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覇王伝__蒼剣の舞い3

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 「奎宿(とかき)」
 呼ばれて、男が振り向いた。
 「何だ、お前か。婁宿(たたら)」
 「何だは、酷いな。面白い話を教えてやろうと思ったのによ」
 「お前の話は、ろくなものじゃない」
 「黒抄が、蒼国に攻め入って逃げ帰ったそうだぜ。しかも、黒王自ら出向いてだ。黒抄の国軍もたいした事ねぇよな」
 奎宿よりやや年若の男は、ケラケラと笑った。
 「蒼国は、そんなに強いのか?」
 「そんなに強くない筈だぜ。国軍が出向くまでもないほどな」
 「確かに、面白い話だな」
 「ま、うちも黒抄の事は云えないが」
 「聞こえるぞ」
 「大丈夫さ。城から出て行く白将軍を見てるし、今の所戻った様子もない。あの人、昔は四獣聖を目指していたんだとさ。白虎かと思ったら、蒼龍だっていうから面白いだろう」
 婁宿は、聞きもしない事を皮肉を混ぜていろいろ話した。
 「蒼龍と云えば、四獣聖最高位だからな。で、その蒼龍は誰に?」
 「んー、確か清雅って名前だぜ」
 「___なるほどな」
 「何がなるほどだだよ、奎宿」
 「蒼国の蒼王の名前だ。聖連さまの異母弟でもあるが」
 「へぇ、強いわけって事か。こうなると益々倒したいね。西方七星士の手でさ」
 婁宿は、ニヤリと笑った。
 その白将軍・須黒は、七年ぶりに清雅と再会していた。
 
 「久しぶりですな、清雅どの、星宿さま」
 「お前一人のようだな。黒抄と連むとは、聖連の考えている事はわけ理解んねぇな」
 「吾が、黒抄といると?」
 「現にこうして俺の前にいるからな。黒抄の国軍が蒼国攻めにこの臥龍山越えときてる。これから戦おうという時に、山越えして体力消耗するぜ。黒狼だって、そんな考えなしとは思わない。誰かが唆さない限りはな」
 そんな清雅の後ろで、星宿、焔、拓海は唖然としていた。
 黒抄の影に白碧あり。清雅の予感は的中した事に。
 「さすがは清雅どのだ。ただ、貴殿たちに会う前に誤算が生じてな。黒抄軍があれほど腰抜けとは思わなかったわ」
 清雅は、何が起きたか直ぐに理解った。
 例の亡霊が、黒抄側にも現れたのだと。
 須黒の策では、ここで遺産を探す筈だった。臥龍山に遺産がある、そう云った時黒王は直ぐに飛びついた。蒼国攻めはそのついでだった。
 もちろん、四獣聖がここに来るのは須黒の計算の内だ。