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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   11話   『十人十色』

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茜は大きく肩をすくませ、盛大なため息をつく。…何なんだ?一体…まぁいいか。

「お前ら何やってんだ?暇ならゲーセン行こうぜ、ゲーセン」

すると、タイミングがいいのか悪いのかそこに暁がやってきた。

「お~いいな♪行こうぜ」

「俺は、パース。ダルいし、眠いし、そんな気じゃねぇからまた今度な」

「左に同じ~☆」

「お前らノリ悪いぞ~。行こうぜ、ゲーセン。行けばそんな気もなくなるってぜってー楽しいって。…それに、もしかしたら、可愛い娘と新しい出会いがあるかもしれないぜ?」

「って結局それが目的かよッ!!」

その前にゲーセンで新しい出会いを期待するのもどうかと思うぞ。そんなゲームみたいなシチュをリアルに求めるんじゃない。そこは、ゲームだけにしておけ。リアルに持ち込むな。

「あ、新しい出会い…!!春斗行こう☆きっとこれはシークレットだッ!まだ見ぬ新しい出会いが君を待っているよ☆レッツ・ゴー・シークレットルート☆」

かえでは眩しいくらい目を輝かせて、俺を引き込もうとする。…やれやれ。

「だから何度もゲーム思考にするなと言ってるだろうが。俺は行かん。行きたければお前らで行ってこい。まぁそんなギャルゲーみたいなシチュがあるとは到底思えんが」

「それは、聞き捨てならんな、春斗よ」

暁は、目をキランと光らせて不敵な視線で俺に睨みつけてきやがった。

「いいかッ!!よく聞け、春斗ッ!!貴様には夢を追い求めることが…ぐわぁはぁッ!!」

突然、暁がもの凄い勢いで前倒れし、そして、床に激突する。…な、何なんだ一体?
そう思っていた矢先、俺の懐に何やら何かが飛び込んできた。

「ハルトお兄ちゃん~寂しかったよ~うにゅ~」

視線を下げてよく見てみると、ヒカリが俺の懐を頬でスリスリしているのが目に入った。
そして、俺が見つめているのがわかると、目を潤ませて俺の顔を見つめてくる。
…おい、それは何のつもりだ?

「お~☆君はミナタンの☆今、ミナタンいないよ。ふゆゆんと日誌を職員室に持って行ってるよ☆」

「ううん。アミーナに用事じゃないんだよ。わたしは~ハルトお兄ちゃんといっしょに帰ろうと思って来たんだよ。ねぇ、ハルトお兄ちゃんいいでしょ?ねぇ?ねぇ?」

ヒカリは、服の裾を引っ張りながら俺にせがんでくる。
すると、ヒカリが後ろからみんなに見えないように紙のようなものを渡してきた。
…これは、手紙か。

俺はそれをみんなに見えないようにゆっくりとその紙を広げてみる。-そこには

「………」

これは…俺の目がおかしくなったのか。それとも疲れてるのか。
俺は一度目を軽く擦ってから、もう一度その紙を見てみる。
…やっぱ、同じだ。ってことは俺の目がおかしいワケじゃないな。

結論から言おう。…何だこれ?俺にこれを解読しろと?
ヒカリから渡された紙には何やら文字らしいものが書かれているのだが…全然読めない。
いや、別に英語とか謎な文字で書かれているワケじゃない。ちゃんと日本語で書いてある。
…たぶん。

じゃ、何で読めないのかって?それは…。

「お前の字が下手で何が何だかわからんわぁッ!!」

俺はヒカリの字の余りの下手さに思わず叫んでしまった。…ひ、ひどい。ひどすぎる。

「何だときさ…ッ!!!…いや。ひ、ひどいよ~ハルトお兄ちゃん。これでも頑張って書いたんだよ。うにゅぅ」

ヒカリはもう少しで地が出そうなところで何とかそれを抑えつけ、猫ヒカリを再び演じてみせる。…器用なヤツだな。

俺はヒカリと目線が近くなるところまで屈んで、小声で話しかけてみる。

「んじゃ、これは何て書いてあるんだよ?」

「フン…貴様の目の貧弱さには呆れるばかりだよ。まぁいい、よく聞けよ。これはな、『話がある。ちょっと来い。』って書いたんだ」

ってそんな単純なメッセージだったのか、これは。…どうしたらこんなミステリックフィールド全開な字が書けるんだ。考古学者も唸らすびっくりもんだぜ。

「わかった。何とか話を終わらせて時間を作る。ちょっと待ってろ」

そう言うと、俺はみんなの方に向き直る。

「お~もういいのかい、春斗?ちゃんと愛の囁きはしたのかい?ぐふふ☆」

かえでは、意味深にニヤリと微笑みながら、俺を見つめてくる。

「んなもんしねぇよ。お前、俺のことを何か勘違いしてるだろ」

「まぁまぁ、そんなこと言いっこなしだよ☆ロリハンター・春斗☆」

思いっきり誤解してるじゃないか。…それに、その称号はいらん。
俺は肩をすくませ、大きくため息をつく。

「あはは。まぁそう落ち込むな、春斗。でも、お前らホント仲いいみたいだな。ホントに大丈夫か?犯罪はしてないだろうな?」

「してないわッ!!このくそたわけッ!!」

まったくどいつもこいつも。…っといかんいかん。こいつらのペースに呑み込まれてはいかん。ここでもう一度、軌道修正しないとな。
-そう思った矢先

「あれ?ヒーちゃん?何でここに?」

「あなたはミナちゃんのお知り合いさんの~。いらっしゃい~」

職員室に行っていたミナと冬姫が日誌を提出し、教室に戻ってきた。
…おぉ助かったぜ。これで何とか無事にこの場を退散できそうだ。ナイス、二人とも。

「おかえり~二人とも。でも、結構時間かかったみたいだけど何かあったのか?」

「あ、うん。先生が職員会議でね~だから、終わるまで待ってたの。ごめんね。私たちが遅れちゃったおかげで待たせちゃったね」

冬姫は申し訳なさそうな表情でしゅんとしてしまっていた。

「んなもん気にすんなって。俺らみんな気にしてねぇからよ。なぁ?」

「モチ!そんなの気にしないって。まったくホント冬姫はいい娘だね。この純で思いやりのある心を春斗に半分渡してもバチは当たらないじゃないか?」

「何を言ってる。これでも俺は青空のように澄んだ純な心だし、思いやりだってあると思うぞ」

「ぐふふ☆青空のような…か。それは、闇のようにどす黒く錆び付いた心の間違えじゃないのかね☆それに、思いやりもその後の見返りを求めての行動ではないのかね☆?」

「それはまんまテメェのことだろ。お前と俺を一緒にすんな」

「でも、自分で純な心だの思いやりがあるだの言ってたらわけないぞ。余計に疑わしいかつ信用してもらえんと思うぜ」

「ぐはぁッ!」

「あはは~。みんなありがとね。そう言ってもらえて嬉しいよ」

「みなさん、ありがとうございます」

「いいっていいって。…って春斗、そんなに落ち込むなって。ほら、そんなとこでのの字書いてんなよ。その後ろ姿アホみたいだぞ」

「アホって言うな!ったく俺にトドメさしておいて鬼かお前は」

「ふっふっふ☆茜はボーイッシュだけじゃなくてツンの属性もあったとは…グッジョブ☆!!茜」

「あはは。何だかわからんが褒めるな褒めるな~」

「はぁ…ツッコむのもダルいからツッコまねぇぞ俺は」

「あ、そうだ~♪えーと…あなたは何て呼んだらいいのかな?」

冬姫はいつの間にかヒカリに近寄っていつも以上のにっこりフェイスを展開させ、どうやら名前を訊いているようだった。

「うにゅ…わたしは、ヒカリっていうの」