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20世紀に思う

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 しかし、21世紀の現在では社会主義国家は勢力を弱め今では世界を二分しているとは言えないようです。実際に冒頭に書きましたソ連という世界最大の社会主義国家も同じ20世紀のうちに歴史から姿を消しています。ということは、その考え方は理想形ではなかった、もしくは完成形ではなかったという事がいえるのかと思います。やっぱりどこかに綻びがあったのでしょう。
 80年代のソ連最後の指導者だったゴルバチョフ(1931~)が冷戦を終結させ、社会主義に転機がおとずれました。彼の政策により民主化が始まり、その波は東欧諸国にも広がり世界地図を大きく変えました。当時東西に分かれていたドイツも統一されました。東西ドイツから伸びる南北の国境線は当時「鉄のカーテン」といわれ、体制を分断する国境線であると同時に一触即発の冷戦の前線であるとも言われていました。それが冷戦の終結とともに崩壊し、現在では旧東欧の諸国もEUに加盟しています。
 冷戦が終結したことは社会主義にも大きな影響を与えたと思います。東西間の垣根が低くなり、今まで国の施策に従って上も下もない社会で生きてきた人間が資本主義国家の個性的な活動を見たらどうでしょう?未来の世界に来たような斬新さを覚えたかと思います。    

   結局は、社会主義が目指した「理想」とは何だったのでしょうか?

 著者が思うには、社会主義の先にある大きな矛盾があったのだろうと考えるのです。社会主義国家では、優先される幸福が「個」よりも「国家」です。確かに国が幸せであればその国民もその恩恵に与れるわけです。しかし国家は生き物ではありません。生き物ではないものを生き物のように育てようとしたから「個」である人間の反発が生まれ、そして崩壊したのではないでしょうか。
 幸福を求めるのは人の根源的な活動です。それは人類が人類である以上変わらないと、思うのです。ですから、人間は「国家」より「自分の幸福」を望んだ結果が21世紀の世の中なんだなと思うのです。
 社会主義の崩壊は世界を一つの考え方で統一することってのはたぶん無理なんじゃないかというサインだと思うのです。換言すれば、結局は人間ってのはみんな自分本位なのかな、と思うのです。
 それを憂いているわけではありません。むしろ人間60億人いれば60億通りの考えがある方が面白いと思うのです。さまざまな立場や考え方があって、自分の信念を持ちつつ互いに理解をすることで前に進めばいいことだと思うのです。21世紀の世の中でも主義主張がぶつかって分離独立する国があったり、残念なことに戦争にもなったりもします。ですがそれだって互いが互いの考えを理解することで避ける方法はたぶんあります。

 要はソ連をはじめとする社会主義国家の解体を見て今の世界は「人は自ら考えて、人らしく生きるのが幸せなんだ」と思った次第なのです。

   * * *
 
 人間の長い歴史を見れば、ソ連のように100年続かなかった大国は案外あります、我が国だっていつまで続くかは誰にもわかりません。わが国の現在は平和な世の中にいるとは思いますが、それは先人が多くを理解し各個人が維持をすることで今日まで続いて来たものなのだと思います。いずれにせよ相手を理解することを放棄して、安易な方向に走ることは避けたいものです。

作品名:20世紀に思う 作家名:八馬八朔