第1章 11話 『十人十色』
「へぇ~ヒカリちゃんっていうお名前なんだ。可愛らしいお名前だね♪私の名前は朝霧冬姫っていうんだよ~」
「うん、覚えたよ。冬姫お姉ちゃん♪」
「冬姫…お姉ちゃん…。お姉ちゃん…お姉ちゃんか~えへへ♪」
冬姫はお姉ちゃんって単語がよほど嬉しかったのか表情がにやけていた。
「ふゆゆん、姉属性付加か☆これで姉妹丼も可能か?ヤ…ヤヴァイ、想像したらエロい。エロすぎるッ!!姉妹バンザーイ☆」
かえではいつもの如くフィールドを展開し、マイワールドに浸っていた。
「ったくあんたはまた…。まぁいいか、あたしは茜だ。で、そこで目を輝かせているのがかえでだ。よろしくな」
「うん。よろしくお願いしまぁす~。茜お姉ちゃんにかえでお姉ちゃん」
猫ヒカリは、もじもじしながら上目遣いで小さくペコリとお辞儀する。
…何なんだ、その恥らう仕草は?これもまた猫ヒカリお得意演技の一つなのか?
「それでね、ヒカリちゃん、日曜日って暇かな?私たちね、日曜日にお花見するんだけど一緒に行かない?」
「なぁッ!!」
冬姫、何てことを…。せっかくの俺の努力をまぁ水の泡にしやがって。
「へぇ~」
ヒカリは何やら悪いことを考えているかのような目でニヤリと笑みを浮かべながら俺の方に一瞬視線を向けた。…何だよ、その笑みは?激しくいやな予感がする。
「ありがと~。うん、にちようびは暇だよ。…でも、わたしも行ってもいいの?」
「もちろんだよ~。ヒカリちゃんとももっとお話したいし、仲良くなりたいと思ってたから。ねぇ、みんな?」
「あたしは別にかまわんよ」
「よいよい☆ひかりんなら大歓迎☆カムカム~☆ビバっ!ロリーズラブ☆」
…ひかりんって。これまた可愛らしいニックネームだこと。
「ねぇ、ハルちゃんもヒカリちゃんも一緒にお花見したいよね♪?」
冬姫は嬉しそうな表情で俺に問いかけてきた。…うぅ、その笑顔が今の俺には痛いです。
「…そ、そうだな。いいんじゃないか。あは、あはは…」
「わーい♪よかったね~ヒカリちゃん」
「うん!にちようびのお花見楽しみだな~えへへ」
一瞬、俺の方を向き、ヒカリの表情が恐ろしくどす黒い満面の笑みで見つめてきた。
これだから、こいつは誘いたくなかったんだ。こいつがいると平穏じゃなくなるからな。
きっと日曜は何か恐ろしいことが起きるに違いない。…俺、参加するのやめるかな。
「ねぇ~ハルトお兄ちゃん。早くしないと先生が待ちくたびれちゃうよ」
俺が別のことを考えていると突然、ヒカリがワケのわからんことを言い出した。
「はぁ?お前何言ってる…ふがぁッ!!」
「もう~ハルトお兄ちゃんったらもう忘れちゃったの~?ダメだよ、先生を待たせてること忘れちゃ」
「ヒ…ヒカリ…テ、テメェ…」
ヒカリは、俺の腹にもの凄い力で肘撃ちをかましやがった。…や、やりすぎだって。
「そうだったんだ。ハルちゃんダメだよ、そんな大切な用事忘れちゃ。先生きっと待ってるよ~急がなきゃ…ってハルちゃんどうしたの?お腹でも痛いの?大変なんだよー!!保健室行く??ヒカリが連れてくよ??」
「…いや、何でもない。大丈夫だ」
俺はまだ痛い腹を擦りながら冬姫に安否であることを告げる。
「まぁ、そういうことだから俺ちょっと行ってくるわ。皆は先に帰っていてくれ」
「ヒナちゃん」
ミナが心配そうな顔で俺を呼び止める。
「心配すんな。別に話をしに行くだけだ。終わったらすぐ戻るから」
「でも…」
「大丈夫だ。いざとなったら俺の格闘技でヒカリのヤツなんか撃退してやるから。これでも格闘技だけは自信があるんだぜ」
俺はミナに力強くそう言って、強い握り拳を作ってみせる。
「わかりました。でも、くれぐれも気をつけてくださいね」
「あぁ。わかった。んじゃ、行ってくるぜ」
そう言うと俺とヒカリは教室を後にするのだった。
<次回へ続く>
作品名:第1章 11話 『十人十色』 作家名:秋月かのん