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20世紀に思う

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 科学的にもたいへん興味深いこの大陸、著者は文系の出身で科学は得意な方ではないので人間科学的観点から見て思った事を綴ろうと思います。

 帝国主義の時代に目指した南極、つまりは国の領土拡大をめぐったいきさつがあります。しかしながら現在はどこの国にも属さないのです。というのも、各国で取り決めた条約があるからなのです。

 南極条約が締結されたのが1959(昭和34)年12月1日。日本を含む12か国で結ばれ、現在は50か国が加盟しています。条約の内容は大きく3つ。南極(南緯60度以南の地域)について、

   ・領有権の請求を凍結
   ・軍事利用の禁止
   ・科学的調査の自由と協力

することです。簡単にいいますと、南極大陸はあれだけ広大な、日本よりも大きな大陸でありながらどこの国にも属さないと決めたのです。

 つまり、南の果ての真っ白な大地には国境などなくそこへ降り立った者はすべて平等であると考えられるのだと著者は思います。ひとたびこの条約を破ってしまうとけがれ無き白い大地は血で赤く染まってしまうかもしれません。世界各国がそれでは人類の発展に資さないと考えて科学者だけでなく為政者たちも協力してこの地を平和に共有しようとしているのです。

 そして、南極点の基地「アムンセン・スコット基地」という名称にも世界平和の願いがあります。
 基地そのものはアメリカの所有です。しかし、名称の二人はそれぞれノルウェーとイギリスの人間です。最初に到達したアムンセンの名前だけで良いのではないかと思われがちですが、ここにエピソードがあります。

 人類初の南極点到達を果たしたアムンセン。彼は南極点(南緯90度)の地点に自らがここへ到達したことを示す証明書を置いてきたのです、自らが遭難して生還できなった場合誰も証明できないためです。
 これは、2番目に到達した者が持ち帰ることで彼の初到達を証明することが出来ます。そしてその後到達したスコットは帰路で力尽きました。しかし、彼の遺体が発見された時にその証明書が発見されたのです。これはアムンセンが初到達をしたことを証明すると同時にスコット隊が「自分たちが競争に敗れたこと」を示す証明書でもあるのです、スコット隊はそんな屈辱の証明書を所持していたのです。そして次々に見つかった学術資料や隕石の標本など――、それも途中で放棄すれば生還できたかもしれないほどの。
 スコット隊は科学の発展に命をかけて挑んだことが証明されたわけです。彼は軍人でありましたが、人類の発展を願っていたことがうかがえます。それゆえ南極点の基地の名称に二人の冠をつけたのです。

作品名:20世紀に思う 作家名:八馬八朔