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覇王伝__蒼剣の舞い3

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                    3
 蒼国に、いつもの日常が戻る。
 変わってしまったのは、今以上に清雅の命が晒される事。
 ドラゴンの遺産の秘密を解く鍵は、“覇王たる心臓に秘めたり”なのだ。
 更に、蒼剣が示す“心臓を射抜かん”、昇龍山の壁画では“赤き血魂貫きて取り出したもう”とある。
 そんな蒼国内を、二人の青年が歩く。
 「軫宿(みつかけ)〜」
 「情けない声を出すな」
 「だってさぁ、昨日から食ってないんだぞぉ」
 「お前なぁ、何のために蒼国に来たか忘れてるじゃないだろうな?」
 「もちろん。だけどよぉ、腹が減っては何とかっていうだろう?俺は軫宿のように、丈夫に出来てないんだ」
 「それで南方七星士が務まるな、鬼宿(たまほめ)」
 「お前だって七星士じゃないか」
 相棒の情けない声に、軫宿は大きく溜息をついて小さな食堂に入った。
 客は数人、中でも目立つのはカウンターにいる男だ。
 「クリームソーダー!?」
 男が呑んでいるものに、鬼宿の声は思わず跳ね上がった。
 「呑んでちゃ悪いか?」
 「いや、変わってるなって…。蒼国の人間?」
 「あぁ。生まれも育ちも東領だ。7年のブランクはあるが」
 男はカウンターに頬杖を付き目を閉じたまま、質問に答えた。
 自由戦士だろうか。身なりは、軫宿たちと大差はない。
 長身で引き締まった体躯、腰まで伸びる癖のある髪、そしてクリームソーダー。あまりのギャップに、軫宿たちは見入った。
 「もしかしてお仲間?」
 「俺はお前らなんか知らないぜ」
 「剣を使うだろう?剣士かどうか鼻が利くのさ」
 「それは便利な鼻だな」
 「蒼国の人間なら、ここの王様どんなか知ってる?」
 「…お前らは知っているのか?」
 「王となる前は野育ちで、蒼剣が勘違いした男。いくら腕が立つからと云っても、覇王にだなんて蒼剣は何を思ったやら」
 「俺も、そう思うぜ」
 「意見合うねぇ。で、その蒼国国主をさぁ__」
 「軫宿、しゃべりすぎだ」
 軫宿が、咄嗟に鬼宿の袖を引いた。
 「何だよ軫宿、未だ少しか食ってないんだぞぉ。待てって」
 そんな二人と入れ替わりに、尚武が入ってくる。
 「待ちましたか?清雅さま」
 「いや、面白い奴といたから退屈はしなかったよ」
 「誰です?」