覇王伝__蒼剣の舞い3
「そいつは、ここにあったもんだ」
十数年前、前覇王が持ち出しその後、央軌に密かに託した剣・天狼靖。
「七つの星の一つでは?」
「いや、天狼星と云う名前はない」
星宿は、そう否定した。
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蒼龍の七つの星とは、角宿(すぼし)、亢宿(あみぼし)、氏宿(ともぼし)、房宿(そいぼし)、心宿(なかご)、尾宿(あしたれぼし)、箕宿(みぼし)の七つである。
「それじゃ、この剣は…」
「タクちゃん、抜いてみて」
「僕が?」
「その剣預けられたの、タクちゃんでしょ」
焔に急かされて、拓海は恐る恐る剣を鞘から抜いた。
『眠れたるもの貫かん』
刀身に刻まれる文字。
「これって…」
「まさか、蒼剣と同じ意味とはな」
清雅に、自嘲気味の笑みが浮かぶ。
蒼剣は、はっきりと、
『____心臓を射抜かん』と語っているのだ。
「清雅さま、これからどうしますか?」
「そろそろ、黒抄も来るしなぁ」
ここで、謎を究明している余裕はなかった。黒抄国と蒼国の開戦は始まろうとしているのだ。
「清雅さま、ここには天狼星以外にあるものがありました」
そう云って、臥龍山の遺跡管理人ロウは背後に立った。
「央軌は、そんな事はいってなかったぜ」
「あそこをご覧を。龍の胸の辺り」
壁画の龍の胸は、変に凹んでいた。何かの痕跡である。
「ここに何があったんだ?」
「心宿と呼ばれる、この遺跡のもう一つの至宝です。伝説に寄れば、ドラゴン七星揃うとき、扉は開かれると。」
「ドラゴン七星、か。遺産の隠し場所への扉ときたか」
だが、その心宿がその後どうなったか誰も知らない。
そうなるとどうしても、一人の男の影を疑わずにはいられない。遺産探しに一番に乗り出し、天狼星を狙った白王・聖連を。
「____やはり、な」
外に出た彼らを、一人の男が待ち構えていた。
白銀の甲冑に身を纏い、唇をニヤリと歪ませて。
白碧精鋭軍・白将軍、須黒だった。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍