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海野ごはん
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novelistID. 29750
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あなたとロマンス2

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彼女の家から急いで離れると、急にどっと汗が背中を流れ落ちるのを感じた。
振り返っても構わないのに、まだ見られてる気がして後ろを振り向く事が出来ず、ずんずん僕は坂道を登って行った。坂道はやがて緩やかな勾配となり、街路樹も途切れ、木漏れ日の日陰もなくなった。
やっと坂道の頂上に着いた頃、歩くスピードを緩めた。
そしてそっと後ろを振り向いた。
ショパンの音は聞こえなかった。
も一度戻りたい衝動に駆られたが、逃げ出した手前それも恥ずかしくて勇気が出せなかった。

坂道の下の街路樹の影が風に揺れている。僕はハァーと深呼吸と溜息を一緒くたにしたような息をすると前を向いてまた歩き出した。
先程の旋律が僕の心の中でリフレインしている。そのショパンの音は家に帰り着く迄、止むことはなかった。


その夜、はっきり彼女が夢の中に現れて僕のそばでショパンをひいてくれた。
朝起きて、また覗き見をしたようで恥ずかしくなってしまった。でも、もう一度会いたい。


僕はその日、また同じ時間にその道を通ることにした。
昨日の出来事が、その家に近づく前から蘇える。心臓がまた高鳴る。
何かを期待しているのだろうか。
また会いたいと思う気持ちがあからさまに出ていないだろうか。
落ち着きなく街路樹の木漏れ日の坂道を歩いていくと、あと数十mだろうか彼女の家に近づいた時、微かだがピアノの音が聞こえてきた。
立ち尽くし逃げ出した昨日の場所に来ると、彼女は同じように窓を開け放しピアノを弾いていた。
今日の曲は知らない曲だった。
今度は見つかってもいいように、いや実は見つけてもらいたいのだが・・・
庭越しに立ち止って聞いた。同じように揺れるカーテンの向こうに彼女がいた。
気づいてくれないだろうか・・・
作品名:あなたとロマンス2 作家名:海野ごはん