覇王伝__蒼剣の舞い3
天賦の才と云う言葉がこうもピタリと当てはまるものかと、彼の剣捌きは星宿も狼靖も驚かされたものだ。
その清雅に、須黒は負けた。
その瞬間、四獣聖・蒼龍は誕生した。
星宿はその後、蒼剣が輝くのを見ることになる。
___彼なら、覇王陛下の御遺志のままに四国を纏めるだろう。
西領に帰らず、星宿は清雅に膝を折り臣下の礼をとった。清雅は今でも、嫌な顔をするが星宿は確信していた。清雅こそ覇王だと。
___須黒、お前に人を見抜く力はなかったようだな。
須黒配下と剣を交えながら、星宿は残念そうな顔で須黒を見た。
カン! キンッ!
火花を散らす、互いの剣。
「ふん、随分上達したな」
「吾は、七年前と違うのだ。清雅どの。天狼星を渡して貰おうか」
「奪えるもんなら奪ってみやがれっ」
「黙れっ」
須黒が剣を振り下ろし、清雅が受け止めようとした時、足を捕られる。
「清雅さま!」
「…なに…」
眩しい蒼い光が、薄暗いその場を照らした。
清雅は思わず、龍王剣を手にする反対の手で背の蒼剣を抜いていたのである。
至近距離でまともにその波動を受ければ、須黒はただではすまない。
彼は死ぬ事はなかったが、傷を負った。
「…しぶとい野郎だ」
清雅もまた、少し青い顔である。聖域内の力と蒼剣の力が彼の体力を消費していたからだ。
須黒に、今の状況では勝ち目はない。
「清雅さま」
「どうやら、黒抄との開戦は回避できたようだぜ」
「…はい!」
「あ、タクちゃん泣いてる〜」
「泣いてませんっ」
「まぁまぁ、玄武ちゃん♪」
「焔さまぁっ!!」
完全に子供扱いされて、拓海は逃げる焔を追いかける。
「清雅さま、大丈夫ですか?」
「何とかな。ガキどもは元気だな」
「帰りましょうか」
「あぁ」
そう帰ろう。みんなが待つ地へ。
謎は増えてしまったが、本当の戦いはこれからだ。だから少しだけ__。
快く揺れる馬の上で、清雅の瞼が閉じていく。つかの間の眠りに導かれて。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍