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情熱のアッパカパー要塞

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スカイの冒険録
情熱のアッパカパー要塞
              針屋 忠道
















俺はスカイ。今回の話は、アッパカパー要塞の話なんだ。アッパカパー要塞はイシサ聖王国に在る岩山を掘って作られた要塞なんだ。俺達3人は他のパーティ達と報酬を巡って争う競合ルールで仕事を引き受けた。アッパカパー要塞に捕らえられた依頼主のロード・イジアの息子、小イジアの救出を請け負った。だがな、必ずしも、競合ルールで仕事をさせると、いい結果が出るとか言うのはデマだ。俺は身にしみて判ったよ。まあ現場からの体験だよな。お互いに足を引っ張り合ったんだ。当然、俺達も、やられたらやり返す。まあ、そんな調子でロード・イジア要塞からアッパカパー要塞へ五つのパーティが向かっていったんだ。当然、五つのパーティは、お互いに裏切り合ったり、ウソ扱いたりして実に酷い仕事だった。
 だがな、アッパカパー要塞には、俺達が来ることを密告していたスパイがイジア国に居て、俺達の動きは筒抜けだったせいで、俺達は、とんでもなく難儀な仕事をするハメになったんだよ。
 俺達はフラー・ソイラスから頼まれた森人達の部族間の争いを仲裁する仕事を終えた直後で…
  (聞き手ノベラーY)














スカイ達三人はパレッアー山脈の山道の途中で休んでいた。
「まったく、難儀な話だな。ロード・イジア要塞なんて、とてつもない山奥の辺境だろう」
 スカイは言った。山道を歩き続けてスカイは、へばり気味だった。この山道で疲れて悪態も出る始末だった。草の上に寝そべって、のびていた。
マグギャランは立ったまま腕を組んで柵に足を掛けて霧で覆われた向こうの方を見ていた。霧が深くて何も見えないはずだったが。遠くの方を見ているのであった。
 「そう言うなスカイ。わざわざ、俺達3人を指名して一人頭。二百五十ネッカー(二千五百万円)の仕事が来たんだ。これは成功すればチョロくて楽で、金が儲かる夢のような仕事だ。上手く行けば、一日でカタが付くかもしれん」
 マグギャランは言った。
 「だが、何で、山道を3日も登らなければいけないんだ。こんな山奥に在るなんて予想していなかったぞ。地図見ても、こんなに高い山だなんて書いてなかった」
 スカイは言った。
「物を知らない、お前に代わって説明すれば、ロード・イジアは、ミドルン王家の家臣でありながら、独立国である小国家イジア国の国王でも在るんだ」
マグギャランが「ミドルン王国旅行ガイド」千二百ニゼ(六百円)を見ながら言った ヤツの蘊蓄の源だった。道中何度も聞いた話だった。
「何が国家だよ、地図見たらシミみたいに小さい国だろう」
 スカイは三千二百ニゼ(千六百円)で七年前に買った「国定版ミドルン王国地図」で確認したイジア国の小ささを思い出しながら言った。
 「まあ、当然と言えば当然だな、パレッアー山脈の合間の盆地が上手い具合に人が住めるように、なっているようだが。必ずしも、住み易い場所とは言い難いな」
 マグギャランが伸びをした。
 「おー、でも良い風が吹いているな、疲れた身体に心地良いぜ」
スカイは言った。
気持ちのいい風がスカイの髪と頬を撫でるように吹いていた。
風が回りの木々を揺らして、草木の音がしていた。空気も良いし、もう少し疲れていなければ、もっと気分が良いはずだった。
 スカイの姉のコロンは座って魔術の呪文書を見ていた。
 コロンもバテ気味のようだった。
 何故かマグギャラン一人が元気があった。
 「見て見ろ、スカイ、コロン、風に流されて霧が晴れてきた。ここからイジア国が見えるぞ」
マグギャランが崖の方へ歩いて行って言った。崖の方には転落防止用の木の柵が付いていた。
 スカイも、立ち上がって歩いていった。
 霧が晴れていって、町が見え始めた。
 「こんな所にも人が住んでいる物なんだな」
 スカイは崖の端から向こうに見える景色を見ながら言った。
 霧が晴れたイジアの町の回りには山間の中で在りながらも、それなりに段々畑や牧草地が在って人が生活していく為に必要な物が在った。町には防壁が囲むように在って、瓦葺きの屋根が連なっていた。そして風車が幾つも並んでいた。スカイから見ても、イジア国の町並みは、かなり年期の入った古い建物で構成されていたが太陽電池が古びた屋根に所々に貼り付けられていた。こんな山奥でも最近はフラクター選帝国の科学という魔術で作られた道具が普及している時代だった。
 「スカイ、あれが多分ロード・イジア要塞だ」
 マグギャランが指を差した。
 その指の先には町の向こうに、そびえ立つ巨大な鋼鉄の板を張った頑丈な作りの要塞があった。霧が掛かっていて全体は見えなかったが要塞は鋼鉄の板に覆われていて、風雨に晒されて薄く赤く錆びているようだった。



一週間前、スカイとマグギャランとコロンはミドルン王国のニーコ街の冒険屋組合の事務所で、最近導入された真新しいタッチパネルの端末を操作して仕事を捜していた。この前の仕事は、ミドルン王国の中にありながらフラクター選帝国と同盟国関係にある「永久の森(とこしえのもり)」に住む森人の部族同士の争いの仲裁の仕事で、裏で糸を引いていた悪い奴等を見つけだして無事に仕事は終了していた。森人の王様達から報酬として貰った魔術の掛かった細工物をオークションに掛けて売却してスカイ達は、それなりの纏まった金を手に入れていた。
スカイはタッチパネルの端末を操作していた。依頼主の信頼度の高さの格付けから仕事を検索した。一番上に錬金術士協会が出てきた。スカイは読み上げた。
「錬金術士協会の仕事は、変種の巨大ゾウリムシの駆除が仕事だな。奴等は、工場から汚染物質を垂れ流して飲み水に混入してミュータントを大量に発生させたらしいからな。まったく、水飲んだだけでミュータントになるなんて恐い時代だぜ」
それは、実に酷い話だった。「デタトン・アルケミー社」という錬金術の薬を作っている薬品会社がミドルンのデタトン市で汚染された排水を垂れ流していた事件で、責任が追及されて、錬金術士協会にまで責任が追及されたらしかった。それで、錬金術士協会が仕事を出している様だった。
 スカイはタッチパネルを操作していた。横にはマグギャランとコロンが居て顔を寄せてタッチパネルのモニターを見ていた。
 「止めておけスカイ。今は金は多少は在るだろう。そんな割の合わない仕事は止めて置け。他のパーティが皆、パスしているから、この端末に載っかっているのだ。うっかりすると、俺達までミュータントにされてしまう。テレビによるとデタトン一帯は戒厳令が敷かれているらしい」
マグギャランが腕を組んだまま言った。
スカイはタッチパネルを操作した。今度は報酬と難易度の差額が大きい条件で検索した。別の仕事が表示された。