け根に顔を近づけた。彼女の匂いが僕を包む。
僕は薄い布地の向こうにある、桜の蕾を探そうと舌を這わせた。
あられもない格好で椅子に座る彼女の股間に顔をうずめた。
僕は桜の奴隷になっていた・・・。
深夜の一本桜に見物客はいない。
僕たち二人だけの秘密の出来事が始まる。
時折、風に揺れた桜の枝が音を立て舞台でなく外であることを教えてくれた。
だけど僕たちの行為は止まらなかった。
誰もいない。
桜だけが見ている。
そしてはるか頭上には月が・・・。
月明かりの桜の下で暗闇にまぎれ、そして肝心な「愛」とか「好き」とかの感情を忘れ
ただ、欲情のまま求め合った。
何かに取り憑かれたように引っ張られるように、僕達は見えない力に抱き合った。
後からわかったけど、その桜は昔、姫君の悲しい恋の物語が絡んだ桜だったそうだ。
そうすると あの夜の出来事は・・・。
あれから何度か、その彼女とバーで飲んだが何事もなかったかのように、あの話はしなかった。
記憶の片隅の秘密の出来事。
桜の思い出。
二人だけの桜の夜。
(完)