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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの5

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知春は、優太が近付いたのを確認すると更に嬉しそうにし、優太の手を引こうとした。手が触れる。思わず優太は、驚き、手を引っ込めてしまう。
昨日、1日一緒に居ただけでも、知春が大分世間の価値観から離れてしまっていることは明白だった。手を繋ぐという行為も彼女にとってみれば、大した意味がないのだろう。
「公園、入ってもいい?」
引っ込められた手を不思議そうに眺めながら、すぐに知春は元気よく提案した。拒否されたと思わなかった事が不幸中の幸いだ。
「夕飯の為にスーパー行くんじゃなかったっけ?」
優太は思わず聞く。少しお腹が空いてしまっている。
「うーん、お財布にお金無かったの。知秋ちゃん、お金持ち歩かないんだよね。」
知春は申し訳なさそうに苦笑いをした。
「じゃあ、家に戻った方がよくない?」
「んー。そうだよね。」
そう答えながらも知春は既に公園の門を通りすぎていた。あまり、優太の反応を気にしていない。赴くままに、一直線に公園の奥に向かっている。仕方なく、優太は知春の後を付いて行った。知春は象の形の滑り台の前で足を止め、しゃがみこみ、何やら探している。短く調整されていないスカートが地面にくっつく。知秋は、目線に困るくらいにスカートを上げているのに対して、知春は何も考えていないのか、そのまま着こなしている。
優太は、それが少し気になり、話しかけようと近づいた。
「あった!優太くん!」
知春は振り返り、優太を見上げた。
「ごめんね。これをどうしても見せたくて。」
優太の服の裾を引っ張り、滑り台の壁に寄せた。

壁には小さく、

「おとうさん、ゆうたくん、いつもありがとう」

と引っ掻き傷があった。