覇王伝__蒼剣の舞い3
清雅が、大人しく蒼国で敵を待っている性格ではないと。
両者がここでぶつかり、共倒れになってくれれば幸い。その隙に遺産を奪う、その筈だった。ところが亡霊出現に黒抄はパニック状態となり、国に撤退してしまった。
ここにいるのは、須黒とその配下数名。
「そりゃぁ、亡霊に感謝しないとな」
「相変わらず、口は悪いな」
お互い抜剣して、睨み合った。
星宿たちも習い、剣を構え臨戦態勢に入る。
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時は、七年前に遡る。
覇王家崩壊後、四国は四つに分国され、四獣聖も四散していた。
ただ、一つの位を除いて。
「星宿さま」
西領の白都、白虎となっていた星宿にその男は近づいた。
「須黒どの、如何された?」
「お父上の後を継がれ、白虎となられた由お喜び申し上げます」
「聞いたよ。貴殿が蒼龍を目指していると」
「吾のような貴族出身でもない者が蒼龍とは恐れ多い事なのですが」
「吾は歓迎するよ。覇王陛下は、身分に関係なく受け入れる方だったからな。それに貴殿に叶う剣の腕は誰もいない」
「これからどちらへ?」
「東領だ。玄武さまと朱雀も向かっている。東領は、覇王陛下のお生まれになった地であるからな。未だ王も決まっていないと云う。龍王剣はそこにあるようだ」
「吾もお供していいでしょうか?」
須黒は、星宿と共に未だ蒼国となる前の東領へ向かった。
四獣聖・蒼龍の証である龍王剣は、この時所在が不明だった。前覇王が蒼剣と共に所持し、その後消えて以来、四獣聖・蒼龍の位だけは空位だった。
何としても探し出す。
この時、須黒はそう決意していた。その男に会うまでは。
「____龍王剣…」
七年後、須黒の前に突きつけられる龍王剣。
四獣聖・蒼龍として、蒼国の王としてその男は須黒と剣を交える。
「清雅さまっ」」
「星宿、雑魚は任せたぜ」
「お任せを」
星宿は、にっこりと笑った。
七年前、東領で出会った少年。星宿は須黒以上に驚いた。
自由戦士として各地を転戦している彼は、星宿より二つ年下の18歳。その彼が、更に8年前に会っている玄武の狼靖の甥・清雅だと気付くにはあまりにも印象が変わっていた。更にその腰には、行方が理解らなかった龍王剣。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍